1. 結論:最初の判断は「3教科か4教科か」
東大寺学園中の入試は、4教科(国語・算数・理科・社会)と3教科(国語・算数・理科)を選んで出願できますが、どちらを選んでも、合否判定は同じ400点満点の土俵で行われる。
ここで多くのご家庭が、「4教科で受けたほうが有利なのか、3教科に絞って国算理を鍛えたほうがいいのか」と悩みます。塾でも、判断が分かれることがあるところです。
なぜここが最初の分岐になるのか
受験型の判断が最初に来る理由は単純で、決めた瞬間に、6年生の後半で使う時間の配分が確定するからです。社会を仕上げるなら週に数時間が固定で出ていきますし、3教科に絞るなら、その時間はすべて国算理に回せる。
この差は、半年積み上げると大きな量になります。にもかかわらず、多くのご家庭で判断が12月まで先送りされ、先送りしている期間は、どちらにも振り切れないまま時間が過ぎていきます。
実は、計算すれば答えが出る
結論を先に言うと、この判断は感覚ではなく計算で決まります。東大寺の換算式には明確な非対称性があって、それを式に直すと、社会を受ける価値があるかどうかの基準は、一つの条件にまとまる。
その条件は第4章で示しますが、先にお伝えしておくと、多くのご家庭が思っているより、4教科受験のリスクは小さいという結論になります。ただ、リスクが小さいことと、4教科を選ぶべきことは、同じではありません。
この記事の中心は勉強法ではなく、出願前に済ませておくべき計算のほうで、ここを曖昧にしたまま夏を過ごすと、秋以降の時間配分が定まらなくなってしまいます。
2. 入試の骨格を数字で押さえる
まず事実関係を確かめておくと、直近の募集要項では、次のように定められています。
| 科目 | 試験時間 | 配点 | 受験型 |
|---|---|---|---|
| 国語 | 60分 | 100点 | 3教科・4教科とも |
| 算数 | 60分 | 100点 | 3教科・4教科とも |
| 理科 | 50分 | 100点 | 3教科・4教科とも |
| 社会 | 50分 | 100点 | 4教科受験のみ |
※募集人員200名(男子)。総合点は400点満点に換算されます。出願はインターネットのみで、出願後に受験型を変更することはできません。日程・配点は年度により変わる可能性がありますので、学校公表の募集要項をご確認ください。
国算に時間が多く配分されている
この表で目を引くのは、国語と算数が60分、理科と社会が50分という時間配分でしょう。配点はすべて100点で同じなのに、かけられる時間が違う。
時間が長いということは、それだけ問題の分量や求められる処理が重いということで、国算は腰を据えて取り組む科目、理社は速く正確に処理する科目——この性格の違いは、日々の演習でも意識しておく価値があります。
面接はなく、筆記のみ
試験は筆記のみで、面接は課されない。出願はインターネットからの受付のみで、窓口や郵送での出願はできず、出願期間は12月上旬から中旬に設定されているので、この時点で受験型を確定させる必要が出てきます。
細かい話ですが、試験会場には時計が用意されていないので、腕時計は忘れずに持っていきたいところです。時間配分が得点を左右する入試で、時計がない状態は致命的です。当日の持ち物は、前日までに紙に書き出して確かめておくほうが確かでしょう。
3教科受験なら、社会の時間に帰宅できる
実務的な話をすると、3教科受験を選んだ場合は社会の試験を受けないので、学校から出るバスの時刻も、3教科受験者用と4教科受験者用で分けて設定されています。
つまり、当日の拘束時間が1時間以上変わります。関西の統一入試日程では、この日の前後にも別の学校の受験が入っている可能性があるので、体力の配分という点でも、無視できない差になる。
3. 換算の仕組み——4分の3と「高い方」
ここがこの記事の核心で、東大寺の総合点は、次のように決まります。
総合点の決まり方
- 3教科受験——国・算・理の合計に3分の4を掛けて400点満点に換算する
- 4教科受験——①4教科の合計点と、②国・算・理の合計に3分の4を掛けた点、このいずれか高い方を採用する
図1|4教科で受験しても、社会が国算理の平均を下回れば②が採用され、社会の点数は総合点に反映されない。
注目していただきたいのは、4教科受験の側。4教科で受けても、3教科換算のほうが高ければそちらが採用されますから、社会の点数が悪かった場合、その点数は総合点に反映されません。
「社会が足を引っ張る」ことが起きない設計
