1. 夏に崩れなかった子が、9月に崩れる
夏休みのあいだは、思ったより回っていたはずです。宿題も塾の講習もこなせていましたし、本人も前向きでした。ところが学校が始まって2週間ほど経つと、宿題が残るようになり、机に向かう時間も短くなって、声をかければ不機嫌になる——9月のご相談は、たいていこの形で始まります。
そしてその原因は、たいていの場合、本人の側にはありません。
そもそも夏休みというのは、受験生にとって特殊な期間でした。学校がないぶん1日をまるごと学習に配分できますし、塾の講習が長時間入ったとしても、その前後に自習の枠を取ることができます。つまり、時間の設計そのものがやさしかったわけです。
ところが2学期に入ると、その前提が根本から変わります。1日のうち8時間以上が学校で埋まり、そのあと塾へ移動して帰宅は夜になり、残った時間で宿題と解き直しをこなす形になりますから、使える時間の総量は、夏の半分どころではない水準まで落ちてしまいます。
つまり崩れているのは本人ではなく、8月に作った学習計画のほうなのです。9月からは別の設計が要るのであって、同じ量を同じやり方で続けようとすれば、どこかで必ず詰まることになります。
ここを取り違えてしまうと対応の方向がずれますので、「夏はできていたのに」という言葉が出てきたときは、本人への評価としてではなく、計画を組み直す合図として受け取ってください。
この記事では、まず時間が何時間減るのかを数字で押さえたうえで、つまずきを4つの型に分けて、型ごとの打つ手を整理していきます。読み終えたときに、2学期の設計を1つ書き換えられる形を目指しました。
2学期は、受験までのちょうど半分を占める
関西の中学受験では、統一解禁日が例年1月中旬に置かれており、2027年の入試は1月16日(土)が解禁日となる見込みで、この日から4日ほどのあいだに主要校の入試が終わります。首都圏の2月1日と比べれば、約2週間早いことになります。
| 起点 | 入試までの日数 | 週数 |
|---|---|---|
| 2026年8月17日 | 152日 | 約22週 |
| 2026年9月1日 | 137日 | 約20週 |
| 2026年10月1日 | 107日 | 約15週 |
| 2026年11月1日 | 76日 | 約11週 |
| 2026年12月1日 | 46日 | 約7週 |
※2027年1月16日を起点として算出。日程は各校の募集要項でご確認ください。
9月から11月末までがおよそ13週で、残り20週のうちの13週ですから、2学期だけで残り時間の3分の2を占めることになり、ここでどう積み上げるかが、直前期に何を持って入れるかを決めてしまいます。
逆に言えば、9月の設計ミスは13週ぶん引きずることになりますから、始まって2週間のうちに一度組み直しておきたいところです。
2. 平日の時間は、何時間減るのか
ここからは感覚ではなく時間で見ていくために、小学6年生の1日をモデルとして並べてみます。
| 項目 | 夏休みの平日 | 2学期・塾のある日 | 2学期・塾のない日 |
|---|---|---|---|
| 起床〜就寝 | 16時間 | 16時間 | 16時間 |
| 学校(登下校含む) | 0時間 | 8.5時間 | 8.5時間 |
| 塾(移動含む) | 4時間 | 3.5時間 | 0時間 |
| 食事・入浴・支度 | 3時間 | 3時間 | 3時間 |
| 家庭学習に使える時間 | 9時間 | 1時間 | 4.5時間 |
※7時起床・23時就寝、通塾週3回として算出したモデルです。ご家庭ごとに数字は変わります。
塾が週3回だとすると、平日5日で使える時間は次のようになります。
- 夏休みの平日:9時間 × 5日 = 45時間
- 2学期の平日:1時間 × 3日 + 4.5時間 × 2日 = 12時間
差は33時間です。平日にできる家庭学習は、夏休みの4分の1近くまで落ちる計算になりますから、週に33時間ぶんの作業が行き場を失うことになります。
この33時間を気合いで取り戻そうとすると、削られるのは睡眠です。ところが睡眠を削れば、翌日の学校で回復に使う時間が増えて、かえって効率が落ちてしまいます。取り戻す方向ではなく、入れる量を減らす方向で設計してください。
週末に寄せると、今度は週末が壊れる
平日が足りないぶんを土日で埋めるという発想は自然なものですが、そのまま実行すると、今度は別の問題が起きます。
