1. 結論:国語で差がつくのは、手順のほうです
国語の点が伸びないというご相談をいただいたとき、まず答案を見せていただきます。そこで分かるのは、点が取れていない子の多くが、本文を読めていないのではなく、読んだあとの手順を持っていないということです。
同じ文章を読んで、同じように内容を分かっていても、答案になると差が出ます。どこを探せばよいのかを知っている子は、迷わずその場所へ戻りますし、知らない子は記憶を頼りに答えを書きます。この違いは読み方の深さではなく、問題に向かうときの手順の違いです。
手順であれば、言葉にして渡すことができます。感じ方そのものを変えるのは難しくても、探す場所の決め方や書く順番の作り方であれば伝えられますし、国語が算数より教えにくいと言われがちなのも、この手順が言語化されないまま「よく読みなさい」で済まされてきたからではないかと思っています。
2. 読解と記述は、別の技術です
まず分けておきたいのが、読解と記述は別の技術だということです。ここが混ざったまま「国語ができない」と言っていると、手の打ちようがありません。
| 技術 | やっていること | つまずきの出方 |
|---|---|---|
| 読解 | 設問が求めている場所を、本文から探す | 探す場所が分からず、記憶で答える |
| 記述 | 探した内容を、採点される形に組み立てる | 分かっているのに、書くと点にならない |
どちらでつまずいているかによって、手を入れる場所が変わります。
読解でつまずいている子は、そもそも答えの場所にたどり着いていません。一方、記述でつまずいている子は、場所は分かっているのに、答案にしたときに点にならないという状態です。後者の場合、口で聞けばきちんと答えられることがよくあります。
この2つは手を入れる場所も直し方もまったく違いますので、答案を見るときにまず確かめるのは、どちらでつまずいているのかという点になります。選択肢問題では取れているのに記述だけ落としているのであれば、読めていないわけではありません。
3. 読解——答えは本文の中にあります
中学受験の国語では、答えの根拠が本文の中にあります。書かれていないことを想像して答える問題は、基本的には出ません。つまり、探す場所さえ決まれば、答えは見つかるようにできています。
ところが、点が取れていない子の答案を見ると、探しに戻った形跡がないことがよくあります。一度読んだ記憶のまま、なんとなく覚えている内容から答えを書いてしまう。一度読んだだけの記憶に頼って書いてしまうと、内容そのものを理解していたとしても点にはなりません。
探す場所の決め方には、設問の形に応じたいくつかの型があります。傍線部の前後を見る、指示語が指しているものをたどる、同じ言葉が繰り返されている箇所を探す、場面が切り替わったところを見る。どの設問でどの型を使うのかは、設問の聞き方で決まってきます。
ここが身についていないと、毎回ゼロから読み直すことになりますので、時間も足りなくなります。国語で時間が足りないというご相談の多くは、読むのが遅いのではなく、探し方が決まっていないために何度も読み返していることが原因だと感じています。
もうひとつ申し上げておくと、探し方が身についているかどうかは、模試の得点の振れ方に表れます。手順を持っている子は、文章の相性がよくない回でも一定の点に収まりますが、持っていない子は、内容が身近なときは取れて、そうでないときに大きく落ちるという形になります。国語の点が回によって大きく上下するのであれば、実力そのものより手順のほうを疑ってみる価値があります。
4. 選択肢問題は、消す作業です
選択肢問題については、もう少し具体的に書いておきます。ここは手順がはっきりしている分、身につけると点が動きやすい領域です。
選択肢問題でやっていることは、正しいものを選ぶというより、誤っているものを消していく作業です。中学受験の選択肢は、全体としてはもっともらしく書かれていて、どこか一箇所だけが本文とずれているという形が多くあります。そのずれを見つけて消していき、最後に残ったものが答えになるという形です。
このずれ方にもいくつかの型があり、本文に書かれていないことが混ざっている、言い過ぎている、原因と結果が入れ替わっている、登場人物の気持ちが別の人のものになっているといった形に分かれます。こうした型を知っていれば、選択肢の前で迷う時間がぐっと減ります。
