1. 結論:甲陽は「2日間とも同じ形」。差がつくのは安定性

甲陽学院中の入試を一言で表すなら、「同じ形の試験を、2日続けて受け切れるか」を問う設計です。国語と算数は両日に置かれ、しかも1日目と2日目で問題の構成が大きく変わりません。

これは灘とは対照的です。灘の算数は1日目が短答形式、2日目が記述形式と性格が明確に分かれており、日ごとに求められる力が違います。灘の設計については灘中の算数はなぜ難しい?合否を分ける「1日目と2日目の違い」と対策で詳しく扱いました。

形が同じだと、何が起きるか

同じ形式が2回繰り返されるということは、得意な形なら2回とも得点でき、苦手な形なら2回とも落とすということ。1日目の失敗を2日目の別形式で取り返す、という構図になりにくいのが甲陽です。

したがって対策の主眼は、飛び道具を用意することではありません。同じ精度を2日続けて出せる状態を作ること——これに尽きます。処理の安定性が、そのまま得点の安定性になります。

甲陽の対策で最初に言うべきことは「難問を解けるようにする」ではなく、「2日目の55分でも、1日目と同じ手つきで解ける状態を作る」です。

2. 入試の骨格を数字で押さえる

まず事実関係を確認します。直近の入試は次の形で実施されました。

日程科目時間・配点
1日目国語55分・100点
算数55分・100点
理科55分・100点
2日目国語55分・100点
算数55分・100点

※合計500点満点。考査は筆答のみで面接はありません。2日間のうち1考査でも受験しなかった場合は失格となります。募集人員は200名(男子)。日程・配点は年度により変わる可能性がありますので、学校公表の募集要項をご確認ください。

全科目が同じ重みで並んでいる

この表で最初に目を引くのは、すべての考査が55分・100点で揃っていることです。特定の科目に傾斜がかかっていません。

結果として、1科目の穴が、そのまま総得点の穴になります。算数が得意でも、国語で2日続けて崩れれば200点分が動きます。逆にいえば、極端な得意を作ることより、極端な苦手を作らないことが効きます。

高校からの募集がない

学校の構造として押さえておきたいのが、甲陽学院が完全型の中高一貫校で、高校からの募集を行っていないことです。中学入試が唯一の入り口になります。

この設計は、入学後の6年間が一つの流れとして組まれていることを意味します。中学の段階から高校範囲を見据えた進度になりやすく、入学後も学習のペースは緩みません。合格がゴールではないという点は、受験を決める段階で共有しておく価値があります。

社会がないという設計

もう一点、科目構成として押さえておきたいのが社会が課されていないことです。4科目型の入試とは、時間の配分がまったく変わります。

併願校が4科目型であれば、社会の学習もが要ります。どの学校を併願するかによって、6年後半の時間配分が変わるということ。志望校の組み合わせは、単なる出願先の問題ではなく学習設計の問題でもあります。

倍率の低さは、易しさを意味しない

甲陽の実質倍率は、近年おおむね1.5倍前後で推移しています。数字だけを見ると低く感じられるかもしれません。ただ、これは受験する層がすでに絞り込まれている結果です。

合格最低点は年度によって変動しますが、500点満点の5割台という年もあります。満点近くを取る必要はない一方で、半分を切ると届かない——この水準感を最初に共有しておくと、日々の学習の目標が具体的になります。

甲陽学院中の2日間5考査500点の構造 1日目に国語・算数・理科、2日目に国語・算数を実施し、全て55分100点で合計500点になる構造を示した図。 2日間・5考査・500点 1日目 国語 55分/100点 算数 55分/100点 理科 55分/100点 2日目 国語 55分/100点 算数 55分/100点 理科はなし 合計 500点満点 全考査が同じ配点 この構造が意味すること 国算は2回ぶん=各200点。理科は1回のみ=100点 理科の失敗は取り返す場所がない