この仕組みが意味するところは明快で、4教科で受験しても、社会が悪ければ無視されるだけで、マイナスにはならないということ。
多くのご家庭が「4教科で受けて社会を落としたら不利になる」と考えておられますが、少なくとも得点の計算上は、そうはなりません。社会は、上振れの可能性だけを持つ科目として扱われているわけです。
「換算」という言葉に惑わされない
3分の4を掛けるという処理を、有利・不利の調整だと受け取る方もいますが、そうではなく、3教科で受けた人と4教科で受けた人を、同じ400点満点の土俵に乗せるための計算です。
3教科の300点満点を400点満点に引き伸ばしているだけなので、3教科受験が特別に優遇されているわけでも、不利になっているわけでもない。ここを誤解すると、判断の出発点がずれてしまいます。
3教科受験は、その上振れを放棄するということ
逆に言えば、3教科受験を選ぶことは、社会で上乗せする可能性を最初から手放す選択です。そのかわり、社会の学習に充てる時間を国算理に回せる。
したがって判断は、「社会でどれだけ上乗せできるか」と「社会に使う時間を国算理に回したときの伸び」の比較になります。感覚で決める話ではなく、数字で比べられる問題なのです。
4. どちらで受けるか、計算で判定する
では、社会が何点取れれば4教科合計が採用されるのか。式を整理すると、答えは一つの条件にまとまります。
社会の得点が、国語・算数・理科の平均点を上回ったときだけ、4教科合計が採用されます。下回っている限り、社会の点数は総合点に一切影響しません。
図2|社会は「平均を超えた分だけ」が総合点に効く。下回った場合は無視されるため、得点計算上のマイナスは生じない。
なぜそうなるのか
4教科合計が3教科換算を上回る条件を式にすると、社会の点数が「国算理の合計の3分の1」を超えるかどうかという形になり、合計の3分の1とは、つまり3科目の平均点のことです。
言い換えると、社会が国算理の平均より得意なら4教科が有利、そうでなければ社会は無関係ということで、この一行を持っておけば、判断に迷うことはないでしょう。
1点の重みが科目で変わる
もう一つ、換算から導かれる大事な性質があります。3教科換算が採用される場合、国算理の1点は3分の4倍されて総合点に効きますから、実質的に1.33点分の価値を持つことになる。
一方、社会の1点は、4教科合計が採用されたときだけ1点分として効くので、同じ1点でも、科目によって重みがまったく違うということです。この事実だけでも、限られた時間をどこに使うべきかの答えは見えてくる。
具体的な数字で確認する
| 国算理の得点 | 3科の平均 | 社会 | 採用される総合点 |
|---|---|---|---|
| 各70点(計210) | 70点 | 60点 | 3教科換算 280点(社会は無視) |
| 各70点(計210) | 70点 | 80点 | 4教科合計 290点 |
| 国60・算90・理60(計210) | 70点 | 85点 | 4教科合計 295点 |
| 国80・算85・理75(計240) | 80点 | 70点 | 3教科換算 320点(社会は無視) |
※換算の仕組みを説明するための試算です。実際の配点・換算方法は募集要項をご確認ください。
注目しておきたいのは4行目で、国算理が強い子ほど、平均点が上がるので社会が採用される条件は厳しくなります。上位層ほど社会の出番は減る、という構造になっている。
それでも「4教科で出願する」が基本になる理由
得点の計算だけで見れば、4教科受験は損をしません。社会が良ければ加算され、悪ければ無視されるだけだからです。では、なぜ全員が4教科にしないのか——理由は3つあります。
- 社会の学習時間——4教科で受けるなら社会も仕上げる必要があり、その時間は国算理から引かれる
- 当日の負荷——試験が1つ増え、拘束時間が1時間以上長くなる
- 併願校の科目構成——他の受験校が3教科型なら、社会の学習が東大寺のためだけになる
つまり判断材料は、得点そのものではなく時間の使い方のほう。社会がはっきり得意で、併願校でも社会を使うなら4教科、社会が平均的で、併願校も3教科型なら、その時間を国算理に集中させたほうが総合点は伸びるでしょう。
5. 出願後は変更できない——いつまでに決めるか
この判断には期限があって、出願後に受験型を変更することはできません。出願期間は、12月上旬から中旬にかけて設定されています。
実質的な判断期限は11月
出願直前に決めるのでは遅すぎるのは、社会を仕上げるかどうかで、秋の学習計画そのものが変わるからで、遅くとも11月には方針を固めておきたいところです。
