クラス分けテストの結果が出て、お子さまのクラスが下がった。成績表を見た瞬間、頭が真っ白になり、「この塾でやっていけるのか」「志望校はもう無理なのか」と、夜中に検索を続けていませんか。

先にお伝えしたいのは、クラス落ちは「実力が下がった証明」ではなく、学習のどこかに不具合があるという警告灯だということ。警告灯が点いたときにやるべきは、パニックになることでも、灯りを無視して走り続けることでもありません。ボンネットを開けて、どこの不具合かを特定することです。

この記事では、最難関中学受験の現場でクラス落ちからの立て直しに数多く伴走してきた視点から、落ちた直後72時間の親の動き、答案から原因を特定する方法、そして挽回する家庭が最初にやる3つのことを、順番に整理します。読み終える頃には、「今夜、何をすればいいか」が具体的になっているはずです。

1. 結論:クラス落ちは「実力低下」ではなく警告灯

クラス落ちとは、正確には何が起きた状態なのでしょうか。答えはシンプルで、「直近のクラス分けテストで、在籍基準を下回った」——それだけです。

先週まで持っていた知識が消えたわけではありません。解けていた問題が解けなくなったわけでもありません。変わったのは「テストの点数が基準に届かなかった」という一点であり、その背後には必ず具体的な原因があります。原因は大きく3つの型に分かれます。基礎の穴、回っていない宿題、テストの運用ミス——詳しくは第4章で答案からの見分け方を解説しますが、まず押さえてほしいのは、どの型かによって打ち手がまったく違うということ。

そしてもう一つ、最初の分かれ道があります。それは、「クラスを戻すこと」を目的にするか、「志望校に合格すること」を目的にするかです。

当たり前のようで、渦中にいると混同しがちです。クラスはあくまで手段であり、通過点です。クラスを戻すために睡眠を削り、基礎を飛ばして応用問題を詰め込む——こうした「クラス至上主義」の立て直しは、仮にクラスが戻っても、その先の入試で失速します。この記事で扱う挽回は、すべて「合格から逆算したときに正しい挽回」です。ここを最初に親子で確認しておいてください。

2. まず仕組みを知る——クラス分けテストの正体

敵を知らずに戦うことはできません。クラス分けの仕組みを正確に知ると、それだけで不安のかなりの部分が消えます。

クラス分けテストは「範囲のある試験」——つまり対策できる

多くの進学塾のクラス分けは、直近数週間〜数か月の学習範囲から出題される「範囲のあるテスト」で行われます。入試のような全範囲の実力勝負ではなく、出るところが決まっている試験です。

これは挽回する側にとって朗報です。範囲が決まっているなら、対策の的も絞れます。「実力を上げなければ」という漠然とした戦いではなく、「次の判定テストの範囲を取り切る」という具体的な戦いに変換できるからです。

1回で決まらない塾もある——判定ルールを正確に把握する

クラスの昇降ルールは塾によって異なります。1回のテストで即座に入れ替わる塾もあれば、複数回の結果を見て判定する仕組みの塾もあります。昇降の判定に使われるテストの種類が決まっている場合も多くあります。

まずやるべきは、お子さまの塾の判定ルールを正確に把握することです。「どのテストが判定対象か」「何回分の結果で決まるか」「次の判定はいつか」。この3点を塾に確認するだけで、逆算の起点が定まります。意外なほど多くのご家庭が、このルールを曖昧なまま一喜一憂しています。

「上のクラスでは悩むのが正常」という設計を知る

もう一つ、知っておくと心が軽くなる構造があります。進学塾のクラスとテキストは、多くの場合「クラスが上がると、1段難しい問題で悩むように」設計されています

クラスが上がるというのは「前のレベルの問題が解けるようになった証明」であって、「上のクラスの問題が解ける証明」ではありません。上がった直後に難しく感じるのは、設計どおりの正常な状態です。逆に言えば、上のクラスで悩み続けた末のクラス落ちは、「背伸びした環境で戦った記録」でもあります。恥じるものではなく、今の実力に合った場所で足場を固め直すタイミングが来た、というサインです。