逆に、この作業を知らないと、選択肢を2つまで絞ったあとで感覚に頼ることになります。「なんとなくこっちが正しそう」で選んでいるうちは、当たる年と当たらない年が出ますので、点が安定しません。
5. 記述——書けない理由は3つに分かれます
記述が書けないというご相談は多いのですが、中身を見ていくと3つに分かれます。ここを混ぜたまま「記述の練習をしましょう」と言っても、あまり動きません。
| 型 | 状態 | 手を入れる場所 |
|---|---|---|
| 探せていない | そもそも答えの場所にたどり着いていない | 読解の手順 |
| まとめられない | 場所は分かるが、どこを使うか決められない | 要素の選び方 |
| 書き方を知らない | 言いたいことはあるが、文の形にならない | 組み立ての型 |
3つ目は、口で聞くときちんと答えられるのに答案が白紙、という形で出ます。
とくに3つ目の型は、周りから見落とされやすいところです。本人は分かっているので、周りからは「書く気がない」ように見えることがあります。ところが実際は、頭の中にあるものを文の形にする手順を教わっていないだけ、という場合が少なくありません。
ここを直すのに読書量はほとんど関係せず、必要になるのは、文末をどう決めるか、主語をどこに置くか、いくつの要素を入れるかという具体的な作り方のほうです。これは感覚ではなく手順ですので、教われば身につく部分です。
6. 採点されているのは、要素の数です
記述の採点は、文章の巧さを見ているわけではありません。多くの場合、答案に入っているべき要素がいくつ入っているかで点が決まります。30字の記述であれば要素が1つか2つ、60字であれば2つか3つ、という具合です。
この前提を知らないと、答案の直し方が変わってきます。「もっと詳しく書きなさい」という直しは、字数が増えるだけで要素が増えていなければ点になりませんし、逆に短くても必要な要素が入っていれば点はもらえます。長く書けば点が伸びるわけではない、というのはここから来ています。
ですから、記述の解き直しでやるべきなのは、書き直すことよりも先に、模範解答を要素に分解して、自分の答案に何が足りなかったのかを数えることです。この作業をすると、足りないのが要素なのか、書き方なのかが分かれてきます。
解き直しの考え方そのものは、算数の場合と大きく変わりません。何を落としたのかを分けてから手をつけるという点で共通しています。過去問で点数が取れないときの読み方にも、失点の分け方を整理しています。
7. 物語文と説明文で、見る場所が違います
中学受験の国語では、物語文と説明文の両方が出ます。この2つは、探す場所の決め方が違いますので、分けて考える必要があります。
物語文で問われるのは、多くの場合、登場人物の気持ちとその理由です。その気持ちは本文に直接書かれているとは限らず、行動、様子、風景の描写、それに会話の中に置かれていることが多いので、気持ちを表す言葉そのものを探しても見つからないことがあります。気持ちを表す言葉そのものを探しに行ってしまい、見つからずに止まる子は少なくありません。
一方、説明文で問われるのは筆者の主張とその根拠にあたる部分で、こちらは物語文より構造がはっきりしており、繰り返される言葉や、逆接のあとに来る文、まとめの段落といった手がかりがあります。型を知っていれば、説明文のほうが点を安定させやすい面があります。
どちらが苦手かは、お子さまによってかなり分かれます。答案を見ると、物語文だけ落としている、あるいは説明文だけ落としているという形がはっきり出ますので、まずそこを確かめることになります。
なお、物語文と説明文のどちらから手をつけるかを迷われた場合には、説明文を先にすることが多いと思います。構造がはっきりしている分だけ手順に落としやすく、身につけたときの手応えも早く出ますので、国語に苦手意識のあるお子さまほど、動いている実感を持ちやすいからです。物語文は、そのあとでも間に合うことが多くあります。
8. 「読書量が足りない」では解決しません
国語が苦手だという話になると、読書量の話が出てきます。本を読んでいないから国語ができない、という説明です。
読書そのものは、語彙にも背景の知識にも効きますし、続けている子が有利になる面はあります。ただ、いま点が取れていないことの原因として読書量を挙げても、打つ手が出てきません。これから本を読み始めて点が動くまでには時間がかかりますし、受験までの期間を考えると間に合わないことのほうが多いからです。