判断の材料になるのは、9月から11月にかけての模試の結果と、東大寺の過去問を解いたときの科目別の得点です。とくに後者が大事で、模試の偏差値ではなく、東大寺の問題での実際の得点で比べてください。
併願校の科目構成を先に確定させる
受験型の判断と切り離せないのが、併願校の科目構成です。他の受験校が4教科型なら、社会はどのみち仕上げる必要が出てきますから、その場合、東大寺も4教科で出願しない理由はほとんどない。
逆に、併願校がすべて3教科型なら、社会の学習は東大寺のためだけになるので、投資に見合う効果があるかを厳しく見る必要が出てきます。受験校を先に決めることが、科目配分を決めることでもある——この順序を、意識しておきたいところです。
夏のうちにやっておくこと
夏の段階では、まだ決める必要はない。ただ、決めるための材料を用意しておくことはできます。
具体的には、社会のいまの立ち位置を把握しておくことです。模試で社会が国算理の平均を上回っているか、上回っているなら、その差は安定しているか。ここが分かっていれば、秋の判断は速く済むはずです。
6. 統一入試日の3日目という位置
日程の話に移ると、東大寺の入試は関西の統一入試日から数えて3日目に実施されていて、この位置には、対策の上での意味があります。
すでに2日間戦った後に受ける
関西の中学入試は統一入試日に一斉に解禁され、そこから数日のあいだに各校の試験が進んでいきます。灘や甲陽学院は初日から2日間の日程なので、東大寺を受ける時点で、多くの受験生はすでに他校の受験を終えています。
これが意味するのは、体力と精神状態が、初日と同じではないということ。前の2日間で手応えが悪ければ、その状態を引きずったまま東大寺の試験に臨むことになります。
併願の組み方が、そのまま東大寺の得点に影響する
ですから、東大寺対策は日程の組み方から始まるとも言えるでしょう。初日・2日目に何を受けるか、午後受験を入れるか——ここで詰め込みすぎると、3日目の東大寺で本来の力が出せません。
灘や甲陽学院との併願を考える場合は、それぞれの入試構造を理解したうえで組むことになります。灘については灘中の算数が難しすぎると感じたら|1日目と2日目は別の試験です、甲陽学院については甲陽学院中の入試対策|2日間・500点の構造と、灘との違いから決める戦略で扱っています。
会場までの動線を確認しておく
学校は奈良市にあり、最寄り駅からは距離がある。入試日には駅と学校を結ぶ直通のバスが運行されますが、自家用車での送迎は認められていません。
3日目ということは、前の2日間も別の会場へ向かっているということで、移動の負担が積み重なった状態で臨むことになるので、当日の経路と所要時間は、前日までに確定させておいてください。朝に判断することを減らしておくのが、そのまま集中を守ることにつながります。
3日目までのコンディションを設計する
実務として決めておきたいのは、2日目の夜に何をするかでしょう。前日までの結果を確かめるのか、しないのか。東大寺の過去問を見直すのか、休むのか。
おすすめは、当日の朝に見るものを前もって決めておくことです。新しい問題は解かない。基本事項を軽く目で追う程度にとどめる。3日目まで戦い抜くには、頭を消耗させない工夫が要ります。
まだ申し込む段階ではない、という方へ
お子さまの学年と、いま気になっていることを一言だけお送りいただければ、ご返信します。お申し込みフォームのご入力は必要ありません。ご相談だけで終わっても問題ありません。
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7. 国語——分量に対して時間が短い
科目別に見ていくと、まず東大寺の国語は60分ですが、その時間に対して問題の分量が多いという特徴があって、読むのが遅い子は、最後まで到達しないかもしれません。
語彙を問う出題が目立つ
漢字については、書き取りそのものの難度より、語彙力を問う性格が強く出ます。文脈の中で語の意味を捉えられているか、熟語の使い分けができるか、という点で、単純な反復では届きにくい領域でしょう。
対策としては、問題集を増やすより、読んだ文章の中で分からなかった語を拾い、意味と用例をセットで残していくほうが効きます。手間はかかりますが、これがいちばん再現性のある方法です。
一方で、正答率が低い設問も含まれているので、全問を取りにいく前提で時間を配分すると崩れます。難しいと感じた設問を早めに切り上げる判断も、練習の対象になる。