3. 落ちた直後の72時間——親の初動がすべてを決める

クラス落ちからの挽回が成功するかどうかは、実は最初の72時間でかなり決まります。この期間の主役は勉強ではなく、親の振る舞いです。

やってはいけない3つの初動

子どもの受け止め方は3タイプ——初動を変える

同じクラス落ちでも、子どもの受け止め方は分かれます。タイプに合わせて初動を変えてください。

タイプ様子親の初動
悔しがる型泣く、怒る、「次は戻す」と口にする感情を否定せず、その悔しさを燃料にする。「じゃあ次の判定はいつか調べようか」と行動へ接続
平気に見える型「別に」「どうでもいい」と素っ気ない本心とは限らない。問い詰めず、数日置いてから「今回のテスト、どの科目が一番手ごわかった?」と事実から入る
萎縮型口数が減る、塾に行きたがらない挽回の話より先に安全確保。「クラスが下がっても、あなたの価値は変わらない」を言葉と態度で伝える

特に萎縮型のサインが続く場合は、挽回のスケジュールより心の回復を優先してください。受験期のメンタルの見立て方は受験メンタルのコラムで詳しく整理しています。

答案を開くのは「落ち着いてから」——ただし1週間以内

原因分析の材料は答案です。ただし、結果が出た直後の答案分析は、子どもにとって「公開処刑」になりがちです。感情が落ち着くのを待ってください。

一方で、待ちすぎも禁物です。記憶が薄れると「なぜこの答えを書いたのか」が本人にも分からなくなり、分析の精度が落ちます。目安は結果判明から2〜3日後、遅くとも1週間以内。「怒られる場」ではなく「作戦会議」だと伝えたうえで、親子で答案を開いてください。

4. 原因を答案で特定する——3つの型と見分け方

ここからが挽回の本丸です。クラス落ちの原因は、答案を見ればほぼ必ず3つの型のどれか(または組み合わせ)に分類できます。

答案に出るサイン主な打ち手
①基礎の穴型正答率の高い問題・大問前半を落としている該当単元まで戻って埋め直す
②宿題が回っていない型直近の学習範囲だけ集中的に崩れている宿題の量と優先順位を再設計する
③テスト運用型時間切れ・計算ミス・問題の読み飛ばしが多い解く順番と見直しの手順を練習する

①基礎の穴型——「戻る勇気」が最短ルート

多くの受験生が正解している問題を落としている場合、原因は今の範囲ではなく、その土台となる過去の単元にあります。たとえば「速さと比」が崩れている子の穴は、比の基本や割合にあることが珍しくありません。

この型の打ち手は、該当単元まで戻ることです。「下の学年の教材に戻るなんて」とためらう気持ちは分かりますが、穴の上に積んだ知識は必ず崩れます。2〜3週間の集中投資で埋まる穴を放置して、半年後にもっと大きく崩れる——これが最も高くつくパターンです。なお、成績下降の原因の切り分け方は6年生で成績が下がる3つの原因のコラムでさらに詳しく解説しています。

②宿題が回っていない型——量の問題を根性で解決しない

直近の範囲だけが崩れている場合、疑うべきは理解力ではなく宿題の消化率です。学年が上がって宿題量が増えた、習い事との両立が崩れた、上のクラスに上がって宿題のレベルと量が一段重くなった——きっかけはさまざまですが、共通するのは「全部やろうとして、全部が浅くなっている」状態です。

この型に「もっと頑張る」は効きません。必要なのは優先順位です。具体的な作り方は次章で扱います。

③テスト運用型——実力はある。使い方だけの問題

家では解けるのにテストで落とす。時間が足りない。計算ミスと読み飛ばしが多い。この型は、知識ではなくテストの運用技術の問題です。

打ち手は練習で身につきます。解く順番をあらかじめ決める(大問1から順番に解く必要はありません)、捨てる問題を判断する基準を持つ、見直しの手順を固定する。週末に過去のテストを時間を計って解き直し、この運用だけを練習する時間を作ってください。実力を上げる勉強より、はるかに短期間で点数が動きます。

5. 学年別に見るクラス落ち——4年・5年・6年で意味が違う

同じクラス落ちでも、起きた学年によって「何のサインか」と「打ち手の優先順位」は変わります。学年別に整理します。

学年典型的な原因優先すべき打ち手
4年生学習サイクルが未確立成績より「授業→家庭学習→テスト」の型づくり
5年生量の急増と抽象単元で宿題が回らない優先順位の再設計と、割合・比など土台単元の固め直し
6年前半穴の表面化、講座資格との交錯穴埋めの最終期限。資格基準からの逆算
6年後半総合演習期の相対変動クラスより過去問の得点を現在地にする