それに、本をよく読む子が国語で点を取れているとは限りません。読むのは好きなのに設問になると落とす、というお子さまは実際にいらっしゃいます。読むことと、設問に答えることは別の作業だからです。
ですので、いま点を動かしたいのであれば、読書量ではなく手順のほうに手を入れるほうが早いと考えています。読書は、それとは別に、長く続ける価値のあるものとして扱えばよいと思います。
9. 漢字と語彙は、家庭で回ります
ここは、勧める側の立場からも正直に書いておきたいところです。漢字と語彙については、外部の手はほとんど要りません。
やるべきことがはっきりしていて、進める順番まで決まっているからです。決められた範囲を覚えて、書けるかどうかを確かめ、間違えたものをもう一度やる。この繰り返しで積み上がっていきますので、塾の教材と家庭での確認があれば回ります。ここに時間を使ってもらうのは、正直なところもったいない。
ただし、漢字を落としている答案には別の意味があることもあります。読解も記述も取れているのに漢字だけ落ちているのであれば、単純に手が回っていないだけです。一方、全体に点が低くて漢字も落ちているのであれば、国語に割く時間そのものが足りていないことが多い。この場合は、何にどれだけ時間を配るかという別の話になります。
10. なぜ国語は後回しになるのか
国語は、4科目のなかでもっとも後回しにされやすい科目だと感じています。後回しになる理由は、いくつか思い当たります。
ひとつは、やっても点が動くまでに時間がかかると思われていること。算数のように、この単元をやればこの問題が解けるようになる、という対応が見えにくいので、優先順位が下がります。もうひとつは、国語の点は上下しやすいので、伸びたのか偶然なのかが判断しにくいという点です。
ただ、多くの学校で国語の配点は算数と同じか、それに近い水準です。たとえば四天王寺は国語120点・算数120点、洛星も国語120点・算数120点です。配点が同じなのに手をつけないというのは、判断としては不自然だと思います。
手順にあたる部分は、探す場所の決め方にしても選択肢の消し方にしても、覚えれば次の週から使えるものですので、思っているより早く動きます。時間がかかるのは語彙と背景の知識のほうで、手順のほうではありません。
時間の配り方についても、ひとつだけ書いておきます。国語は毎日少しずつ触れておくほうが噛み合う科目で、週に一度まとめて長時間やるより、短くても続けているお子さまのほうが安定しやすいと感じています。文章に触れない期間が空くと、探す手順そのものが鈍っていくからです。ただし、どれくらいの量をどう配るのかはご家庭の事情によって変わりますので、ここで一律の数字を出すことはしません。
11. 答案を1枚ずつ見るということ
ここまで書いてきたことは、どれも答案を見ないと判断できません。読解でつまずいているのか記述でつまずいているのか、物語文と説明文のどちらが弱いのか、記述の3つの型のどれにあたるのか。いずれも、点数の一覧を眺めているだけでは分かってきません。
集団の授業では、ここまで一人ひとりの答案を見る時間を取るのは、どうしても難しくなります。人数がいる以上、全体に向けた解説が中心になるのは自然なことですし、それが集団の役割でもあります。一方で、個別の答案を1枚ずつ見て型を特定していく作業は、1対1でないと成り立ちません。
ここについて、ひとつ書いておきたいことがあります。同じ設問でも、正攻法で本文を最初から追っていけば答えは出るけれども時間がかかるという形があり、入試の限られた時間のなかでは、その差がそのまま得点差になって表れます。速く解けるかどうかは、読む速度を上げたかどうかではなく、その設問の形に応じた探し方を知っているかどうかで決まってくることが多い。そして、その探し方は市販の解説には載っていないこともあります。
12. この見極めを、誰と一緒にやるか
ここまでお読みいただいて、いまお子さまがどこでつまずいているのか、見当がついてきたのではないでしょうか。第2章と第5章の表は、答案を手元に置いて確かめていただけます。
