1. 9月に点数が取れないのは、普通のことですか

結論から言えば、それは普通のことで、9月の時点で合格最低点に届く受験生のほうが少数になります。過去問というのは本番の問題そのものですから、仕上がっていない時期に解いて点が取れないのは、むしろ当然のことでしょう。

ただ、この一言で終わらせてしまうと、ご家庭には何も残りません。「普通」と言われても、あと何点足りていれば普通なのかが分からないからです。差が10点の家庭と66点の家庭とでは、置かれている状況がまったく違う。

この記事でお伝えしたいのは、差の大きさによって、やることが変わるという一点です。10点足りない場合と50点足りない場合とでは、9月にやるべきことが逆になることさえある。

残り時間を先に押さえる

関西の中学入試は、統一解禁日が例年1月中旬に置かれていて、2027年の入試は1月16日(土)が解禁日となる見込みです。そこから逆算すると、次のようになります。

起点入試までの日数週数
2026年9月1日137日約20週
2026年10月1日107日約15週
2026年11月1日76日約11週
2026年12月1日46日約7週

※2027年1月16日を起点として算出。日程は各校の募集要項でご確認ください。

9月から入試までがおよそ20週で、この数字は次の章で使うので、覚えておいてください。

なお、この20週のうち9月から11月末までが13週を占めていて、残り時間の3分の2が、ここに集まっている計算です。12月に入ってからの調整は7週を切るので、動かせる幅はかなり狭くなる。9月の時点で方向を決めておきたいのは、このためです。

2. まず、差が何点かを出す

やることは1つで、過去問の得点と合格最低点との差を出すところから始まります。科目ごとに分ける必要はなく、4科目の合計でかまわない。

出した差を、残りの週数で割ってみると、「週あたり何点伸ばせば届くか」という数字が出てくる。

合格最低点との差9月から(20週)10月から(15週)11月から(11週)
−10点週0.5点週0.7点週0.9点
−30点週1.5点週2.0点週2.7点
−50点週2.5点週3.3点週4.5点
−66点週3.3点週4.4点週6.0点

この表を見ていただくと、差の大きさよりも時期のほうが効いていることが分かるでしょう。同じ50点の差であっても、9月なら週2.5点、11月なら週4.5点で、2か月遅れるだけで、必要な速度が倍近くになってしまいます。

この数字をどう受け取るか

週1点から2点であれば、失点の型を絞って手当てすることで届く範囲でしょう。ところが週4点を超えてくると、過去問演習だけでは追いつかないので、この場合は、単元学習に戻る判断が必要になってきます。

もう1つ、4科目に配分して考える見方もあって、差が30点なら1科目あたり7.5点、50点なら12.5点になる。1科目で12.5点というのは、大問1つ分に相当することが多い。そう考えると、埋められない数字ではないことも見えてきます。

過去問の始め方や年数の考え方については、中学受験の過去問はいつから何年分やるかで扱っていますので、この記事で扱うのは、解いたあとの話のほう。

差を出す前に、確かめておきたいこと

差を計算する前に、1つだけ確かめておきたい点があって、その過去問を、本番と同じ条件で解いたかどうかです。

途中で休憩を入れた、時間を延長した、分からない問題で参考書を見た——こうした状態で出た点数は、本番の実力を示していません。差が実際より小さく出るので、そのまま判断すると見誤ることになります。

逆に、机が散らかっていた、テレビがついていた、体調が悪かったという場合は、実力より低く出ている可能性があるので、そのぶんは差し引いて考えておきたい。

もう1点、合格最低点が何を指しているかも、確かめておきたいところです。過去問集に載っている数字が、合格者最低点なのか合格者平均点なのかで、20点から30点ほど変わることもある。学校によっては公表していない場合もあり、その際は、塾の資料や学校の入試結果ページで確かめることになります。