記述の分量に慣れておく
設問には記述を求めるものも含まれていて、字数の指定があるものとないものが混在するため、解答欄の大きさから分量を判断する練習が要ります。
ここは、縮小したコピーで演習していると感覚が狂う部分なので、できる範囲で実物に近い大きさで解いてみてください。書けるスペースの量が、答案の作り方そのものを決めます。
時間配分を先に決めておく
60分をどう割るかは、前もって決めておきたいところです。大問ごとに何分と決め、超えたら次へ移る——この運用ができているかどうかで、同じ実力でも得点は変わってくる。
過去問演習では、点数だけでなくどの大問で何分使ったかを記録しておいてください。時間切れで落とした設問は、実力不足ではなく配分の問題で、両者を混同すると、対策の方向を間違えてしまいます。
8. 算数——60分をどう使うか
3教科と4教科の判断について、ここまでで迷われるようであれば、教育相談フォームから科目別の得点をお知らせください。計算してお返しします。
算数も60分で100点で、理科・社会より10分長いのは、それだけ処理量が求められるということでしょう。
東大寺の算数でまず押さえておきたいのは、合否への影響が4科目のなかで最も大きいという点です。配点は同じ100点でも、受験者のあいだで最も点差が開くのが算数で、国語や理社は上位層の得点が固まりやすいのに対し、算数は差がそのまま残ります。
解く順序を決めておく
最難関校の算数に共通することですが、問題は易しい順に並んでいるとは限りません。最初から順に解く習慣のままだと、序盤で重い問題に当たって時間を失ってしまう。
まず全体に目を通し、着手できる問題から始める——この運用を、秋の演習の段階から徹底しておいてください。本番で初めて試すことは、本番ではできません。
途中の過程を残す
答えが合わないと分かった瞬間に、書いた式を消してしまう子がいますが、これはもったいない話で、途中まで筋道が示せていれば、部分点の可能性があります。
日々の演習から、「消さない」を徹底しておきたい。何を求めようとしているのかを式の前に一言書く習慣をつけると、自分の思考も整理され、答案が読みやすくなるだけでなく、見直しの速度も上がっていきます。
見直しの時間を計画に含める
60分という時間は、全問を解き切ってなお見直しの余裕があるほど、長くはありません。だからこそ、最初から見直しの時間を確保した配分にしておいてください。
目安としては、終了5分前には手を止めて確認に入る。そのためには、それまでに解き終える問題数を逆算しておくことになるので、取る問題と捨てる問題を決めるのは、本番ではなく演習の段階です。
灘・六甲との違い
灘や六甲学院を併願する場合、算数の準備には重なる部分と重ならない部分があります。灘の1日目は13問を50分で解く処理型、六甲学院は前半が答えのみで後半が記述という構成です。これに対して東大寺は60分を通して同じ形式で、極端な速さも長大な記述も求められない。
つまり、東大寺の算数は、標準的な難度の問題を取り切る力が問われる設計です。灘対策で速さを鍛えてきた受験生には有利に働きますが、難問だけを追いかけてきた場合は、取りこぼしが出てくるでしょう。
各校の算数の違いは、灘中の算数が難しすぎると感じたらと六甲学院中の入試対策で扱っています。
9. 理科——どちらを選んでも欠かせない
理科は50分・100点で、3教科受験でも4教科受験でも課されます。しかも3教科換算の対象に含まれるので、理科の1点は3分の4倍されて、総合点に効いてくる。
3教科受験なら、理科の重みは実質的に上がる
ここは見落とされやすい点で、3教科受験を選ぶと、国算理の3科目だけで400点満点に換算されます。つまり、1科目あたりの重みが4教科受験より大きくなります。
「社会を切って国算に集中する」と考えているご家庭は少なくありませんが、正確には「国算理に集中する」です。理科を軽く見た3教科受験は、いちばん効率の悪い選択になってしまう。
50分という時間で処理し切る
理科は50分で、国算より10分短いぶん、1問あたりにかけられる時間は限られます。知識で即答できる設問を素早く処理して、考察や計算の設問に時間を残す配分が要るでしょう。
これは知識量とは別の能力なので、過去問演習では、毎回時間を計って、どの設問で詰まったかを記録しておいてください。同じ場所で毎回止まっているなら、それは知識ではなく、処理の手順の問題と考えられる。
計算分野の精度が効く
理科の得点が伸びないとき、原因が知識ではなく計算にあることは珍しくありません。物理・化学の計算問題には、算数で鍛えた処理の速さと正確さが、そのまま出てくる。