2学期の土日には、塾のテストや志望校別の講座、学校行事、模試といった予定が入ってきますから、もともと予定が入りやすい2日間なのです。ここに平日の残りをすべて積んでしまえば、月曜の朝には疲労が残ったまま学校へ行くことになります。
週末というのは、平日で崩れた分を回復させる場所でもありますから、全部を作業で埋めない設計にしてください。目安としては、土日のどちらかに半日、予定を入れない枠を先に確保しておく形が現実的です。
きょうだいがいる場合、共働きの場合
なお、上の表は受験生1人を基準にしたモデルですので、実際のご家庭ではここに別の要素が乗ってきます。
下の子の習い事の送迎があったり、上の子の部活に合わせて夕食の時刻が動いたり、保護者の帰宅が20時を過ぎる日があったりと、こうした事情はそのまま受験生の可処分時間に跳ね返ります。塾から帰ってきて夕食が21時になってしまえば、その日に残る時間はほぼありません。
この場合、本人の努力で埋まる部分はありませんから、ご家庭の運用として動かせる箇所を探すことになりますが、よくあるのは次の3つです。
- 塾のある日の夕食を、帰宅前に済ませる形へ変える(塾の前に軽く食べる)
- 入浴の順番を変えて、帰宅後すぐに就寝準備まで進める
- 週のうち1日だけ、送迎や家事の負担が軽い日を作る
どれも学習内容とは関係のない調整ですが、これだけで1日30分が戻ることがあります。2学期の13週で計算すればおよそ45時間ぶんになりますから、演習量を増やすという話よりも、はるかに大きな効果があるわけです。
3. つまずきを4つの型に切り分ける
「2学期に入って調子が悪い」という状態は、その中身が4つに分かれます。見た目はどれも似ているのですが、打つ手のほうはまったく違ってきます。
| 型 | 表に出る様子 | 実際に起きていること | 打つ手 |
|---|---|---|---|
| 時間型 | 宿題が終わらない/夜が遅くなる | 入れる量が可処分時間を超えている | 量を減らす・優先順位をつける |
| 疲労型 | 机に向かってもぼんやりする | 睡眠不足と学校の疲れが蓄積 | 睡眠時間を先に固定する |
| 学校型 | 行事や係の仕事に時間を取られる | 行事週の負荷を見込んでいない | 行事の週だけ別設計にする |
| 指標型 | 模試の判定が下がり本人が沈む | 母集団が変わり判定が動いている | 指標を過去問の得点へ移す |
ご家庭で最初にやるのは、この4つのどれなのかを見極める作業になりますが、その入口は、ほとんどの場合が時間型です。時間が足りない状態が続けば睡眠が削られて疲労型になり、疲労が続けば模試の点が落ちて、今度は指標型に見えるようになるからです。
つまり表面に出てくるのが疲労型や指標型であっても、大元は時間型であることが多く、ここで指標型だけを見て「実力が落ちた」と判断してしまうと、対応が空振りに終わります。
複数の型が同時に出ているとき
実際には、2つ3つが重なっている場合がほとんどですが、その場合の順序は次のように決まっています。
- 疲労型を最初に処理する——睡眠が足りていない状態では、他の手当てが効きません
- 次に時間型——入れる量を実測に合わせて減らします
- 学校型は週単位で対処——行事のある週だけ、別のメニューに切り替えます
- 指標型は最後——上の3つが片づくと、多くの場合これも収まります
この順番を逆にすると効きません。判定が下がったからと演習量を増やせば、睡眠がさらに削られて疲労型のほうが悪化してしまいますので、この順序だけは守ってください。
4. 行事の入る週を、先にカレンダーで潰す
2学期の学校には行事が集中します。運動会に音楽会、宿泊学習、学習発表会、それに委員会や係の準備と続きますが、小学6年生というのは、どの行事でも中心的な役割を任される学年です。
行事の週は放課後の練習で下校が遅くなり、当日は体力を使い切ることになりますから、この週に平常どおりの学習量を組んでおけば、まず崩れます。そして崩れたとき、本人はそれを「自分はできなかった」と受け取ってしまいます。
行事そのものは削れません。だからこそ削れないものに合わせて、こちらの計画を先に曲げておくわけですが、これが2学期の設計ではいちばん効きます。
行事は、9月と11月に固まりやすい
学校によって時期は違いますが、2学期の行事にはおおよその傾向があります。
| 時期 | 入りやすい行事 | 受験生への影響 | 備え |
|---|---|---|---|