3. 差が10点以内のとき

9月の時点で差が10点以内であれば、すでに射程圏に入っています。週0.5点という数字は、1回の過去問で1問多く正解すれば足りる速度だからです。

この場合にやること

この段階で、新しい単元に手を広げる必要はありません。必要なのは、取れるはずの問題を落とさない練習のほう。

差が10点以内の受験生だと、失点の中身がケアレスミスに偏っていることは珍しくなく、その場合、学力を上げる必要はなく、同じ学力で点数だけを上げられます。

この位置にいるご家庭がいちばん陥りやすいのが、不安から演習量を増やしてしまうことです。量を増やすと1問あたりの丁寧さが落ちて、かえってミスが増えてしまう。9月の段階で射程圏にいるなら、量ではなく精度に寄せてください。

4. 差が30点前後のとき

差が30点前後という状態は、9月としては標準的な位置にあたり、ご相談いただくなかでも、この帯がいちばん多くなっています。

必要な速度は週1.5点で、1回の過去問につき3問から4問を多く正解できるようになれば届く計算になる。ただ、そのためには、失点の中身を把握しておく必要があります。

この場合にやること

この帯であれば、第6章で扱う4分類をやっておきたいところで、30点の差には、複数の原因が混ざっているからです。ケアレスミスだけでも、解法が身についていないだけでもない状態、と言えばいいでしょうか。

分類してみると、たいてい次のような内訳になります。

失点の型30点のうちの目安
ケアレスミス5〜10点
知識の抜け5〜10点
解法未定着10〜15点
時間切れ5〜10点

※実際の内訳はお子さまによって変わります。分類の目的は、どこに時間を使うかを決めることにあります。

この内訳が出れば、打ち手は決まってくる。ケアレスミスと時間切れは、学力を上げなくても減らせる部分です。ここだけで10点から20点あることが分かれば、残りの差は、思ったより小さくなるはず。

5. 差が50点を超えるとき

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分。

差が50点を超えている場合、過去問演習を続けても点数は動きにくくなります。週2.5点から3.3点という速度は、演習の精度を上げるだけでは届かない水準だからです。

この場合に必要なのは、過去問を一旦止めて、単元学習に戻る判断です。「過去問の点数は、過去問では上がらない」という状態に入っているわけです。

なぜ止めるのか

なぜ止めるのか、その理由は2つあります。

1つは、過去問が有限だという点です。手元にある年数は決まっていますし、一度解いた年度は二度と初見には戻らないので、仕上がっていない状態で消費してしまうと、12月に測るための材料がなくなってしまう。

もう1つは、本人への影響です。取れない過去問を繰り返し解いていると、志望校の問題そのものへの苦手意識が育ってしまい、この時期にそれをつくると、直前期に響いてきます。

止めたあとに何をするか

単元学習に戻る場合は範囲を絞る必要があって、残り20週で全単元をやり直すことは、できないからです。

  1. 志望校の過去問5年分で、出題された単元を数える(所要1時間)
  2. 頻出の上位5単元を特定する
  3. その5単元だけ、5年生の教材に戻って解き直す
  4. 4週間後に、別の年度の過去問で測り直す

4週間という期間にも理由があって、短すぎると効果が出る前に判断することになり、長すぎると過去問演習の時間が足りなくなります。9月に止めた場合、10月には戻れる計算になる。

戻った結果、差が縮まらなかったら

4週間やって差が変わらない場合は、志望校の水準と現在地に開きがあると考えられます。ただし、この判断は10月末まで待ってください。その理由については、第11章で詳しく扱うことにします。

戻る単元を、どう選ぶか

頻出上位5単元を絞る作業について、もう少し具体的に書いておくと、かかる時間は1時間ほどです。

志望校の過去問を5年分並べて、算数であれば、大問ごとに何の単元が出ているかを書き出していきます。速さ、図形の移動、場合の数、規則性、水量変化といった形で、単元名を紙に並べる作業で、5年分すべてで出ている単元があれば、それが最優先になる。

ここで注意したいのが、単元名が同じでも問われ方が違う場合があるという点です。同じ「速さ」でも、ダイヤグラムを読ませる学校と、旅人算の計算を求める学校とでは、必要な準備が変わってきます。5年分を並べてみると、その学校に特有の出題の形が見えてくるはず。