4年生——「型」を作る時期。クラスはまだ気にしすぎない

4年生は、本格的な受験勉強のサイクルが始まったばかりの時期です。この段階のクラス落ちの多くは、実力の問題ではなく、「授業を受ける→家で復習する→テストで確認する」という型がまだ回っていないことが原因です。

打ち手は成績対策ではなく、生活の仕組みづくりです。復習する曜日と時間を固定する、テスト直しを親子でやる日を決める——この型さえできれば、クラスは後からついてきます。逆にこの時期に点数だけを追うと、「勉強=親に叱られるもの」という刷り込みが先にできてしまい、5年生以降の伸びを妨げます。

5年生——最も落ちやすく、最も立て直しやすい学年

5年生は、学習量が一段増え、割合・比・速さといった抽象度の高い単元が続く、クラス変動の最も激しい学年です。「宿題が回っていない型」が急増するのもこの時期です。

同時に、5年生は立て直しの投資対効果が最も高い学年でもあります。ここで出た穴は、まだ2〜3週間の集中で埋まります。6年生になってから同じ穴を埋めるには、志望校対策の時間を削るしかありません。5年生のクラス落ちは「6年生で伸びるための地固めの合図」——この捉え方が、結果的に最難関への最短ルートになります。

6年生——指標を「クラス」から「入試」へ切り替える学年

6年前半のクラス落ちは、穴を埋める最後のチャンスです。夏までに土台工事を終える前提で、急いで、しかし順番どおりに手を打ってください。志望校別講座の資格基準がある場合は、その判定時期からの逆算も必要になります(詳しくは後述します)。

6年後半は、見る指標そのものを変える時期です。周りも仕上がってくるため、クラスの相対位置は動きにくくなります。ここで一喜一憂するより、志望校の過去問で合格最低点にどれだけ迫れているかを現在地としてください。この時期のクラス落ちで慌てて環境を変えるのは、多くの場合、得られるものより失うもののほうが大きくなります。

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6. 挽回する家庭が最初にやる3つのこと

現場で数多くのクラス落ちに伴走してきて、挽回できる家庭とできない家庭の差は、才能でも勉強量でもなく、最初にやることの順番だと感じています。挽回する家庭が共通してやっているのは、次の3つです。

①感情ではなく「答案」で話す

挽回する家庭の会話には、「なんで」が少なく「どの問題」が多い。この違いは決定的です。

「なんで落ちたの」は感情の言葉で、答えようがありません。「どの問題から直そうか」は答案の言葉で、行動に直結します。前章の3つの型を親子で一緒に見分ける作業そのものが、「結果を裁く関係」から「一緒に作戦を立てる関係」への転換になります。子どもが自分の答案を隠さず見せてくれる家庭は、それだけで挽回の半分が済んでいます。

②宿題の全量主義を捨て、優先順位表を作る

クラス落ち後にやりがちなのが、「もっとやらせなきゃ」と課題を積み増すことです。しかし②の型で見たとおり、多くの場合、問題は量の不足ではなく消化の浅さにあります。

やるべきは逆で、宿題に優先順位をつけて「深くやるもの」と「思い切って軽くするもの」を分けることです。判断基準はシンプルに、次の判定テストの範囲と配点。ここで効いてくるのは、削る判断を家庭の独断でやらず、塾の先生に相談することです。「次の判定テストに向けて、宿題のどこを最優先すべきですか。逆に、今のうちの子が後回しにしてよいものはどれですか」——この聞き方をすれば、先生は具体的に答えられます。全部やる前提の相談より、はるかに実のある面談になります。

③「本人の受験」にする——クラスを戻す理由を本人の言葉で

3つの中で、最も効くのがこれです。クラス落ちから伸びない子に共通するのは、受験が「親の受験」になっていることです。親が焦り、親が計画し、親が管理する。本人は運ばれているだけ——この構図では、クラス落ちは「親をがっかりさせた事件」にしかならず、挽回のエネルギーが本人の中から湧いてきません。

逆に、挽回する子は、どこかのタイミングで「なぜ自分はこの受験をするのか」「なぜ元のクラスに戻りたいのか」を自分の言葉で口にしています。「あの学校の文化祭が楽しかったから」「友だちと同じ授業をまた受けたいから」——理由は素朴で構いません。親ができるのは、正解を与えることではなく、志望校の話や入試の日程を一緒に眺めながら、本人の言葉が出てくるのを待つことです。クラス落ちは、実はこの対話をする最高のきっかけでもあります。

