1. 結論:学年ではなく、止まっている場所で決まります
「何年生から家庭教師を頼むのが一般的ですか」というご質問には、正直なところ答えようがありません。中学受験は塾のカリキュラムに沿って進んでいきますので、いま塾のどこを走っていて、そこで何が起きているのかを見ないと、必要かどうかが決まらないからです。
ただし、判断していただくための材料であれば示すことができます。塾のカリキュラムには、つまずきが集中する場所がいくつかあり、それはどの塾でもおおむね決まっていますので、位置さえ分かれば見当はつけられます。いまその場所に差しかかっているのか、すでに通り過ぎてしまったのか、それともまだ手前にいるのか。この位置が分かれば、いま動くべきかどうかも、動くとして何を頼むのかも、おのずと決まってきます。
この記事では、その位置を確かめるための材料を並べます。結論として動かないという判断になることもありますし、そのほうが自然な場合も少なくありません。
2. まず、入れなくてよい場合から
先に、入れなくてよい場合から書いておきます。次に挙げる4つがそろっている状態であれば、いま外部の手を足す必要は薄いと考えています。
- 塾の宿題が、期限までにおおむね終わっている
- 間違えた問題を、翌週までに自分で解き直せている
- 授業で分からなかったところを、質問しに行けている
- クラスが上下していない、または上がっている
この4つがそろっているのであれば、塾の設計が本人に噛み合っているということです。そこに別の人を入れると、やることが増えて、回っていた歯車のほうが止まることがあります。成績が良いから入れる、まだ余裕があるうちに入れる、という判断は、この時期にはあまり噛み合いません。
逆に、この4つのうち2つ以上が崩れているのであれば、原因を確かめる段階に来ています。崩れ方によっては、家庭教師ではなく塾のクラスや曜日を変えるだけで戻ることもありますので、そこも含めて見ていくことになります。
もうひとつ、判断を難しくしているのは、周りの動きが目に入ってしまうことだと思います。同じ塾のご家庭が家庭教師を入れたと聞けば気になりますし、説明会や保護者会で似た話が出れば、自分のところだけ遅れているように感じてしまう場面もあるはずです。ただ、必要な時期はお子さまごとに違いますので、周りに合わせて決めても噛み合いません。見るべきは他所の動きではなく、目の前の答案のほうです。
3. 塾のカリキュラムで、何が起きているか
中学受験の塾は、4年生から6年生までの3年間で、ひととおりの単元を進めていきます。その進み方には共通した形があり、時期によって起きることも、つまずきの出方も変わってきます。
| 時期 | 塾で起きていること | つまずきの出方 |
|---|---|---|
| 4年生 | 学習の習慣づけ。単元は具体的で手が動かしやすい | 宿題の量に慣れるかどうか |
| 5年生 | 単元が抽象的になる。算数の中心分野が集中する | 理解が追いつかず、積み残しが出る |
| 6年前半 | 復習と演習。新しい単元より問題の量が増える | 時間が足りず、宿題が回らなくなる |
| 6年後半 | 過去問と志望校別の演習に移る | 取れる問題を落とす、時間内に終わらない |
塾によって呼び方や時期は異なりますが、進み方の骨格はおおむね共通しています。
ここで大事なのは、同じ「できない」でも、時期によって中身が違うということです。5年生の「できない」は理解が追いついていないことが多く、6年生の「できない」は理解はしているのに時間内に処理できないことが多い。原因が違えば、当然ながら手の打ち方も変わってきます。
4. 4年生——まだ様子を見てよい時期です
4年生の内容は、比較的手が動かしやすいものが並びます。計算、図形の基本、生き物や星の名前といったもので、覚えれば点になるものや、手を動かせば解けるものが中心になります。
この時期に出るつまずきの多くは、内容そのものではなく宿題の量と生活のリズムに関するものです。学校から帰って塾へ行き、帰ってから宿題をするという流れに体が慣れるまでは、どうしても回りません。そこは、ある程度まで時間が解決してくれる部分が大きいと思います。
ですから4年生の段階では、外部を足すより、いつ何をやるかという時間の置き方を家庭で整えるほうが効く場面が多いと感じています。それでも回らないとき、あるいは計算そのものでつまずいているときには、早めに手を入れる意味があります。計算は6年生まで毎日使い続けるものですから、ここが不安定なままだと後がしんどくなります。