絞り込んだ5単元については、5年生の教材まで戻ります。6年生の教材から始めると、そこでつまずいたときにさらに戻ることになり、時間が読めなくなるからです。5年生の基本問題が解けることを確認してから、6年生の応用に進む。この順序なら、4週間という期間の見通しが立つでしょう。

6. 失点を4つに分ける

ここからは失点の中身のほうを見ていくことにして、分類は次の4つです。

型状態打ち手
①ケアレスミス解き方は合っているが、計算や転記で失点記録して、頻度の高いものから潰す
②知識の抜け知っていれば解けた(用語、公式、年号)該当分野の一問一答で埋める
③解法未定着解説を読めば分かるが、自力では出てこない解き直しと、同単元の類題
④時間切れ時間があれば解けた処理速度と、解く順番の設計

分類の手順

採点が終わった答案を前にして、間違えた問題を1問ずつ見ていく作業で、1年分なら30分ほどで済みます。

  1. 答えは合っていたか——合っていて途中でミスしたなら①
  2. 知っていれば解けたか——用語や公式を知らなかったなら②
  3. 解説を読んで分かったか——読めば分かるなら③
  4. 手をつけていたか——白紙で、時間があれば解けたなら④

この作業は、お子さま本人にやらせるほうが効く。保護者が分類してしまうと、本人の中に「自分がどこで落としているか」が残らないためです。本人が判断に迷った問題だけ、一緒に見る形で足りるでしょう。

分類の目的は、点数を上げることではなく、時間の使い先を決めることにあって、4つのうちどれが多いかで、次の1週間にやることが変わってきます。

4つが混ざっているときの順序

実際のところ、4つとも出てくることがほとんどで、その場合の着手の順番は、次のように決まっています。

  1. ①ケアレスミス——学力を上げずに減らせるため、最も費用対効果が高い
  2. ④時間切れ——解く順番を変えるだけで動くことがある
  3. ②知識の抜け——分野を絞れば短期間で埋まる
  4. ③解法未定着——時間がかかるため、最後に腰を据えて取り組む

③から手をつけたくなるところですが、これは最も時間がかかる型です。先に①②④を処理すると、残りの差が小さくなり、③に使える時間の見通しも立ってくる。

7. 「解けなかった」を、さらに2つに分ける

4つの型のうち、実務でいちばん混同されるのが③解法未定着と④時間切れで、どちらも答案の上では「解けていない」という同じ結果になります。

ところが、打ち手のほうは正反対です。③は解法を増やす方向、④は処理を速める方向なので、ここを取り違えたまま進むと、数か月を無駄にすることになります。

見分け方は、答案に残ります

過去問の答案を、次の観点から見ていきましょう。

見るところ③解法未定着④時間切れ
白紙の位置問題番号がばらける後半にまとまっている
途中式書き始めて止まっているそもそも手をつけていない
消しゴムの跡多い(方針を変えている)少ない
前半の出来前半にも失点がある前半は取れている

いちばん分かりやすいのが1行目で、白紙が後半に集中しているなら、時間切れの可能性が高くなります。逆に前半にも白紙が混じっているなら、解法の問題と考えられる。

時間を計り直すと、はっきりする

それでも判断がつかない場合に、確かめる方法があって、時間を計らずに、同じ年度をもう一度解かせてみることです。

時間制限を外して解けるなら④時間切れ、時間があっても解けないなら③解法未定着です。この確認には30分から1時間かかりますが、ここを間違えたまま数か月進むより、はるかに安く済みます。

それぞれの打ち手

③解法未定着の場合、必要なのは解き直しで、間違えた問題を解説を見ずにもう一度解き、それでも解けなければ解説を読み、閉じてから白紙にもう一度書く。ここまでやって初めて身についたといえます。同じ単元の類題を塾教材から1問か2問足しておくと、定着はさらに強くなるでしょう。

④時間切れの場合は、解法を追加しても意味がなく、やることは次の2つになります。

後者については、実際に測ってみるとよく分かるはずで、前半で予定より5分超えているなら、その5分がそのまま後半の1問に相当するからです。計算の手数を減らす工夫で、この5分は縮まっていきます。