7. 「下のクラス」を戦略的に使うという発想

クラス落ちを「不名誉な降格」と捉えるか、「装備を整え直す拠点」と捉えるか。ここで挽回の質が変わります。

実力とかけ離れた上位クラスは、疲弊を生む

意外に思われるかもしれませんが、指導の現場では「上のクラスにしがみつくこと」が逆効果になる場面を何度も見ます。実力とかけ離れたクラスでは、授業中の問題がほとんど「できない問題」になり、毎回の授業が自信を削る時間になります。宿題は重く、消化は浅くなり、基礎の穴が広がる——悪循環です。

それよりも、できる問題と悩む問題がほどよく混ざるクラスで足場を固めた子のほうが、後半に伸びる。これは進学塾の指導者たちも繰り返し指摘している構造です。特に5年生までのクラス落ちは、「6年生の伸びのための地固め期間」と捉え直す価値があります。

下のクラスの3つの利点を使い倒す

一点だけ注意があります。下のクラスの居心地の良さに慣れて、目標そのものが下がってしまうケースです。これを防ぐのが、前章の③——本人の言葉による「戻る理由」です。拠点はあくまで拠点。どこへ戻るためかを、親子で見失わないでください。

8. ケーススタディ——挽回した家庭と長引いた家庭の分かれ目

ここまでの内容を、実際の相談で繰り返し出会う典型像に当てはめます。いずれも個人が特定されないよう複数の事例を再構成したもので、結果には個人差がありますが、「分かれ目」の感覚をつかむ参考にしてください。

ケース1:5年秋・基礎の穴型——「戻る勇気」で2か月復帰

5年生の秋にクラスが下がり、答案を見ると「速さ」の失点が集中していた事例です。分析すると、崩れていたのは速さそのものではなく、その土台の「比」でした。

このご家庭が偉かったのは、焦って今の範囲の演習を増やさず、2週間だけ比の単元に戻る決断をしたことです。周回遅れになる恐怖と戦いながらの決断でしたが、土台が埋まると速さの理解が一気に通り、次々回の判定テストで元のクラスに復帰しました。「戻るのは遠回りに見えて最短」——この型の教科書のような経過です。

ケース2:全量主義で長引いた——優先順位の相談で好転

クラス落ち後、「もっとやらせなければ」と市販教材を買い足し、宿題も全部やらせようとした事例です。結果は消化の浅さが悪化し、判定テスト2回連続で動きませんでした。お子さまの表情も硬くなる一方でした。

転機は、塾の先生への相談の仕方を変えたことです。「どうすれば上がりますか」ではなく、「次の判定に向けて最優先の宿題はどれで、後回しにしてよいものはどれですか」と聞いた瞬間、面談が具体的になりました。課題を3割減らして深くやる形に変えてから答案が改善し始め、3か月目に復帰。長引いた原因は能力ではなく、「足し算しかしない」方針そのものでした。

ケース3:6年夏・クラスは戻らないまま合格——指標の切り替え

6年生の夏にクラスが下がり、判定テストでは最後まで元のクラスに戻れなかった事例です。ただしこのご家庭は、秋に指標を切り替えました。クラスの昇降を追うのをやめ、志望校の過去問の得点だけを親子の共通指標にしたのです。

過去問では、志望校の出題形式との相性もあって合格最低点との差が着実に縮まり、12月には射程圏に入りました。本番は合格。クラスという塾内の相対位置と、その学校で取れる点数は、最後まで一致しませんでした。「クラスは手段、合否は当日の得点」を象徴する経過です。

3つのケースの分かれ目は、いずれも才能ではありません。戻る勇気、削る決断、指標の切り替え——どれも、今日から選べる行動です。

9. 挽回のスケジュール——次の判定テストから逆算する

原因が特定でき、方針が決まったら、あとは日程に落とすだけです。起点は次のクラス判定に使われるテストの日付。第2章で確認した判定ルールが、ここで効いてきます。

時期やることやらないこと
テスト4週間前まで原因の型に応じた土台工事(基礎の穴埋め/宿題の優先順位再設計)新しい教材の追加
3〜2週間前判定テストの範囲を単元ごとに総点検。過去の確認テストの解き直し範囲外の応用問題への深入り
1週間前時間を計った運用練習。解く順番・捨てる基準・見直し手順の固定夜更かしでの詰め込み
前日〜当日睡眠の確保と、直したミスのリスト1枚の見直し不安からの新規演習