理科の点が動かないなら、まず算数の計算を疑うのが順序で、理科の問題集を増やすより、計算の型を整えるほうが速いこともあります。
10. 社会——受けるなら「武器」でなければ意味がない
第4章の結論を、もう一度確かめておきます。社会が国算理の平均を上回らなければ、その点数は総合点に反映されません。
「平均並みの社会」は、時間の投資として成立しない
厳しい言い方になりますが、東大寺の入試において、平均並みの社会は存在しないのと同じで、上回って初めて意味を持つ。
したがって社会に時間を投じるなら、中途半端では成果にならない。国算理の平均をはっきり超える水準まで仕上げるか、最初から3教科に絞ってその時間を国算理に回すか、どちらかに振り切るほうが合理的です。
それでも4教科で出願する意味があるケース
ただし、次の場合は、4教科での出願に意味がある。
- 併願校が4教科型で、どのみち社会を仕上げる必要がある
- 社会が明確に得意で、模試でも国算理の平均を安定して上回っている
- 国算理のいずれかに不安定さがあり、社会で補える可能性を残したい
3つ目について補足しておくと、当日どれか1科目が崩れた場合、社会が支えになる可能性があって、保険としての4教科受験という考え方です。ただしこれは社会が仕上がっていることが前提で、そうでなければ保険にはなりません。
社会に投じるなら、いつからか
社会を武器にすると決めた場合、着手は早いほうが有利です。知識の定着に時間がかかるため、秋から慌てて詰め込む形では平均超えまで届きにくいのが実情でしょう。
逆に言えば、夏の時点で社会が国算理の平均を大きく下回っているなら、そこから武器にするのは現実的ではなく、その場合は3教科に絞る判断を、早めに下すほうが得です。迷ったまま両方に薄く時間を使うのが、いちばん避けたい形になる。
出題の性格
社会を受ける場合は、図表や資料を読み取らせる設問、時代や出来事の順序を問う設問が出やすいことを押さえておいてください。用語の暗記だけでは対応しにくい構成で、時事的な話題が扱われることもあります。
11. 合格最低点6割から逆算する
目標設定の話をしておくと、東大寺の合格最低点は、400点満点のおおむね6割程度で推移しているとされています。
240点をどう作るか
仮に240点を目標に置くと、3教科換算の場合は国算理の合計が180点、つまり3科目平均で60点が目安になる。この数字を見て、印象が変わる方も多いはず。
満点を取る必要はなく、むしろ4割は落としてよいという設計です。全問を取りにいく前提の学習は、時間配分の面でも精神面でも、不利に働いてしまいます。
| 目標 | 3教科合計の目安 | 3科平均 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 合格ライン | 180点 | 60点 | 4割は落としてよい |
| 安全圏 | 200点前後 | 67点前後 | 1科目の不調を吸収できる |
| 算数を武器にする場合 | 算80・国50・理70 | — | 合計200点。国語の不振を他で補う形 |
※合格最低点は年度により変動します。目標設定の考え方を示すための試算です。
「合格最低点+20点」を実務上の目標にする
合格最低点ちょうどを目標にすると、当日1科目が崩れただけで届かなくなるので、実務上は、合格最低点に20点ほど上乗せした数字を目標に置いておきたい。
3教科換算で考えると、20点の上乗せは国算理の実得点で15点分、1科目あたりでは5点にあたります。この程度なら、取りこぼしを減らすだけで届く範囲で、難問を解けるようにする話ではありません。
科目ごとに目標を割り振る
大事なのは、「全科目で7割」といった一律の目標を置かないことです。得意科目で稼ぎ、苦手科目は最低ラインを守り切る——この形のほうが現実的で、日々の学習でも優先順位をつけやすくなる。
割り振りは、過去問を解いた実際の得点をもとに決めてください。模試の偏差値からは、この配分は出てこないからです。
12. 夏から本番までの逆算と、過去問の使い方
時期ごとの進め方も整理しておきます。関西の日程は1月中旬ですから、首都圏の感覚より2週間ほど早いと考えておくほうが確かでしょう。
| 時期 | この時期の課題 | 東大寺対策として |
|---|---|---|
| 6年夏 | 単元の穴を埋める | 社会の現在地を把握(受験型判断の材料) |
| 9〜10月 | 実戦形式への移行 | 60分・50分の時間感覚を体に入れる |