「解けなかった」の、もう一段先

③解法未定着と判定された場合、もう一歩踏み込んで考えたいことがあります。最難関の問題には、「このパターンはこう解かないと時間内に終わらない」という専用の解き方があります。

正攻法でも答えは出ます。ただ10分かかる。専用の解法なら2分で終わる。この差は、解説を読んで解き直すだけでは埋まりません。その解法の存在自体を知らないためです。

8. 型ごとに、週何時間を使うか

分類ができたら、次は時間配分を決めていきます。9月の平日に家庭学習へ回せるのは、塾のある日で1時間ほど、塾のない日で4時間台、というのが標準的な形でしょう。

型週あたりの目安やること
①ケアレスミス15分×5日計算と一行問題。速度より正確さ
②知識の抜け週1時間失点した分野の一問一答
③解法未定着週3〜4時間解き直しと類題
④時間切れ週30分前半の時間を計る練習

合計すると週6時間前後になり、これに過去問を解く時間(1年分で3〜4時間)が加わりますので、週10時間が上限の目安です。それ以上を組むと、塾の課題が回らなくなってしまう。

解く時間と直す時間の比率

過去問演習でいちばん多い失敗は、解いて点数を見て、それで終わりにしてしまうことで、これでは実力測定であって、学習になっていません。

時間配分で言えば、解く3割・直す6割・記録1割くらいが目安になります。1年分を解くのに1時間半かかるなら、直しに3時間かける、ということです。

「10年分やった」という事実そのものには実は価値がなく、価値があるのは、解き直した問題の数のほうです。

時間が足りている場合の配分

週10時間が上限と書きましたが、塾の課題が少ない週や、学校行事のない週には、余裕が出ることもあるでしょう。その場合の使い先も、決めておきたいところです。

優先されるのは、③解法未定着に充てる時間の上積みで、ここは積み上げに時間がかかる型ですので、余裕のある週にまとめて進めておくと後が楽になります。

逆に、①ケアレスミス対策の時間を増やすのは勧めません。計算と一行問題は、毎日15分という形で続けることに意味があって、まとめて2時間やっても効果が上がるものではないからです。頻度が効く型と、量が効く型を分けて考えてください。

9. 2回目・3回目で点が動かないとき

同じ学校の過去問を2年分、3年分と解いても、点数が変わらない——この状態になったときの原因は、次のどれかでしょう。

原因確かめ方
解き直しをしていない間違えた問題を、もう一度解けるか試す
解き直しが「解説を読む」で終わっている白紙に自力で書けるか確かめる
失点の型が特定できていない4分類をやっているか
差が50点を超えている第5章の判断へ戻る

いちばん多いのは2番目で、解説を読んで「分かった」と思った状態は、まだ解けるようになっていません。解説を閉じてから白紙に書けるかどうかで、確かめられる。

新しい年度に進む前に

点が動かないまま次の年度へ進むのは、いちばん避けたい形で、新しい問題を解くほうが勉強した気になりますが、手元の弾を消費しているだけになります。

この場合は、いったん新しい年度に進むのを止めて、すでに解いた年度の間違いをすべて解き直すほうが確かで、それから次に進んだほうが、結果として速く進めるはずです。

年度を変えるか、同じ年度を繰り返すか

点が動かないとき、同じ年度をもう一度解かせるか、別の年度に進むか、という判断に迷うこともあるでしょう。

同じ年度を繰り返す場合は、答えを覚えてしまうという問題が出てきて、2週間以上あけないと、記憶で解いてしまい実力が測れません。一方で別の年度に進むと、手元の弾が減っていく。

現実的な形としては、解き直しが終わるまで新しい年度に進まないという運用になります。間違えた問題を白紙に自力で書けるようになってから、次の年度へ進む。この順序であれば、年度を消費しながら、実力も上がっていきます。