一方で、型が分かったあとに何をどの順で渡すのかという段階になると、実際の答案を見ないと言えることが限られます。どの設問形式で落ちているのか、記述の要素が何個足りないのか、物語文と説明文で差がどれだけあるのか。国語の偏差値という一つの数字からは、ここまで見えてきません。
中学受験の指導実績がある教師
23名が登録しています
うち8名は、灘・甲陽学院・東大寺学園・洛南・西大和学園・大阪星光学院・神戸女学院・四天王寺などの最難関校に生徒を送り出した指導実績を持っています。学生講師は在籍していません。
在籍状況は時期により変わります。国語を担当できる教師がいるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。
ご相談いただいた場合にうかがうのは、学年、通っている塾、直近の模試の国語の答案、そして算数など他の科目との差の4点です。ここから、読解と記述のどちらに手を入れるべきかを整理してお返しします。
いまの進め方で問題ないと判断される場合は、そうお伝えします。その場合、家庭教師を入れる必要はありません。
ここまで読んで、どれが近いですか
国語について、よくうかがうのがこの5つです。当てはまるものはありますか。
- 記述だけが白紙、または途中で止まっている3つの型のどれかを、答案から特定します。
- 選択肢を2つまで絞ってから外す消し方の型が入っていない可能性が高いので、そこから見ます。
- 物語文だけ、または説明文だけ点が低い探す場所の決め方を、文種ごとに整理します。
- 読解と記述のどちらでつまずいているか知りたいこの記事の第2章に見分け方があります。相談は不要です。
- 記述が書けない3つの型を知りたい第5章に表を載せています。
学年と、直近の国語の得点だけでもお話をうかがえます。
それでも、一度お話を聞かせてください
つまずいている場所の見当はついたけれど、そこから何をすればよいのかで手が止まった、ということがあるかもしれません。
国語は、やり方を変えれば動く部分と、時間をかけるしかない部分が混ざっています。その切り分けを間違えると、やっているのに点が動かないという時期が続きます。
学年と、直近の模試の国語の得点を一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。いまの進め方で問題ないと判断される場合は、そうお伝えします。
力になれることがあるなら、なりたいと思っています。
合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件や地域によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。
ご相談のときに、あると助かるもの
次のものがあると整理が速くなりますが、写真で撮ったもので十分です。
- 直近の模試の国語の答案(設問別の正誤が分かるもの)
- 記述問題の答案(書いたものが残っているもの)
- 他の科目の得点(国語との差が分かるもの)
- 塾で使っている国語の教材
とくに2つ目の記述の答案が、この科目ではいちばん効いてきます。白紙なのか、書いたけれど点にならなかったのかで、手を入れる場所がまったく違うからです。塾から渡される点数の一覧だけでは、そこまでは見えてきません。
まとめ:センスではなく、手順の問題です
この記事の要点
- 差がついているのは感じ方ではなく、問題に向かうときの手順
- 読解と記述は別の技術で、直し方も違う
- 中学受験の国語は、答えの根拠が本文の中にある
- 選択肢問題は、誤りを消していく作業として手順化できる
- 記述が書けない理由は、探せていない・まとめられない・書き方を知らないの3つ
- 記述の採点は、答案に入っている要素の数で決まることが多い
- 長く書けば点が伸びるわけではない
- 物語文と説明文では、探す場所の決め方が違う
- 読書量を原因にしても、打つ手が出てこない
- 漢字と語彙は、塾の教材と家庭での確認で回る
今日できること
最後に、今日から手をつけられることをひとつだけお伝えしておきます。
直近の国語の答案を出してきて、落とした設問に印をつけてみてください。そのうえで、選択肢問題で落としているのか、記述で落としているのかを数える。記述だけが落ちているのであれば、読めていないわけではありません。選択肢でも落ちているのであれば、探す場所の決め方から見ていくことになります。手をつける場所は、この数え方だけで分かれてきます。