理想は1〜2か月での復帰。ただし焦らない

下のクラスが常態化する前に戻る——という意味で、挽回の理想は1〜2か月、判定テスト1〜2回分です。実際、原因の型に正しく手を打てば、この期間で戻る子は珍しくありません。

ただし、1回で戻らなくても計画を壊さないでください。見るべきはクラスの昇降より、答案の中身が改善しているかです。正答率の高い問題の失点が減った、時間切れがなくなった、直近単元の得点が回復した——この変化があれば、挽回は軌道に乗っています。クラスという結果は、少し遅れてついてきます。

中間目標は「順位」ではなく「失点原因の減少」で置く

「次のテストで○位以内」という目標は、他人の出来に左右されるため、本人がコントロールできません。中間目標は「計算ミスを半分にする」「大問1〜2を全問取る」「宿題の算数を週3回、解き直しまでやる」のように、本人の行動と答案で測れるものにしてください。コントロールできる目標は、達成のたびに自信を積み上げます。

10. 最難関志望の家庭が特に注意すべきこと

最難関中学を目指すご家庭のクラス落ちには、固有の論点が2つあります。

最難関向け講座の「資格基準」との関係を確認する

塾によっては、最難関向けの特別講座や志望校別コースに、成績やクラスによる資格基準が設けられている場合があります。この場合、クラスの位置が「受けられる講座」に直結するため、通常のクラス昇降より一段重い意味を持ちます。

確認すべきは3点です。①志望校対策の講座に資格基準はあるか、②その判定に使われるテストと時期はいつか、③今回のクラス落ちはその資格に影響するか。ここが曖昧なまま秋を迎えると、「気づいたら志望校別コースの資格が切れていた」という事態になりかねません。6年生の秋以降の講座資格から逆算して、いつまでにどの位置へ戻るか——最難関志望の挽回計画は、この逆算を含めて設計してください。

それでも、合否を決めるのは入試当日の得点

一方で、忘れてはならない事実があります。合格を決めるのは塾のクラスではなく、入試当日の得点です。クラスが下がったまま本番を迎えて合格する子は毎年いますし、最上位クラスから不合格になる子もいます。

クラスは、あくまで塾内の相対位置を示す指標です。秋以降は特に、クラスの維持より志望校の過去問で合格最低点にどれだけ迫れているかが本当の現在地になります。過去問での現在地の測り方は過去問の逆算コラムで詳しく解説しています。クラスの数字に家庭全体が振り回されそうになったら、この原点に戻ってください。

11. 環境を変える判断——塾内相談・併用・転塾の順番

手を打っても状況が動かないとき、環境を変える選択肢が浮上します。ただし、順番を間違えると傷を広げます。

環境変更を考える3つのサイン

順番は「塾内→併用→転塾」

環境を変えるといっても、いきなり転塾ではありません。コストの小さい順に試します。

  1. 塾内の資源を使い切る——質問教室、補習、担当講師との面談。宿題の優先順位の相談を含め、今の塾でできる調整はまだ残っていることが多いものです。
  2. 個別指導・家庭教師の併用——集団のカリキュラムはそのままに、原因となっている単元だけを1対1でピンポイントに埋める形です。特に①基礎の穴型は、集団授業では戻れない過去単元を扱えるため、併用の効果が出やすい型です。
  3. 転塾——最後の選択肢です。転塾にはカリキュラムの継ぎ目という無視できないコストがあり、塾ごとに単元の進む順序が違うため、移った先で新たな穴が生まれることもあります。特に6年生の後半での転塾は、得られるものより失うものが大きくなりがちです。検討するなら、「今の塾で何が解決すれば続けられるか」を言語化し、それが構造的に解決不能だと確認できてからにしてください。

面談で聞くことリスト——この5つで面談の質が変わる

塾内の資源を使い切るうえで、要になるのが面談です。「様子はどうですか」で始まる面談は「頑張っています」で終わります。次の5つを持ち込んでください。

この5つが揃うと、面談は「近況報告」から「作戦会議」に変わります。答案を持参し、メモを取り、帰宅後に子どもへ「先生とこういう作戦になった」と共有するところまでが1セットです。

迷ったときは、塾と利害関係のない第三者に答案と状況を見てもらうのも一つの方法です。中と外の両方の視点が揃うと、判断の精度は上がります。

現場メモ|クラス発表の週に増えるご相談

ご相談が集中するのは、クラス替えの発表があった週です。文面から、ご家庭の焦りが伝わってきます。

ただ、こちらから最初にお願いすることはいつも同じです。「まず答案を見せてください」。クラスの数字ではなく、どの問題をどう間違えたか。ここを見ないと、何をすればいいのかが決まりません。