図|1日目と2日目でほぼ同じ形式が繰り返される。理科だけは1日目の1回で決まる。

3. 灘と同じ日程——併願できないという最初の分岐

対策の前に、受験校の組み方の話をします。甲陽の入試日程は、関西の統一入試日の1日目・2日目にあたります。同じ枠に灘の入試も置かれています。

両方は受けられない

甲陽と灘は併願できません。どちらかを選ぶことになります。この決断は6年生の秋から冬にかけて行われることが多く、ご家庭にとって最も重い判断の一つになります。

判断材料は、模試の判定だけではありません。問題の形との相性が大きく効きます。灘の算数は1日目と2日目で性格が異なり、短時間で答えだけを出す処理と、筋道を書いて示す記述の両方が要ります。一方の甲陽は、同じ形式を2回、安定して処理する力が問われます。

タイプ相性が良い傾向理由
調子の波が小さい甲陽同じ形を2日続けて出せる
瞬発力型・ひらめき型短答形式で力を出しやすい
記述で筋道を示すのが得意2日目の記述で差をつけられる
処理の精度が安定している甲陽取りこぼしの少なさが効く

※あくまで傾向です。過去問での実際の得点を優先して判断してください。

2日間を「休まず受け切る」という条件

もう一つ、見落とされがちな条件があります。2日間の考査のうち1つでも受験しなかった場合は失格という規定です。体調を崩しても、1日目だけで判断されることはありません。

これは対策の話ではなく体調管理の話です。1月中旬という時期を考えれば、体調を整えること自体が受験戦略の一部になります。生活リズムの作り方は中学受験と生活リズムで扱っています。

午後受験の可否も設計に入る

実務的な話として、甲陽の考査は両日とも午前中に終わります。したがって午後に別の学校を受験することは可能です。ただし、2日間で5考査を受け切る負荷は小さくありません。

午後受験を組むかどうかは、体力と精神状態を見て決める部分です。1日目の午後に受験を入れると、その日の夜に甲陽の2日目の準備をする時間が削られます。組む場合は、この点まで含めて逆算してください。

合格発表までの日程も押さえる

合格発表は2日目の翌日の午後に行われます。この結果によって、その後の受験スケジュールが変わるご家庭もあります。発表の日時と、次の出願の締切を並べて確認しておいてください。

関西の入試は日程が過密です。1月中旬から数日で複数校の受験が進みます。関西の日程感覚を前提にした逆算については最難関中学の過去問はいつから?何年分?関西の日程から逆算するで扱っています。

なお、併願校を検討する際は、科目構成の違いにも注意してください。甲陽が3科目型であるのに対し、4科目型の学校を併願すると社会の学習時間がが要ります。受験校の組み合わせが、そのまま週の時間割を決めます

あわせて、学校そのものを見る機会も作っておいてください。校風が合うかどうかは、6年間の過ごし方を左右します。説明会や文化祭で何を見るべきかは中学受験の学校説明会・文化祭の見方にまとめています。

受験校を決めた後に、対策は加速する

最後に、受験校の決定時期について触れておきます。灘と甲陽のどちらを受けるかが決まると、対策の密度は一段上がります。過去問の対象が定まり、鍛える形式が絞れるためです。

逆に、決めきれないまま秋を過ごすと、両方の形式に少しずつ触れる時間の使い方になります。これは最も効率が悪い形です。判断を先送りすること自体にコストがあるという点は、意識しておいてよいと思います。

決め手が見つからない場合は、同じ年度の過去問を両校分そろえて解き、得点率を比べてください。模試の判定より、実際の答案のほうが多くを語ります

4. 500点の設計図:どこで何点を取るか

次に、得点の設計です。500点をどう分解して考えるかを整理します。

科目配点点差がつきやすい場所優先度
算数(2日分)200点図形、途中式の書き方、取捨選択最優先
国語(2日分)200点記述、長文の読み切り高い
理科(1日分)100点実験考察、物理・化学分野

配点だけを見れば算数と国語が同じ200点です。短期間で点数が動きやすいのは算数崩れると立て直しに時間がかかるのは国語という違いがあります。この非対称性を踏まえて時間を配分します。

合格最低点から逆算して目標を置く

目標設定の方法として実務的なのは、合格最低点に少し上乗せした数字を、科目ごとに割り振るやり方です。500点満点で仮に300点を目標に置くなら、算数120点・国語110点・理科70点、といった形になります。