なお、直近3年分は12月まで残しておいてください。本番に最も近い傾向を持つ年度ですので、仕上がった状態で測るために取っておく価値があります。

10. 科目によって、出やすい型が違う

4つの型は科目ごとに出方が変わってくるので、分類するときの参考にしてみてください。

科目出やすい型見るところ
算数③解法未定着・④時間切れ大問1と2の取りこぼし、後半の白紙
国語④時間切れ・③解法未定着記述の空欄、読み返しの回数
理科②知識の抜け・③解法未定着分野別の得点(計算分野と暗記分野を分ける)
社会②知識の抜け失点した分野の偏り

理科については、分野別に集計しておきたいところです。「理科ができない」ではなく「電流と力学で落としている」まで解像度を上げると、対策は半分に絞れます。計算分野の失点は算数と同じ構造なので、解法の型で対処できる。

国語で記述が空欄になっている場合は、時間切れか、書き方が分からないかのどちらかで、これも時間を外して書かせてみれば、はっきりします。

併願校の過去問は、いつ入れるか

第一志望の点数が取れないと、併願校まで手が回らなくなりがちです。ただ、ここを後回しにしすぎると、別の問題が出てくる。

併願校は第一志望より易しいことが多いので、「実力があるから解ける」と考えられがちです。ところが実際には、形式が違えば時間配分も変わります。第一志望より易しいはずの学校で時間切れを起こして不合格、という事故は、現実に起こるものです。

目安としては、11月に入ったら併願校を3年分だけ入れる形が現実的でしょう。目的は点数を取ることではなく、時間配分を確かめることにあって、「易しいから解ける」ではなく「易しい問題で取りこぼさない練習」として使えば、当日の事故を防げます。

11. 志望校を変える判断は、まだ先です

9月の過去問で点が取れないと、志望校を下げるべきかという話が出てくる。ただし、この判断は、9月にするものではありません。

そう考える理由は、大きく分けて2つある。

1つは、夏の成果が数字に出てくるまでに時間差があるという点です。反映は早くても9月の後半以降なので、9月上旬の1回で判断すると、積み上げたものが出る前に決めてしまうことになる。

もう1つは、1回の得点では判断できないという点です。過去問には年度ごとの難易差があって、同じ実力でも点数は上下しますから、見るべきは1回の点数ではなく、差の推移のほう。

時期合格最低点との差読み方
9月−30点スタート地点。ここで判断しない
10月−20点縮まっていれば軌道に乗っている
11月−10点射程圏。取りこぼしの削減に集中
12月±0前後本番の振れ幅の中に入った

関西の統一解禁日が1月中旬にあるため、受験校を組み替える実質的な期限は11月中になります。9月から11月末までの13週で、差の推移を見てから決めても間に合うはず。

判定の読み方については模試でD判定・E判定が出たらで詳しく扱っていて、成績そのものの立て直しは中学受験6年生で成績が下がる3つの原因にまとめました。

点数を見たときの、最初の一言

差の話とは別に、もう1つお伝えしておきたいのが、過去問の点数が返ってきたときの、最初の言葉です。

9月の過去問は、本人にとっても衝撃が大きいもの。塾の模試とは違い、実際に受ける学校の問題で、しかも合格最低点というはっきりした基準がある。そこに届かなかったという事実は、数字として突きつけられます。

ここで「何点やった?」から入ってしまうと、点数そのものが評価の対象になってしまう。代わりに、「どこが解けた?」から始めるほうが届きます。取れた問題を先に確かめておくと、そのあとの失点の話も、受け入れられやすくなるからです。

この記事で扱ってきた4分類も、本人と一緒にやる作業です。責める材料ではなく、次にやることを決めるための道具として扱えるかどうか。そこで、9月以降の過去問への向き合い方が変わってきます。

12. この切り分けを、誰と一緒にやるか

ここまでの手順は、ご家庭でも進められるもので、差を出し、週あたりの点数に変換し、失点を4つに分ける——この順序で方向が見えるなら、それがいちばん早い形でしょう。

難しくなるのは、③解法未定着と④時間切れの見分けです。第7章で答案の見方を示しましたが、判断に迷う問題はどうしても出てきて、とくに算数では、方針は合っていたのに途中で詰まった場合など、どちらとも取れる答案が残ります。