| 11月 | 受験型の決定 | 過去問の科目別得点で3教科か4教科かを判断 |
| 12月 | 出願と仕上げ | 併願日程を確定。3日目までの体力配分を設計 |
※塾のカリキュラムやお子さまの状況により前後します。目安としてご覧ください。
夏は形式より単元、秋から時間を計る
夏の段階で過去問形式に急ぐご家庭もありますが、この時期に優先したいのは単元の穴埋めです。土台に穴がある状態で形式に慣れても、得点は動かない。形式への対応は秋以降でも間に合いますが、単元の穴は秋から埋めようとすると時間が足りなくなります。
秋以降の演習では、時間を計ることが前提になり、国算は60分、理社は50分です。この長さの感覚を持てているかどうかが、本番の安定感を決めます。時間を計らずに解いた過去問は、実力の測定にも、時間配分の練習にもならない。
過去問は「科目別の得点」を残す
東大寺の過去問を解くときは、合計点だけでなく、科目別にも記録しておいてください。受験型の判断材料になるのは、この科目別の数字だからです。
社会も含めて解いた回では、社会の得点が国算理の平均を上回っているかを、毎回確かめます。3回解いて3回とも下回っているなら、判断はほぼ決まりと言えるでしょう。
何年分をいつから解くかの考え方は、最難関中学の過去問はいつから?何年分?関西の日程から逆算するにまとめています。
13. 塾との噛み合わせと、個別を入れるなら
ほとんどの受験生は、集団塾に通いながら東大寺を目指しています。その前提で、補いたい部分を整理しておきます。
塾の講座と、受験型の判断
秋から志望校別の講座が設定される塾もあり、形式に慣れる場としては有効ですが、受けた問題を解き直す時間まで週のスケジュールに収まっているかを確認してください。受けっぱなしの講座は、時間だけを消費してしまいます。
一方で、受験型の判断は塾任せにしにくい部分です。集団塾のカリキュラムは複数の学校に対応できるよう作られていて、東大寺固有の換算式を前提とした科目配分まで個別に設計してもらうのは難しいのが実情です。ここは、ご家庭で数字を出して判断する領域になる。
個別を入れるなら、どこに入れるか
| 領域 | 個別で見る価値 | 理由 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 算数の答案の書き方 | 高い | 部分点の取りこぼしは自分で気づけない | 9月〜 |
| 国語の時間配分 | 高い | どこで時間を失うかは第三者が見るほうが速い | 9月〜 |
| 理科の計算分野 | 高い | 3教科受験なら重みが増す | 夏〜 |
| 社会の仕上げ | 状況次第 | 平均超えが見込めるなら投資価値がある | 夏〜秋 |
| 基本事項の反復 | 低い | 塾教材と自習で回せる | — |
優先順位の原則は、「自分では気づけないもの」から入れることです。答案の癖、時間の使い方、思考の詰まり方——いずれも、第三者の目がないと修正が進まない。
科目の絞り方は費用対効果で決める「プロに任せる科目」——科目戦略と時期別学習法で、塾との役割分担は最難関校受験で「塾+家庭教師」が有効な理由|入試構造から見る役割分担で扱っています。
模試の判定より、過去問の得点
模試の判定が思わしくないという理由で受験校を変える判断は、東大寺に関しては慎重にしておきたいところです。模試は複数校の受験者を同じ問題で測る設計で、東大寺の出題の癖までは映しません。
判断材料になるのは、東大寺の過去問を時間を計って解いたときの科目別の得点のほう。判定が届いていなくても過去問では合格最低点を超える子がいますし、その逆もあります。数字を見るなら、より近い数字を見ておきたい。
この記事で伝えたかったこと
東大寺の対策情報は、探せばいくらでも出てきますが、そのほとんどが「傾向と対策」で止まっていて、換算式が受験型の判断にどう効くのかを、数字で示したものはあまり見かけません。
けれども、ご家庭が実際に迷うのはそこです。社会をやるのか、やらないのか——その判断が決まらないまま秋を迎えると、どちらにも中途半端な時間の使い方になってしまう。だからこの記事では、基準を一行に絞りました。社会が国算理の平均を上回るか——これだけです。
ここまで読んで、どれが近いですか
東大寺学園では、換算にまつわるご相談が多くなります。次のどれかに近いでしょうか。
- 3教科と4教科、どちらで出願すべきか決まらない直近の模試の科目別得点があれば、換算式に当てはめて計算してお返しします。