この割り振りは、お子さまの得意不得意に応じて変えて構いません。大事なのは、「全科目で8割」といった非現実的な目標を置かないことです。甲陽は満点を取る入試ではありません。どこで取り、どこは捨てるのかを決める入試です。

「苦手を作らない」が最優先になる理由

先ほど触れたとおり、甲陽は全考査が同じ配点です。仮に理科が50点しか取れない状態だと、それだけで合格最低点への距離が50点開きます。これを算数で埋めようとすると、2日間で相当な上積みがが要ります。

一方、理科を70点まで引き上げる作業は、算数で20点を上積みするより短時間で済むことが多いものです。伸びしろの大きい科目から手をつける——配点が均等な入試では、この原則がとくに効きます。

5. 算数——図形の比重と、途中式という得点源

ここから科目別に入ります。まず算数です。

図形が大きな比重を占める

甲陽の算数では、図形分野の出題が2日間を通して大きな割合を占めます。速さと数列も頻出の単元です。出題される分野が比較的はっきりしているため、対策の方向を定めやすい入試だといえます。

これは裏を返せば、図形が弱いまま本番を迎えると、2日分で影響が出るということ。6年の夏の時点で図形に不安があるなら、そこが最優先の投資先になります。

途中式を書かせる形式が、部分点になる

もう一つの特徴が解答形式です。甲陽の算数は考え方や途中式を書かせる形式が多く、問題用紙に直接記入する作りになっています。

ここが実は大きな得点源です。完答できなかった問題でも、途中まで筋道が示せていれば部分点の可能性があります。逆に、答えだけを書く習慣がついていると、この部分点を丸ごと捨てることになります。

途中式で押さえたい3点

  • 何を求めようとしているのかを、式の前に一言で書く
  • 使った条件がどれかを、式の中で分かるようにする
  • 途中で行き詰まっても、そこまでを消さずに残す

3つ目が特に重要です。行き詰まった跡を消してしまう子は多いのですが、その部分に点がついた可能性があります。消しゴムで得点を消している状態です。

図をかく手そのものを鍛える

図形の対策というと、解法パターンの習得に意識が向きがちです。ただ現場で見ていると、差がつくのは図を自分でかき直せるかどうかであることが多いものです。

問題用紙の図は、必要な補助線が入っていない状態で与えられます。そこに線を足す、あるいは別の紙に大きくかき直す。この手を動かす作業を面倒がる子は、図形で伸び悩みます。日々の演習で、図をかく習慣そのものを作っておいてください。

現場メモ|消しゴムで消される部分点

途中式を消してしまう子は、本当に多いです。答えが合わないと分かった瞬間に、きれいに消す。もったいない話です。あの数行に点がついていた可能性があるのに。

だから指導では、最初に「消さないで」とだけ伝えます。それだけで数点動くことは珍しくありません。1回の試験で数点なら、2日間で無視できない差になります。

お子さまの答案を、一度見てください。消し跡がたくさんあるなら、まずそこからです。

難易度順に並んでいるとは限らない

もう一点、時間配分に関わる注意があります。甲陽の算数は必ずしも易しい順に並んでいません。前半に重い問題が置かれることもあります。

最初から順に解く習慣のままだと、序盤で時間を溶かす危険があります。まず全体を見て、解ける問題から着手する——この運用を過去問演習の段階から徹底しておいてください。

55分という時間の意味

大問6題前後、小問にして15〜20問程度が55分に置かれています。単純計算で1問あたり3分弱です。1問に10分かけた時点で、他の3問を失っています

この感覚は、机上の理解では身につきません。時間を計って解き、終わった後に「どこで時間を失ったか」を確認する作業を繰り返すことでしか作れないものです。

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6. 国語——記述の比重と、字数制限のない解答欄

甲陽の国語は、両日とも長文2題の構成が基本です。論説文や随筆と、物語文の組み合わせで出題されるのが通例で、1日目と2日目で構成が大きく変わりません

記述の比重が高い

最大の特徴は記述の比重です。年度により差はありますが、配点のかなりの部分を記述が占める年もあります。選択肢を絞る技術だけでは届かない構造になっています。

しかも、字数制限のない記述が中心です。解答欄の大きさを見て、自分で分量を決めることになります。これは慣れていないとかなり書きにくい形式です。

字数制限がない解答欄への対処

  • 解答欄の行数と幅から、おおよその文字数を見積もる練習をしておく
  • 「聞かれたことに答える一文」を先に決め、そこへ説明を足していく
  • 本文の言葉をそのまま並べず、設問の問い方に合わせて言い換える