それから、これは中堅校を目指すご家庭でも同じです。上のクラスに戻すことが目的ではなく、志望校で点が取れる状態にすることが目的です。順番を間違えないでいただきたいのです。

12. まとめ——今夜できるチェックリスト

最後に、この記事の要点をまとめます。

①クラス落ちは実力低下ではなく警告灯。原因は「基礎の穴」「宿題が回っていない」「テスト運用」の3型に分かれる。②最初の72時間は詰問より安全確保。答案を開くのは落ち着いてから、1週間以内。③挽回する家庭は「答案で話す・全量主義を捨てる・本人の受験にする」の3つを最初にやる。④下のクラスは地固めの拠点として使い倒す。⑤クラスは手段。合否を決めるのは入試当日の得点

そのうえで、今夜できることを5つ挙げます。

クラス落ちは、受験の終わりではありません。学習の設計を見直し、親子の関係を「裁く側と裁かれる側」から「同じ作戦を立てる仲間」に組み替える——そのきっかけとして使えたご家庭にとって、この経験はむしろ転機になります。警告灯は、止まるためではなく、正しく走り直すために点いています。

よくある質問

Q クラス落ちから挽回できますか?
A できるケースは多いです。クラス落ちは直近のクラス分けテストで基準を下回ったという事実であって、実力が消えたわけではありません。原因が「基礎の穴」「宿題が回っていない」「テストの運用ミス」のどの型かを答案から特定し、次の判定テストに向けて手を打てば、1〜2か月で元のクラスに戻る子は珍しくありません。逆に、原因を特定しないまま勉強量だけ増やすと、挽回は長引きやすくなります。
Q 下のクラスからでも最難関中学に合格できますか?
A 合否は入試当日の得点で決まるため、塾のクラスだけで決まるわけではありません。実力とかけ離れた上位クラスで疲弊するより、足元に合ったクラスで基礎を固めた子が6年生で伸びる例もあります。ただし、塾によっては最難関向けの特別講座や志望校別コースに資格基準が設けられている場合があるため、志望校とクラスの関係は早めに塾へ確認しておくほうが確かです。
Q 転塾すべきタイミングはいつですか?
A 目安は、下位クラスの常態化が数か月続いている、本人の萎縮が続いて授業で発言や質問ができない、授業レベルと本人の理解が大きく乖離している、のいずれかに当てはまるときです。ただし転塾にはカリキュラムの継ぎ目という無視できないコストがあり、特に6年生後半の転塾は慎重な判断が必要です。まず塾内での相談、あるいは中学受験の指導経験があるプロの家庭教師に見てもらったうえで、「何が解決すれば今の塾で続けられるか」を言語化してからでも遅くありません。
Q クラスが下がった子どもに、親はどう声をかければいいですか?
A 結果を責める言葉ではなく、次の行動につながる言葉を選んでください。「なんで落ちたの」は原因の特定に何も寄与せず、子どもを守りに入らせるだけです。気持ちが落ち着いたタイミングで「どの問題から直そうか」と答案に目を向けさせる声かけが、挽回の最短ルートになります。クラスの話題を毎日出すのは逆効果です。判定テストの日程を親が把握し、逆算の計画づくりを手伝う形で支えてください。
Proチューターズネットワーク 編集部
中学受験を専門とするプロ家庭教師マッチングサービス「Proチューターズネットワーク」が運営する受験情報メディア。最難関校から中堅校まで、志望校のレベルを問わずご相談を承っています。中学受験・高校受験・大学受験・医学部受験に関する情報を、保護者の方に向けて発信しています。

中学受験の指導実績がある教師

23名が登録しています

うち8名は、灘・甲陽学院・東大寺学園・洛南・西大和学園・大阪星光学院・神戸女学院・四天王寺などの最難関校に生徒を送り出した指導実績を持っています。学生講師は在籍していません。
在籍状況は時期により変わります。担当できる教師がいるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。

それでも、一度お話を聞かせてください

ここまで読んで、「うちの場合は戻れるのだろうか」と思われたかもしれません。

ご家庭だけで抱えていると、「これは相談していいことなのか」を決めるところから始まります。そこで数週間が過ぎるのが、いちばん惜しい。

学年と、いま気になっていることを一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。家庭教師以外の選択肢をお伝えすることもあります。

力になれることがあるなら、なりたいと思っています。

合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。

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