| 9月 | 始業直後の実力テスト、運動会の練習 | 放課後の練習で下校が遅くなる | この期間は新単元を入れない |
| 10月 | 運動会、遠足、社会科見学 | 当日は体力を使い切る | 翌日を軽い日にしておく |
| 11月 | 音楽会・学習発表会、宿泊学習 | 準備期間が2週間ほど続く | 週まるごと半分の量にする |
| 12月 | 個人懇談、終業式の準備 | 影響は比較的小さい | 直前期の設計を優先 |
※行事の時期は学校ごとに大きく異なります。必ず在籍校の予定表でご確認ください。
負荷が重いのは、当日よりもむしろ準備期間のほうです。音楽会や学習発表会となると、2週間前から放課後の練習が入ってきますから、当日1日を計算に入れるだけでは足りません。
しかも11月は、受験校の組み合わせを決める月とも重なりますので、学校がいちばん忙しい時期と、判断の期限とがぶつかることになります。ここを見込んでおかないと、11月に入ってから慌てることになります。
手順は3つ
学校からもらう2学期の行事予定表を用意してください。所要は15分ほどです。
- 行事のある週に印をつける——当日だけでなく、準備期間を含めた週まるごと
- その週のメニューを、あらかじめ半分にしておく——新しい単元を入れず、計算と一行問題だけ
- 削ったぶんを、前後の週に振り分ける——後ろに寄せると直前期が重くなるため、できれば前へ
これをやっておけば、行事の週に予定どおり進まなかったとしても計画上は想定内という扱いになりますし、本人にとっても、遅れではなく設計として説明できるようになります。ここが大きいところです。
行事を欠席させる選択について
受験を理由に行事を休ませるかどうかという相談も、この時期にはよく出てきます。
判断は各ご家庭のものですが、材料としては次の点があります。行事1日で失われる学習時間は多くても6時間から8時間ですから、2学期全体の学習時間から見れば数パーセントにすぎません。その一方で、6年生の行事というのは本人にとって最後の機会になります。
また、休ませたところで、その日をまるごと学習に使えるとは限りません。友人が参加している時間に1人で机に向かう形になり、集中が続かなかったという話もよく聞きますから、時間の計算だけでは決められない判断が要る場面です。
5. 1週間の可処分時間を実測する
ここまで数字を並べてきましたが、モデルはあくまでモデルにすぎませんので、ご家庭の実際の数字を、一度だけ測ってみてください。期間は1週間、記録にかかる手間は1日1分ほどです。
測るもの
紙1枚に7日ぶんの行を作り、次の4つだけを記録します。
- 就寝した時刻と、起きた時刻
- 帰宅した時刻(塾のある日は塾から帰った時刻)
- 机に向かっていた時間の合計(休憩は除く)
- その日にやり残したもの
本人に書かせる形でも、保護者が書く形でも構いません。ただし、この記録を評価に使わないでください。点検されていると感じた時点で記録は正確でなくなりますから、あくまで設計のための材料として扱ってください。
1週間後に見るところ
7日ぶんが埋まったら、次の3点を計算します。
| 計算するもの | 見方 |
|---|---|
| 1週間の睡眠時間の合計 | 1日平均で8時間を切っていないか |
| 1週間の家庭学習時間の合計 | 塾から出ている課題の想定量と合うか |
| やり残しの累計 | 毎日30分の積み残しは、2週間で7時間になる |
なかでも3つ目がいちばん効きます。1日30分の積み残しというのは、本人には小さく見えるものです。それが2週間で7時間、1か月では15時間ぶんの作業として溜まっていくわけですが、この量を前にすると、多くの子は手をつけられなくなります。
止まっている状態を見て「やる気がない」と受け取ってしまうと、話がこじれます。実際には量に押しつぶされて動けなくなっているだけですから、ここを見分けるために記録を取るわけです。
6. 減った時間の中で、何を外すか
実測が終わると入れられる量が見えてきますが、多くの場合、いま出ている課題の総量のほうが多いはずですので、そこで何を外すかを決める作業に入ります。
このとき、足し算ではなく引き算から始めるという順序を守ってください。やることを増やす形で立て直そうとすると、どうしても睡眠に手が伸びてしまいます。
外す判断の基準は、志望校の出題
何を外すかは本人の得意不得意で決めず、志望校の過去問を基準にしてください。