とくに1つ目は、過去問演習でしか鍛えられません。解答欄の実物大で書く経験を、秋以降に積んでおいてください。縮小されたコピーで練習していると、本番で分量の感覚が狂います。

漢字は取り切る

一方、漢字については比較的取りやすい形式とされています。本文中の傍線が引かれた語を漢字にする形式が中心で、難問というより確認に近い性格です。

ここは落とせません。2日間で積み上げれば無視できない点数になります。記述に時間を使うためにも、漢字と語句は短時間で処理できる状態にしておくことが前提になります。

論説文と物語文で、読み方を切り替える

両日とも論説文(または随筆)と物語文の組み合わせで出題されるため、1回の試験の中で読み方を切り替える必要が出てきます。論説文は筆者の主張と根拠の関係を追い、物語文は人物の心情が動いた場面を押さえる————この作業の性質が違います。

切り替えが苦手な場合、2題目に入った時点で読み方が前の文章のまま残り、精度が落ちます。過去問演習では、2題を続けて解いたときに後半の得点がどう変わるかを必ず確認してください

本文が長く、読み切ること自体が負荷になる

出典には、内容の重い書籍から採られたものも見られます。しかも比較的新しい書籍から選ばれる傾向があるため、読み慣れた定番の文章ばかりを練習していると対応しにくいという性格があります。

対策としては、普段から硬い文章に触れておくこと、そして55分で長文2題を読み切って書くという時間の使い方を体に入れておくことです。読解力の問題である以前に、時間内に処理し切る訓練の問題でもあります。

7. 理科——1日目だけに置かれている意味

理科は1日目のみ、55分・100点で実施されます。やり直しの機会がない唯一の科目です。

分野の偏りを把握しておく

出題は物理・化学・生物・地学の全分野にわたりますが、物理と化学からの出題が多い傾向が指摘されています。計算を伴う設問の比重が高くなりやすい構成です。

実験や観察の設定を読み取って考えさせる形式が多く、用語を覚えているだけでは対応しにくいという特徴があります。知識を土台にして、その場で条件を処理する力が問われます。

理科の得点は、算数の計算力に支えられている

物理・化学の比重が高いということは、計算処理の量が多いということでもあります。ここで効いてくるのが、算数で鍛えた計算の速さと正確さです。

理科が伸びないと相談を受けたとき、原因が理科の知識ではなく計算の詰めの甘さにあることは珍しくありません。理科の点が伸びないなら、まず算数の計算を疑う——この見立ては、甲陽に限らず理科の比重が高い入試で有効です。

1日目に置かれていることの実務的な意味

理科が1日目にしかないという事実には、実務上の意味が2つあります。

一つは、理科の失敗は取り返す場所がないということ。もう一つは、1日目の3科目目に置かれているということ。国語・算数を受けた後の3科目目で、集中力が落ちた状態で臨むことになります。

過去問を解くときは、理科だけを単独で解くのではなく、1日目の3科目を通しで解く回を必ず作ってください。単独で解けば取れる問題が、3科目目だと取れない——これは実際によく起こります。

8. 「2日間とも同じ」が持つ、2つの顔

ここで第1章の話に戻ります。1日目と2日目が同じ形であることには、良い面と厳しい面の両方があります。

側面内容
良い面1日目の手応えが悪くても、翌日に同じ形でやり直せる
良い面対策の方向が絞りやすい。形式ごとの練習が2日分に効く
厳しい面苦手な形式は2日とも落ちる。取り返す別形式がない
厳しい面1日目の失敗を引きずると、翌日の同じ形式でも同じ崩れ方をする