もう1つが、差が50点を超えているときに、どの単元まで戻るかという判断です。志望校の出題から頻出単元を絞る作業ですが、同じ「速さ」でも学校によって問われ方が違うので、出題の形まで見ないと、戻る範囲を決められません。

中学受験の指導実績がある教師

23名が登録しています

うち8名は、灘・甲陽学院・東大寺学園・洛南・西大和学園・大阪星光学院・神戸女学院・四天王寺などの最難関校に生徒を送り出した指導実績を持っています。学生講師は在籍していません。
在籍状況は時期により変わります。担当できる教師がいるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。

ご相談いただく場合にうかがうのは、志望校、過去問の得点と合格最低点、解いた答案、そして直近の模試の結果、といったところ。ここから、差が埋まる範囲なのか、単元学習に戻る段階なのかを切り分けます。

いまの進め方で届くと判断される場合は、そうお伝えしますし、その場合、家庭教師を入れる必要はありません。

ここまで読んで、どれが近いですか

この時期、いちばん多いのがこの5つです。近いものがあれば、そのままお送りください。

  • ③解法未定着と④時間切れの見分けがつかない答案を拝見すれば、白紙の位置と途中式の残り方から切り分けられます。
  • 差が50点あるが、どの単元まで戻ればよいか分からない志望校の出題から頻出単元を絞ります。過去問と得点があればお返しできます。
  • 解き直しをしているのに点数が動かない解き直しの深さが原因のことがあります。やり方を具体的にお伝えします。
  • 合格最低点との差を、どう読めばよいか知りたいこの記事の第2章に週あたりの換算表があります。相談は不要です。
  • 失点を4つに分ける手順を知りたい第6章に手順を書いています。まずはご家庭で試してみてください。

「点数が取れなくて不安」。得点と志望校だけでも、そこからお話をうかがえます。

それでも、一度お話を聞かせてください

分類をしてみたけれど、どこに時間を使えばよいか決めきれなかったかもしれません。あるいは、差が思ったより大きくて、手が止まってしまったかもしれません。

この時期にご家庭だけで抱えていると、判断がつかないまま過去問だけが減っていきます。手元にある年数は決まっていますので、そこがいちばん惜しいところです。

志望校と、過去問の得点を一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。いまの進め方で届くと判断される場合は、そうお伝えします。

力になれることがあるなら、なりたいと思っています。

合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。

相談のときに、あると助かるもの

次のものがあると切り分けが速くなりますが、写真で撮ったもので十分でしょう。

なかでも判断に効くのが1つ目で、答案があれば、白紙の位置と途中式の残り方から、解法の問題なのか時間の問題なのかが見えるからです。点数だけを見ていては、ここまでは分からない。

まとめ:焦らないための、具体的な数字

この記事の要点

  • 9月に合格最低点へ届かないのは普通だが、差の大きさで対応が変わる
  • 差を残り週数で割ると、週あたり何点必要かが出る(9月なら約20週)
  • 差10点以内は射程圏。量を増やさず、取りこぼしを減らす
  • 差30点前後は標準的な位置。4分類で内訳を出す
  • 差50点超は、過去問を一旦止めて単元学習に戻る判断が要る
  • 失点は①ケアレスミス②知識の抜け③解法未定着④時間切れの4つに分ける
  • 着手順は①→④→②→③。③は最も時間がかかるため最後
  • ③と④の見分けは、白紙の位置で分かる(後半に集中していれば時間切れ)
  • 時間を外して解かせると、③か④かがはっきりする
  • 時間配分は、解く3割・直す6割・記録1割
  • 志望校を変える判断は11月中まで待てる。9月の1回では決めない

今日やること

最後に、もう1つだけお伝えしておきます。

この記事を読んで最初にやっていただきたいのは、差を週あたりの点数に変換することです。合格最低点との差を、入試までの週数で割る——作業としては、それだけのこと。

週1点であれば、1回の過去問で2問多く取れば届く計算ですが、週4点となると、演習の精度を上げるだけでは追いつきません。この数字が出た時点で、次にやることが決まります。