5. 5年生——ここに分かれ目があります
5年生になると、算数で扱う内容そのものが大きく変わってきます。割合、速さ、比、それに図形の相似といった分野が続けて出てきますので、目に見えないものを頭の中で扱う場面が一気に増え、4年生までのやり方が通じにくくなります。
そして、ここで扱う分野は、そのまま中学受験の算数の中心にあたります。6年生で解く問題の多くは、5年生で習ったものの組み合わせでできています。つまり5年生で積み残したものは、6年生になっても形を変えて出続けるということです。
よくうかがうのが、「4年生までは点が取れていたのに、5年の後半から急に下がった」というご相談です。これは本人が怠けたわけでも、急に力が落ちたわけでもなく、必要な考え方が切り替わったところで、前のやり方のまま進んでしまったということが多い。
ここで手を入れるかどうかは、大きな分かれ目になります。6年生に入ってから5年の内容に戻るのは、時間の面でかなり厳しくなるからです。戻る余裕があるうちに戻る、というのが現実的な考え方だと思います。
なお、5年生の途中で入れる場合には、塾と進度をどう合わせるかという問題が出てきます。塾が先へ進んでいる最中に、戻って埋め直す時間をどこから捻出するのか。ここを決めずに始めると、塾の宿題も埋め直しも中途半端になりますので、何を一時的に減らすのかまで含めて決めておく必要があります。減らす判断は気持ちのよいものではありませんが、両方を全部やろうとして両方が崩れるより、はるかに現実的だと思います。
6. 6年生の前半——回らなくなる時期
6年生になると、新しく習う単元は減っていく一方で、演習の量が一気に増えていきます。塾に通う日数も増え、持ち帰る宿題も増えますので、ここで多くのご家庭が直面するのが、やるべきことが物理的に終わらないという状態です。
この時期のご相談で多いのが、「宿題が回らないので、どれを捨てればよいか分からない」というものです。全部やろうとして全部が中途半端になる、というのはよく見る形だと思います。
ここで必要なのは、量をこなす手伝いではありません。いまの本人にとって、どれが効いてどれが効かないのかを仕分けることです。同じ問題集でも、解けるようになる見込みのある問題と、いま手をつけても効果の薄い問題があります。その線引きは、実際の答案を見てみないことには決まりません。
この時期に家庭教師を入れる場合、教える時間よりも、この仕分けに意味があることが少なくありません。6年生で成績が下がる原因と立て直し方も、あわせてご覧いただくと整理しやすいと思います。
7. 6年生の夏以降——できることは変わります
夏を過ぎると、塾は過去問と志望校別の演習に入ります。この時期からのご相談も多くいただきますし、遅すぎるということはありません。ただし、この時期から入れる場合には、できることがはっきりと変わってきます。
できるのは、志望校の出題に合わせて手を入れることです。過去問を解いたうえで、どこで点を落としているのかを確かめ、そこに絞って直していく形になりますので、出題の形がある程度決まっている学校ほど、この作業はよく効きます。
難しくなるのは、5年生の内容にまとめて戻ることです。時間が限られていますし、戻っている間は過去問が進みませんので、全部を埋め直すのではなく、志望校に出るものから順に埋めるという選び方になります。ここで何を捨てるかの判断が、この時期のいちばん大事な仕事だと思います。
この段階で入れるのであれば、志望校の出題を見たことがある人のほうが、話が早いのは確かです。どの分野が出て、どの形で問われるのかを知っていれば、埋める順番を決められます。過去問の扱い方については最難関中学の過去問はいつから?何年分?にまとめています。
8. 時期によって、頼む中身が変わります
ここまでを整理すると、入れる時期によって頼む中身が変わることが見えてきます。
| 時期 | 主に頼むことになる中身 |
|---|---|
| 4年生 | 計算の安定、学習の進め方の型づくり |
| 5年生 | 割合・速さ・比などの考え方を入れ直す |
| 6年前半 | やることの仕分け、積み残しの埋め直し |
| 6年後半 | 志望校の出題に合わせた解き方の整理 |
実際には重なる部分もありますが、重心は時期によって移っていきます。
ご相談の際に「いつから頼むべきですか」ではなく「いま何に困っているか」からうかがうのは、このためです。困っていることが分かれば、いま入れるべきかどうかも、入れるとしたら何を頼むのかも決まってきます。