だから、心理面が得点に直結する

形式が同じということは、2日目に「昨日できなかった問題」と似た顔つきの問題が出るということ。前日の記憶が生々しいまま同じ形に向かうことになります。

ここで「また同じところで詰まるのでは」と身構えると、手が止まります。逆に、1日目の手応えが良すぎた場合も、2日目に慎重になりすぎて時間を失うことがあります。どちらも実際に起こる崩れ方です。

受験期の心理面の整え方は受験メンタルが崩れる理由と、崩れない学習設計の作り方で扱っています。甲陽の場合は、これが精神論ではなく得点構造に直結する実務である点を強調しておきます。

9. 1日目が終わった夜をどう過ごすか

甲陽対策で、意外と語られないのがこの部分です。1日目と2日目のあいだには一晩あります。この時間の使い方は、事前に決めておくべきです。

自己採点はしない

最初に決めておきたいのは、1日目の答え合わせをしないということ。翌日に同じ形式の試験が控えている状況で、前日の失点を確認して良いことは多くありません。

とくに算数は、解けなかった問題の解法を見た瞬間に「なぜ気づかなかったのか」という思考が始まります。この状態で眠ると、翌朝の集中に影響します

やるとすれば、確認レベルの作業だけ

それでも何かしたいという場合は、翌日に出る可能性のある基本事項を、軽く目で追う程度にとどめてください。新しい問題は解かない。難問には触れない。

1日目が終わった時点で、できることはほぼ終わっています。翌朝に同じ精度で手を動かせる状態を作ることが、その夜の唯一の仕事です。

朝の動線を、前日までに決めておく

甲陽の考査は、両日とも朝の集合です。直近の実施では午前8時15分までの集合完了とされていました。2日連続で早朝に会場へ向かうことになります。

移動の経路、乗る電車の時刻、持ち物の置き場所。これらを前日までに決めて紙に書いておくと、当日の朝に判断する項目が減ります。朝の余計な判断は、試験開始時の集中を削ります。2日目の朝は疲れが残っていますので、なおさら効いてきます。

親の言葉も、事前に決めておく

もう一点。1日目の夜に、保護者が何と声をかけるかも決めておいてください。「どうだった?」という問いは、手応えが悪かった子には答えにくいものです。

おすすめは、結果ではなく行動を聞く形です。「時間は最後まで使えた?」「見直しはできた?」——この聞き方なら、答えることで気持ちが整理されます。この日のために、事前に言葉を決めておく価値があります。

10. 夏から本番までの逆算

6年生の夏から本番までの流れを整理します。関西の日程は1月中旬ですので、首都圏の感覚より2週間ほど早いと考えてください。

時期この時期の課題甲陽対策として
6年夏単元の穴を埋める図形・速さ・数列に重点。理科の計算分野も
9〜10月実戦形式への移行55分で解く練習を開始。途中式の書き方を固める
11〜12月過去問の本格運用1日目3科目の通し演習を組み込む
12月後半〜1月仕上げと調整時間配分の確認。新しい教材は増やさない

※塾のカリキュラムやお子さまの状況により前後します。目安としてご覧ください。

夏にやるべきは「形式」より「単元」

夏の段階で過去問形式の演習に急ぐご家庭がありますが、この時期に優先すべきは単元の穴埋めです。図形が弱いまま形式練習をしても、形式に慣れるだけで得点は動きません。

形式への対応は秋以降でも間に合います。逆に、単元の穴は秋以降に埋めようとすると時間が足りません。夏の使い方については中学受験6年生の夏期講習、"塾任せ"では伸びないもあわせてご覧ください。

11月以降は「2日分」を1セットで組む

秋が深まったら、演習の単位を1科目から2日分へ移します。1日目の3考査を午前中に通しで解き、翌日に2日目の2考査を解く——本番と同じ形で1セットにする回を、月に1〜2回でも作っておきたいところです。

この形で解くと、単科の演習では見えないものが見えます。3科目目の理科で集中が切れていないか。2日目の算数で前日の疲れが出ていないか。甲陽で問われる「2日続けて同じ精度を出す力」は、この形でしか測れません