- 志望校の過去問を5年ぶん用意する
- 単元ごとに、出題された回数を数える(所要は1時間ほど)
- 5年間で1度も出ていない単元を、リストにする
- そのリストを「今はやらない」箱に入れる
この手順の利点は、感情が入らないところにあります。本人の好き嫌いでも保護者の不安でもなく、出題実績という外の基準で決まりますから、本人にも説明できますし、外したことへの後ろめたさも残りません。
なお「今はやらない」箱は、消さずに残しておいてください。12月に時間が余れば戻せます。捨てるのではなく順番を後ろにするだけという扱いにしておくと、本人の受け取り方も変わってきます。
外してはいけないもの
ただし、削る対象から除いておくものが2つあります。
1つは、計算と一行問題です。毎日15分から20分で構いませんが、ここを止めると2週間ほどで処理速度が落ちますし、落ちた速度を戻すには止めた期間の倍ほどかかりますから、時間あたりの効率でいえば、最も割のいい枠だといえます。
もう1つは睡眠です。削った時間ぶん学習量が増えるように見えて、実際には翌日の効率が落ちますから、差し引きではむしろ減ってしまいます。2学期には学校がありますので、夏休みのように昼寝で埋め合わせるという形も取れません。
この2つ以外については、優先順位をつけて構いません。塾から出ている課題であっても、全部をやり切ることが目的ではないという前提で見てください。
7. 学校の勉強を、どう扱うか
2学期に入ると、学校の勉強との折り合いという問題も出てきます。受験勉強と学校の宿題のどちらを優先するのかという質問は、毎年いただくところです。
結論から言えば、学校の宿題は最短で終わらせて構いません。ただし、やらないという選択のほうは勧めません。その理由は学力ではなく、本人の立場にあります。
やらない選択を勧めない理由
宿題を出さない状態が続くと、教室での居場所が変わってきます。担任からの声かけが増え、周囲の目も変わりますから、その状況が本人にとってストレスになり、結果として受験勉強の集中まで削ってしまうのです。
学校というのは、2学期のあいだ毎日通う場所です。そこが居心地の悪い場所になってしまえば失うもののほうが大きく、時間の節約としては割に合いません。
| 学校の課題 | 扱い方 |
|---|---|
| 漢字・計算ドリル | 受験勉強と重なる部分がある。素直にやる |
| 音読・日記 | 短時間で終わらせる。完成度は求めない |
| 自由研究・調べ学習 | 時間がかかる。夏や連休のうちに前倒しで処理 |
| 小テストの勉強 | 受験科目と重なるものだけ。それ以外は当日の見直しで足りる |
通知表について
中学受験では、多くの学校で通知表の成績が合否に関係しません。ただし、内部進学のある学校や一部の入試方式では、提出を求められる場合があります。志望校の募集要項で、調査書や報告書の提出があるかどうかを確認しておいてください。
提出が不要であれば、通知表の数字を上げるための勉強に時間を割く必要はありません。ただ、極端に落ちてしまえば担任との面談が増えますし、家庭内での話題も増えることになりますから、労力をかけない範囲で下げ止めておく、くらいの扱いが現実的です。
8. 疲労型を見分ける4つのサイン
疲労型は外から見えにくい型で、本人が言葉にしないまま進むことが多く、気づいたときには手当てが遅れています。
次の4つが出ていたら、疲労が溜まっている状態として扱ってください。
- 机に向かっている時間は変わらないのに、進む量が減っている
- 同じ問題を、以前より長く見ている——読み返しが増えるのは集中力低下のサイン
- 計算のミスが増えた——理解ではなく処理の問題として現れる
- 声をかけたときの反応が遅い、または過剰
とくに1つ目が分かりやすいところで、学習時間という指標は、疲労を隠してしまいます。2時間座っていたとしても、進んだ量が前の半分であれば実質は1時間ぶんですから、時間ではなく終わった量のほうで見てください。
疲労型への手当て
やることは1つだけです。睡眠時間を先に固定して、残りで学習を組む。この順序を、逆にしないでください。
就寝時刻を決めたら、その時刻に終わっていない課題は翌日に回します。回した量が毎日積み上がるようであれば、入れている量そのものが多すぎるという結論になりますから、睡眠を削って調整する形にはしないでください。