電卓があれば30秒で出る数字なので、紙に書き出すところから、9月の設計が始まっていきます。

よくある質問

Q 9月の過去問で点数が取れないのは、普通ですか。
A 9月の時点で合格最低点に届く受験生のほうが少数ですので、普通のことです。ただし差の大きさによって、やることが変わります。合格最低点との差を入試までの週数で割ってみてください。9月からであれば約20週ですので、差が30点なら週1.5点、50点なら週2.5点という数字が出ます。週1点から2点なら失点の型を絞れば届く範囲ですが、週4点を超えると演習だけでは追いつきません。
Q 合格最低点まであと何点なら間に合いますか。
A 点数そのものより、残り週数で割った数字で判断してください。9月時点で差が10点以内なら射程圏で、この場合は演習量を増やさず取りこぼしを減らすほうが効きます。30点前後は標準的な位置で、失点を4つに分類して内訳を出す段階です。50点を超えている場合は、過去問演習だけでは動きにくいため、単元学習に戻る判断が必要になります。
Q 過去問を一旦やめたほうがいい場合はありますか。
A 合格最低点との差が50点を超えている場合は、止める判断があります。理由は2つで、1つは過去問が有限であること。一度解いた年度は初見に戻りませんので、仕上がっていない状態で消費すると12月に測る材料がなくなります。もう1つは、取れない過去問を繰り返すと志望校の問題そのものへの苦手意識が育つためです。志望校の頻出上位5単元に絞って4週間戻り、別の年度で測り直す形が現実的です。
Q 解けなかった問題が、解法の問題なのか時間の問題なのか分かりません。
A 答案の白紙の位置を見てください。後半にまとまっているなら時間切れの可能性が高く、前半にも白紙が混じっているなら解法の問題です。途中式が書き始めて止まっているなら解法未定着、そもそも手をつけていないなら時間切れ。それでも判断がつかない場合は、時間を計らずに同じ年度をもう一度解かせてください。時間制限を外して解けるなら時間切れ、解けないなら解法未定着です。
Q 解き直しをしているのに、点数が動きません。
A 解き直しが「解説を読む」で終わっている可能性があります。解説を読んで分かったと思った状態は、まだ解けるようになっていません。解説を閉じてから白紙に自力で書けるかどうかで確かめてください。また、時間配分としては解く3割・直す6割・記録1割が目安です。1年分を1時間半で解くなら、直しに3時間を使う形になります。新しい年度に進むより、すでに解いた年度の間違いをすべて解き直すほうが結果として速くなります。
Q 失点を4つに分けるのは、親がやってもよいですか。
A お子さま本人にやらせてください。保護者が分類してしまうと、本人の中に「自分がどこで落としているか」が残りません。手順は、答えは合っていたか、知っていれば解けたか、解説を読んで分かったか、手をつけていたか、の4つを順に確認する形です。1年分で30分ほどで終わります。本人が判断に迷った問題だけ、一緒に見る形で足ります。
Q 9月の過去問の結果で、志望校を変えるべきでしょうか。
A 9月に判断するものではありません。理由は2つで、夏の成果が数字に出てくるのは早くても9月後半以降であること、そして過去問には年度ごとの難易差があり1回の得点では判断できないことです。見るべきは差の推移になります。関西の統一解禁日が1月中旬にあるため、受験校を組み替える実質的な期限は11月中です。9月から11月末までの13週で推移を見てから決めれば間に合います。
Proチューターズネットワーク 編集部
中学受験を専門とするプロ家庭教師マッチングサービス「Proチューターズネットワーク」が運営する受験情報メディア。最難関校から中堅校まで、志望校のレベルを問わずご相談を承っています。兵庫・神戸を拠点に、関西の中学受験の情報を、保護者の方に向けて発信しています。

解けなかったのは
解法か、時間か

答案の白紙の位置と途中式から、
どちらかを切り分けます。

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