9月以降は「55分」を体に入れる

秋からは、時間を計る演習に切り替えます。甲陽の全考査は55分で統一されていますので、この長さの感覚を体に入れておくこと自体が対策になります

55分という長さは、集中を保つには絶妙に長く、内容を処理し切るには短い時間です。何分の時点でどこまで進んでいれば間に合うのか——この目盛りを自分の中に持てるかどうかで、本番の安定感が変わります。

11. 過去問の使い方——甲陽の場合

過去問は、甲陽対策の中心です。ただし、解いて丸をつけるだけでは効果が半減します。

「2日分をセットで」が基本

甲陽の過去問は、1日目と2日目を分けずに扱うのが原則です。同じ年度の2日分を通して解くと、自分の得点がどう分散するかが見えます。

ここで確認したいのは合計点だけではありません。1日目と2日目で、同じ科目の得点差がどれくらいあるかです。差が大きい場合、実力ではなく状態の問題である可能性があります。

実物大で解く

もう一点、形式面での注意です。甲陽の算数は問題用紙に直接書き込む形式で、国語は解答欄の大きさから分量を判断します。縮小コピーで練習していると、この感覚が身につきません

可能な範囲で、実物に近い大きさで演習してください。とくに国語の記述と算数の途中式は、書けるスペースの量が答案の作り方そのものを決めます

古い年度から解くか、新しい年度から解くか

順序についてもよく質問をいただきます。おすすめは古い年度から順に進め、直近の2〜3年分を最後に残す形です。直近の年度が最も現在の傾向に近いため、仕上げの段階で使うほうが効果的だからです。

ただし、甲陽の算数は年度によって難易度の変動があります。1年分の点数で一喜一憂しないことを、最初にご家庭で共有しておいてください。難しい年に当たって自信を失うのは、時期によっては大きな損失になります。

解き直しは「時間の使い方」まで含めて

解き直しの際は、正誤の確認だけでなくどこで時間を失ったかを必ず振り返ってください。甲陽の算数は難易度順に並んでいるとは限らないため、着手の順序が得点を左右します。

「この問題に何分かけたか」を記録しておくと、次に同じ形の問題が出たときの判断が速くなります。何年分をいつから解くべきかの考え方は最難関中学の過去問はいつから?何年分?にまとめています。

12. 塾のカリキュラムとの噛み合わせ

ほとんどの受験生は、集団塾に通いながら甲陽を目指します。この前提で、どう組み合わせるかを整理します。

塾の教材は、甲陽の形式に最適化されてはいない

集団塾のカリキュラムは、複数の学校に対応できるよう作られています。甲陽固有の形式——途中式を書かせる、字数制限のない記述——に特化した練習は、量として不足しがちです。

これは塾の欠点ではありません。設計上そうなっているだけです。足りない部分を家庭で補う前提で考えるほうが、現実に即しています。

志望校別の講座をどう位置づけるか

秋から志望校別の講座が始まる塾もあります。形式に慣れる場としては有効ですが、そこで扱われる問題が解けるかどうかと、本番で点が取れるかどうかは別です。

講座で扱った問題を解き直す時間まで含めて、週のスケジュールに収まっているか。ここを確認してください。受けっぱなしの講座は、時間だけを消費します。復習の時間が取れないなら、講座の数を絞る判断もあり得ます。

補うべきは3点に集約される

この3つは、いずれも集団授業では個別に見てもらいにくい領域です。答案の書き方は一人ひとり違いますし、通し演習は時間の確保そのものが家庭の仕事になります。

塾と個別指導の役割分担の考え方は最難関校受験で「塾+家庭教師」が有効な理由で詳しく扱っています。

13. 個別の指導を入れるなら、どこに入れるか

費用の面から言えば、全科目を個別で見るのは現実的ではありません。入れるとすれば、どこに入れるのが効くかを整理します。

領域個別で見る価値理由時期の目安
算数の答案の書き方高い自分の癖は自分で見えない9月〜
国語の記述高い添削がないと精度が上がらない9月〜
図形の単元の穴高い2日分に影響するため優先度が高い夏〜
理科の計算分野状況次第伸びしろが大きければ費用対効果が高い夏〜秋
基本事項の反復低い塾教材と自習で回せる