2学期の疲労は、夏休みのものとは性質が違います。夏は学習による疲労でしたが、2学期には学校生活そのものの負荷が乗ってきますから、本人の体感としては「同じことをしているのにしんどい」という形で出ます。ここを怠けと受け取らないでください。
9. 塾の量は、9月から増える
時間が減っていく一方で塾から出る課題のほうは増えていきますが、ここが2学期の構造的な問題です。
多くの塾では9月から志望校別の演習や過去問演習が始まり、通常授業の課題にこれが上乗せされますので、使える時間が4分の1になった状態で、出される量のほうは増えることになります。この2つが同時に起きるのが9月だと考えてください。
ですから破綻は、本人の努力不足で起きているわけではありません。時間の供給が減り、需要が増えた結果として、構造的に起きています。ここを見誤ると、対応が「もっと頑張らせる」という方向へ向かってしまいます。
9月から増えるものの内訳
何が増えるのかを分けて見ておくと、削る判断がしやすくなります。
| 増えるもの | 性質 | 優先度 |
|---|---|---|
| 志望校別の演習 | 出題形式に慣れるための演習 | 高い(志望校が確定している場合) |
| 過去問の課題 | 合格者最低点との差を測る材料 | 高い |
| 通常授業の宿題 | 単元の定着 | 中(頻出単元に絞れる) |
| テストの解き直し | 失点の性質を確かめる作業 | 高い(ただし全問は不要) |
| オプション講座の課題 | 追加で申し込んだ講座の分 | 低い(受講自体を見直す対象) |
削る候補として最初に挙がるのは、いちばん下の行です。夏の時点で申し込んだオプション講座が、2学期の時間の中で成立しなくなっているという形はよく見ますが、受講料を払っているぶん、やめる判断が遅れがちなところでもあります。
解き直しについては、全問をやり直す形にしないでください。正答率が50%を超えている問題で落としたものから順に手をつけていけば、それだけで対象はかなり減ります。
塾に相談してよいこと
課題の量が合っていないと感じたら塾に伝えてください。ただし、伝え方には少しコツがあります。
「量が多すぎます」という言い方をすると、塾側も答えにくくなってしまいますが、「処理が追いついていないので、優先順位をつけていただけますか」という形に変えれば、具体的な返答が返ってきやすくなります。どれを必ずやるべきかは、塾のほうがよく分かっているからです。
相談先も分かれます。カリキュラム全体やクラスの調整は教室長、個別の課題の中身は授業担当の講師というように、扱える範囲が違いますので、聞く相手のほうを分けてください。
なお、塾の宿題をどう仕分けるかについては、塾とプロ家庭教師の併用の記事で、過去問から機械的に仕分ける手順を詳しく扱っています。
10. 9月の判定が下がっても、実力低下とは限らない
9月から10月にかけての模試で判定が下がるというご相談も、この時期には増えてきます。
結論を先に言えば、判定の下降は実力が落ちたことを意味しません。母集団のほうが変わるからです。
秋以降の模試では受験を見送る層が抜けていき、残るのは最後まで走る層になりますので、同じ得点を取っていても周囲の水準が上がるぶん、偏差値と判定は下がることになります。本人が何も悪くなくても、数字のほうは動くわけです。
ここで演習量を増やす対応に入ってしまえば、時間型と疲労型が悪化します。順序としては、先に時間と睡眠を整えるほうが先です。
判定という指標の読み方そのものについては、中学受験の模試でD判定・E判定が出たらで、母集団の考え方と秋にやることの決め方をまとめています。あわせて、成績が下がったときの原因の切り分けは中学受験6年生で成績が下がる3つの原因で扱っています。
指標を移す時期
2学期は、判断の指標を偏差値から過去問の得点へ移す時期でもあります。志望校の合格者最低点と、いまの得点との差こそが、残り期間で埋めるべき対象になります。
偏差値は集団の中の位置を示す数字であって、志望校に何点足りないかまでは教えてくれませんから、2学期に見るべきなのは後者のほうです。過去問の始め方と使い方については、中学受験の過去問はいつから何年分やるかで詳しく扱っています。
11. 9月・10月・11月を、別々に設計する
2学期を1つのかたまりとして計画すると、月ごとにやることの性質が違ってくるため、うまくいきません。
| 月 | 入試まで | この月の主題 | やらないほうがよいこと |
|---|---|---|---|