- 社会に時間を割くべきかどうか判断がつかない分岐点までの距離を測れば、必要な時間が見えてきます。
- 過去問の得点が合格最低点に届かない差が何点で、どの分野から生じているかで、間に合うかどうかが変わります。
- 換算の仕組みそのものを知りたいこの記事の該当章に計算方法を書いています。相談は不要です。
- 併願をどう組むか迷っている日程の組み合わせから整理します。志望校の候補を挙げていただければ結構です。
どれとも違っていても構いません。「東大寺を考えている」だけで、お話は始まります。
東大寺学園中学校の指導実績がある教師
4名が近畿に登録しています
うち2名はオンライン指導に対応しています。指導料は1時間5,000円〜6,000円。
在籍状況は時期により変わります。担当できる教師がいるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。
14. 入試問題が語る、東大寺学園が求めている生徒像
最後に、入試の設計から学校が何を求めているのかを読み取っておきます。校風ではなく、制度そのものから見えることです。
「自分で選ぶこと」を最初に求めている
3教科と4教科の選択制で、しかも4教科で受けた場合は高いほうが採用される——この設計は、受験生に自分の得意不得意を把握させ、戦略を選ばせるものでしょう。出願後に変更できないという条件も、その判断に責任を持たせる形になっています。
入試が始まる前から、受験生は一つの意思決定を求められているわけで、与えられた枠の中で最善を選ぶ力——これを最初の関門に置いている学校だと読み取れます。
噛み合いやすいタイプ、そうでないタイプ
指導の現場で見ていると、東大寺と噛み合うのは、得意科目がはっきりしていて、それを自覚している子です。全科目が平均的に取れる子より、突出した科目を持つ子のほうが、この選択制を生かせる。
逆に、自分の得点構造を把握していない子は、受験型の判断そのものでつまずいてしまいます。ここは保護者が数字を出して整理してあげるべき部分で、社会が国算理の平均を上回っているかどうか——判断の基準は一行で済みます。
併願を考えるときの視点
東大寺は統一入試日の3日目なので、灘や甲陽学院を1日目・2日目に受けたあとに臨むことになります。前の2日間の日程の組み方が、そのまま東大寺の得点に影響します。
併願校が4教科型かどうかで、社会を仕上げるかどうかの判断も変わってくる。受験校の組み合わせを先に決めることが、科目配分を決めることでもあるので、日程と科目構成を並べた一覧を、秋のうちに作っておきたいところです。
まとめ:東大寺対策は、出願前の計算から始まる
東大寺学園中の入試は、4教科と3教科を選べる形式で、総合点は400点満点に換算されます。4教科で受けた場合は4教科合計と3教科換算の高いほうが採用されるので、社会は上振れの可能性だけを持つ科目として扱われる。
判断の基準は一つで、社会の得点が国算理の平均を上回るかどうか。上回らないなら、社会の点数は総合点に反映されません。だからこそ、社会に投じる時間が、国算理に回したときの伸びを上回るかを比べる必要が出てきます。
そして受験型は出願後に変更できないので、実質的な判断期限は11月です。それまでに、東大寺の過去問での科目別得点を積み上げておいてください。模試の偏差値からは、この判断に必要な数字は出てきません。
合格最低点はおおむね6割で、4割は落としてよい設計です。全問を取りにいく前提を捨て、得意科目で稼ぎ、苦手科目は最低ラインを守る——この形に切り替えるだけで、日々の優先順位ははっきりしてくるはず。
お子さまの科目別の得点を見ながら受験型を判断したい場合は、教育相談フォームからご相談ください。当ネットワークには、東大寺学園をはじめとする最難関校の指導実績を持つプロ家庭教師が登録しています。
よくある質問
それでも、一度お話を聞かせてください
ここまで読んで、「うちの子は3教科と4教科、どちらで受けるべきか」と思われたかもしれません。
ご家庭だけで抱えていると、「これは相談していいことなのか」を決めるところから始まります。そこで数週間が過ぎるのが、いちばん惜しい。
学年と、いま気になっていることを一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。家庭教師以外の選択肢をお伝えすることもあります。
力になれることがあるなら、なりたいと思っています。
合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。