優先順位は明快です。「自分では気づけないもの」から入れる——これが原則になります。答案の癖、記述の減点箇所、時間配分の判断。いずれも第三者の目がないと修正が進みません。

秋から始める場合の現実的な回数

9月や10月から個別の指導を入れる場合、週1回90分から2回程度が現実的な範囲です。塾の授業と宿題がすでに週の大半を占めているためです。

この限られた時間で成果を出すには、やることを絞るしかありません。答案の書き方に絞る、図形に絞る、記述の添削に絞る。全体を薄く見る使い方では、秋からの短期間で数字は動きにくくなります。開始時期ごとの考え方は中学受験直前に家庭教師は間に合う?90日・30日・2週間の戦略で扱っています。

依頼するときの伝え方

個別の指導を依頼する場合は、「甲陽志望です」だけでなく、どこを見てほしいかまで伝えると初回から本題に入れます。「算数の途中式の書き方と、国語の記述を優先してください」という形です。

科目を絞る考え方は費用対効果で決める「プロに任せる科目」、費用の全体像は塾と家庭教師の併用は月いくら?で扱っています。

甲陽学院中学校の指導実績がある教師

3名が近畿に登録しています

うち2名はオンライン指導に対応しています。指導料は1時間5,000円〜6,000円。
在籍状況は時期により変わります。担当できる教師がいるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。

14. 入試問題が語る、甲陽学院が求めている生徒像

最後に、入試の構造から学校が何を求めているのかを整理しておきます。校風の話ではなく、問題そのものから読み取れることです。

「2日間、同じ精度を出せるか」を測っている

国語と算数を両日に置き、しかも構成をほとんど変えない。この設計は珍しいものです。1日目の失敗を、2日目の別形式で取り返す構図になっていません。得意な形なら2回とも得点でき、苦手な形なら2回とも落とします。

ここから読み取れるのは、甲陽が「一発の爆発力」ではなく「崩れない安定性」を見ているということ。加えて算数の途中式や国語の字数制限のない記述からは、答えだけでなく考えた過程を示せることを求めているとわかります。

噛み合いやすいタイプ、そうでないタイプ

指導の現場で見ていると、甲陽と噛み合うのは調子の波が小さく、取りこぼしの少ない子です。模試で偏差値が上下に大きく振れるタイプは、2日間のどちらかで崩れる可能性があります。

答えは合うが途中を書かない子は、甲陽では損をします。部分点を取りにいける形式なのに、それを放棄していることになるためです。この癖は本人には見えにくく、第三者の目が要る部分です。

併願を考えるときの視点

甲陽は灘と同じ日程のため併願できません。どちらを受けるかは、両校の過去問を同じ年度でそろえて解き、得点率を比べて判断してください。模試の判定は、学校ごとの出題の癖まで映しません。

甲陽で鍛える「同じ精度を続けて出す力」と「過程を書いて示す力」は、記述を課す他校でも効きます。3日目以降に東大寺学園を受ける場合も、記述の訓練はそのまま活きます(東大寺学園中の入試対策)。

まとめ:甲陽対策は「崩れない形」を作る作業

甲陽学院中の入試は、2日間・5考査・500点。すべての考査が55分・100点で揃い、国語と算数は両日に同じような形で置かれています。特別な一手より、同じ精度を2日続けて出せることが問われる入試です。

したがって対策の柱は3つになります。図形を中心とした単元の穴を夏のうちに埋めること。途中式と記述という書き方で取れる点を落とさないこと。そして、55分という長さと、2日間という負荷に体を慣らしておくことです。

灘と日程が重なるという構造上、受験校の決定そのものが対策の一部になります。模試の判定だけでなく、過去問での実際の得点と、問題形式との相性で判断してください。

お子さまの答案を見ながら、どこから手をつけるかを整理したい場合は教育相談フォームからご相談ください。当ネットワークには甲陽学院をはじめとする最難関校の指導実績を持つプロ家庭教師が登録しています。