あわせて、この時期に入れる場合は期間の見通しも立てやすくなります。入試までの月数が決まっていますので、いつまでにどこを埋めるのかという逆算ができますし、ご家庭としても費用の総額が読みやすくなります。先の見えない状態で続けるより、終わりが見えているほうが、ご本人にとっても走りやすい面があります。
9. 早く入れれば安心、ではありません
ここは、勧める側の立場からも正直に書いておきたいところです。早い時期から家庭教師を入れれば有利になる、という単純な話ではありません。
理由は大きく3つあると思っています。ひとつめは、やることが増えると、塾の宿題に回す時間が減るということ。外部を足すというのは、時間を足すことではなく、時間の配分を変えることです。ふたつめは、教わる相手が増えることで、やり方が混ざってしまう場合があるという点で、塾と違う解き方を教わって、本人の中で整理がつかなくなる場面は実際にあります。
3つめは、ご家庭の費用の問題です。中学受験は塾の費用が継続してかかりますので、そこに上乗せする判断になります。長く続けるほど負担は積み上がりますし、必要のない時期に始めれば、その分だけ早く積み上がります。費用の考え方は塾と家庭教師の併用は月いくらかに試算を置いています。
ここで申し添えておくと、当ネットワークはプロ家庭教師をお引き合わせしている側ですので、この記事は差し引いてお読みいただいて構いません。そのうえで、必要のない時期に入れても効きにくい、というのは現場で見てきたことです。
10. 塾と噛み合わせるという考え方
家庭教師を入れるとき、塾の代わりにするのか、塾と組み合わせるのかで話が変わります。中学受験の場合、塾を続けたまま組み合わせるご家庭が多数です。
組み合わせるのであれば、役割を分けておくほうが噛み合います。塾はカリキュラムに沿って全体を進める役割、家庭教師は本人の答案を見て個別に埋める役割、という分け方です。同じことを2回やっても時間が増えるだけですので、重ならないようにしておく必要があります。
ここで大事なのが、塾で何をやっているかを共有することです。使っている教材、いま進んでいる単元、それに直近のテストの結果。これが分かっていれば、家庭教師の側も重複を避けられます。塾とプロ家庭教師の併用に、宿題の仕分け方も含めて整理しています。
なお、塾に通わずに家庭教師だけで進める形もあります。ご家庭の事情や本人の性格によっては噛み合うこともありますが、模試の受験機会や、同じ学年の中での位置が見えにくくなるという面はあります。そこを模試の単独受験などで補えるかどうかが、判断の分かれ目になります。
もうひとつ、役割を分けるときに決めておきたいのが、塾の宿題をどう扱うかという点です。家庭教師の時間を使って塾の宿題を一緒に進めるのか、それとは別の教材で埋めるのか。前者であれば量は片づきますが、本人が自分で解く時間は減りますし、後者であれば力はつく一方で、塾の宿題は別に片づける必要が出てきます。どちらが正しいということはなく、いまの状況に合わせて決めることになります。
11. 迷ったときに見る、3つのしるし
時期で決められないと書いてきましたので、代わりに見ていただきたいものを3つ挙げます。
- 同じ種類の問題を、繰り返し間違えているか——たまたま間違えたのではなく、その形が来ると毎回落ちるという状態は、考え方が入っていないしるしです
- 間違えた理由を、本人が説明できるか——「計算を間違えた」で止まっているうちは、どこで間違えたのかが見えていません
- 宿題を、やり切ることが目的になっていないか——終わらせることが目的になると、解き直しが後回しになります
3つとも当てはまるようであれば、量を増やしても状況は変わりにくいと思います。そこにあるのは時間の問題ではなく、解き方の問題だからです。
ここについては、ひとつ書いておきたいことがあります。同じ問題でも、正攻法で押していけば答えは出るけれども時間がかかるという形があり、入試の限られた時間のなかでは、その差がそのまま得点差になって表れます。速く解けるかどうかは、時間の配り方を工夫したかどうかではなく、その問題の形に応じた解き方を知っているかどうかで決まってくることが多い。そして、その解き方は市販の解説には載っていないこともあります。
12. この判断を、誰と一緒にやるか
ここまでお読みいただいて、入れるべき時期かどうかの見当は、ある程度ついたのではないでしょうか。第2章の4項目と、第11章の3つのしるしは、ご家庭で確かめていただけます。