よくある質問

Q 甲陽学院中の入試は何科目で、配点はどうなっていますか?
A 2日間で5つの考査が行われます。1日目が国語・算数・理科、2日目が国語・算数で、いずれも55分・100点、合計500点満点です。考査は筆答のみで面接はありません。社会は課されません。なお、2日間のうち1考査でも受験しなかった場合は失格となります。日程や配点は年度により変わる可能性がありますので、出願前に学校公表の募集要項をご確認ください。
Q 甲陽と灘は併願できますか?
A できません。甲陽の入試日程は関西の統一入試日の1日目・2日目にあたり、灘の入試も同じ枠に置かれているためです。どちらを受けるかは6年生の秋から冬にかけて判断することになります。模試の判定だけでなく、過去問での実際の得点と問題形式との相性を材料にしてください。灘は1日目と2日目で問われる力が異なり、甲陽は両日ほぼ同じ形式です。調子の波が小さく処理が安定しているお子さまは、甲陽の形式と噛み合いやすい傾向。
Q 算数で最も優先すべき単元は何ですか?
A 図形です。甲陽の算数では図形分野が2日間を通して大きな割合を占め、速さと数列も頻出です。出題される分野が比較的はっきりしているため、対策の方向は定めやすいといえます。ただし裏を返せば、図形が弱いまま本番を迎えると2日分に影響が及びます。6年の夏の時点で図形に不安がある場合は、そこが最優先の投資先になります。
Q 途中式は書いたほうがよいのですか?
A 書いてください。甲陽の算数は考え方や途中式を書かせる形式が多く、完答できなかった問題でも筋道が示せていれば部分点の可能性があります。答えだけを書く習慣がついていると、この部分点を丸ごと失うことになります。とくに注意したいのは、行き詰まった箇所を消しゴムで消してしまうことです。そこに点がついた可能性がありますので、途中で行き詰まっても消さずに残しておくよう伝えてください。
Q 国語の記述はどう練習すればよいですか?
A 甲陽の国語は字数制限のない記述が中心で、解答欄の大きさから自分で分量を判断します。実物に近い大きさの解答欄で書く練習が欠かせません。縮小コピーで練習していると、本番で分量の感覚が狂います。書き方としては、設問に答える一文を先に決めてから説明を足していく順序が安定します。また本文の言葉をそのまま並べるのではなく、設問の問い方に合わせて言い換える意識が必要です。
Q 1日目が終わった夜は、何をすればよいですか?
A 自己採点はしないほうが確かです。翌日に同じ形式の試験が控えている状況で、前日の失点を確認して良いことは多くありません。とくに算数は、解けなかった問題の解法を見た瞬間に後悔の思考が始まり、翌朝の集中に影響します。何かするとしても、翌日に出る可能性のある基本事項を軽く目で追う程度にとどめてください。保護者の方は「どうだった?」ではなく「時間は最後まで使えた?」といった行動を尋ねる形の声かけを、事前に決めておくと安心です。
Q 塾に通っていれば、甲陽の対策は足りますか?
A 集団塾のカリキュラムは複数の学校に対応できるよう作られているため、甲陽固有の形式に特化した練習は量として不足しがちです。補うべきは主に3点で、算数の途中式による答案の作り方、国語の記述の分量感、そして1日目3科目・2日目2科目を続けて解く通しの演習です。いずれも集団授業では個別に見てもらいにくい領域ですので、家庭で意識的に時間を確保するか、個別の指導で補う形が現実的です。
Proチューターズネットワーク 編集部
中学受験を専門とするプロ家庭教師マッチングサービス「Proチューターズネットワーク」が運営する受験情報メディア。最難関校から中堅校まで、志望校のレベルを問わずご相談を承っています。兵庫・神戸を拠点に、関西の中学受験の情報を、保護者の方に向けて発信しています。

それでも、一度お話を聞かせてください

ここまで読んで、「うちの子は甲陽の出題と噛み合うのか」と思われたかもしれません。

ご家庭だけで抱えていると、「これは相談していいことなのか」を決めるところから始まります。そこで数週間が過ぎるのが、いちばん惜しい。

学年と、いま気になっていることを一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。家庭教師以外の選択肢をお伝えすることもあります。

力になれることがあるなら、なりたいと思っています。

合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。

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答案を拝見したうえで、どこから手をつけるかをお伝えします。
まずは現状をお聞かせください。

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