一方で、何を頼むのかという段階になると、いまの答案を見ないと言えることが限られてきます。どの単元で止まっているのか、それは理解の問題なのか処理の速さの問題なのか、塾のどこと重なるのか。こうしたことは、総合の偏差値という一つの数字からは見えてきません。
中学受験の指導実績がある教師
23名が登録しています
うち8名は、灘・甲陽学院・東大寺学園・洛南・西大和学園・大阪星光学院・神戸女学院・四天王寺などの最難関校に生徒を送り出した指導実績を持っています。学生講師は在籍していません。
在籍状況は時期により変わります。志望校や学年に合う教師が担当できるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。
ご相談いただいた場合にうかがうのは、学年、通っている塾とクラス、直近の模試の結果、そしていま困っていることの4点です。ここから、いま動くべきかどうかを整理してお返しします。
いまの進め方で問題ないと判断される場合は、そうお伝えします。その場合、家庭教師を入れる必要はありません。
ここまで読んで、どれが近いですか
開始時期について、よくうかがうのがこの5つです。当てはまるものはありますか。
- 宿題が回らず、どれを捨てればよいか分からない答案と教材を見せていただければ、仕分けの基準をお伝えします。
- 5年の算数で止まっている気がするどの考え方が抜けているかを、答案から確かめます。
- 6年の夏を過ぎたが、間に合うか知りたい志望校の出題と、いまの得点の距離を一緒に測ります。
- 入れなくてよい状態かどうか知りたいこの記事の第2章に4項目のチェックがあります。相談は不要です。
- 時期ごとに何を頼むのか知りたい第8章に表を載せています。
学年と、通っている塾の名前だけでもお話をうかがえます。
それでも、一度お話を聞かせてください
入れるかどうかの見当はついたけれど、何を頼めばよいのかで手が止まった、ということがあるかもしれません。
中学受験は、戻れる時期が限られています。5年の内容に戻れるのは6年に入る前まで、という現実があります。だからこそ、いま動くべきかどうかの切り分けは、早いほど手が残ります。
学年と、直近の模試の結果を一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。いまの進め方で問題ないと判断される場合は、そうお伝えします。
力になれることがあるなら、なりたいと思っています。
合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件や地域によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。
ご相談のときに、あると助かるもの
次のものがあると整理が速くなりますが、写真で撮ったもので十分です。
- 直近の模試の結果(設問別の正誤が分かるもの)
- 塾で使っている教材と、いまの単元
- 間違えた問題の答案(途中式が残っているもの)
- 1週間のおおよその過ごし方
とくに3つ目の答案が、この判断ではいちばん効いてきます。同じ「できない」でも、理解が入っていないのか、処理が間に合っていないのかで、打つ手がまったく違うからです。
まとめ:時期ではなく、状態で決める
この記事の要点
- 何年生から、という一般的な答えは出せない
- 宿題が終わり、解き直しができ、質問に行けているなら、いま足す必要は薄い
- 4年生のつまずきは、内容より生活のリズムに関するものが多い
- 5年生で割合・速さ・比が入り、ここが中学受験の算数の中心になる
- 5年生の積み残しは、6年生でも形を変えて出続ける
- 6年前半は、量が増えて回らなくなる。必要なのは仕分け
- 6年夏以降も遅くはないが、全部を埋め直すことはできない
- 入れる時期によって、頼む中身の重心が変わる
- 早く入れれば有利、という単純な話ではない
- 塾と組み合わせる場合は、役割が重ならないようにする
今日できること
最後に、ひとつだけお伝えしておきます。
直近の模試か塾のテストを1枚出してきて、間違えた問題に印をつけてみてください。そのうえで、同じ種類の問題が2つ以上あるかどうかを見る。2つ以上あるようなら、そこがいま止まっている場所だと考えてよいと思います。たまたま散らばっているだけなら、いまの進め方で回っている可能性が高い。いずれにしても、判断の入口としてはこの1枚で足ります。