| 9月 | 約20週 | 2学期の型を作る。時間の実測と量の調整 | 夏の計画をそのまま続ける |
| 10月 | 約15週 | 過去問で志望校との距離を測る | 判定だけを見て志望校を動かす |
| 11月 | 約11週 | 受験校の組み合わせを決める | 新しい教材を増やす |
| 12月 | 約7週 | 取りこぼしの回収と、生活リズムの調整 | 新しい単元に手を出す |
9月の主題は、量ではなく型のほうです。2学期の生活の中で回る形を作ることが、この月の仕事になります。ここで無理のある計画を組んでしまうと、10月以降ずっと引きずることになります。
10月は過去問との距離を測る月であり、11月はその材料をもとに受験校を決める月です。関西の統一解禁日が1月中旬にあるため、志望校を組み替える判断の実質的な期限は11月中になりますし、12月に入ってからの変更となると、対策に使える時間が7週を切ってしまいます。
いま9月の計画を組むなら
やることを、次の3つに絞ってください。
- 1週間の可処分時間を実測する(第5章の手順)
- 行事の週に印をつけ、その週のメニューを半分にする(第4章の手順)
- 志望校の過去問から、今はやらない単元を切り出す(第6章の手順)
この3つで9月の設計はほぼ決まりますが、合計しても2時間ほどの作業ですから、2学期の13週を左右する2時間としては、かなり割のいい投資だといえます。
12. この設計を、誰と一緒にやるか
ここまでの手順は、ご家庭でも進められます。時間を測り、行事の週を潰し、過去問から外す単元を決める。この順序で回るのであれば、それがいちばん早い形です。
難しくなるのは、時間型と疲労型の見分けと、過去問から単元を切り出す作業の2つです。
前者は、外から見るとどちらも「進まない」という同じ症状に見えてしまいます。量が多すぎて手が止まっているのか、それとも疲れて頭が動いていないのか。見分けるには、実際に解いている様子か、答案を見ることになります。1問にかかっている時間、途中式の残り方、消した跡といったところに、違いが出てきます。
後者については、過去問を読み解く経験がものを言います。同じ「速さ」の単元であっても志望校によって問われ方が違いますから、出題の形まで見ないと、外していい単元かどうかの判断がつきません。
中学受験の指導実績がある教師
23名が登録しています
うち8名は、灘・甲陽学院・東大寺学園・洛南・西大和学園・大阪星光学院・神戸女学院・四天王寺などの最難関校に生徒を送り出した指導実績を持っています。学生講師は在籍していません。
在籍状況は時期により変わります。担当できる教師がいるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。
ご相談いただく場合にうかがうのは、次の点です。1週間の学習時間と睡眠時間、塾から出ている課題の量、直近の模試の結果、志望校、そして2学期の行事予定。ここから、入れる量を減らせばよいのか、やり方そのものを変える段階なのかを切り分けます。
量の調整だけで戻ると判断される場合は、そうお伝えします。その場合、家庭教師を入れる必要はありません。
それでも、一度お話を聞かせてください
ここまで読んで、「うちは何を外せばいいのか」と思われたかもしれません。学校が始まったばかりのいまは、まだ判断の材料が揃っていない時期でもあります。
ご家庭だけで抱えていると、「これは相談していいことなのか」を決めるところから始まります。そこで数週間が過ぎるのが、いちばん惜しい。
学年と、いま気になっていることを一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。家庭教師以外の選択肢をお伝えすることもあります。
力になれることがあるなら、なりたいと思っています。
合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。
相談のときに、あると助かるもの
次のものがあると切り分けが速くなりますが、写真で撮ったもので構いません。
- 学校からもらった2学期の行事予定表
- 塾から出ている今週の課題(現物)
- 1週間の就寝・起床の時刻
- 直近の模試の結果(設問別の正答率が載っているページ)
- 志望校(決まっていなければ、候補で結構です)
とくに1つ目が、この時期は効きます。行事予定表があれば、どの週が危ないかを先に押さえられるからです。崩れてから立て直すよりも、崩れる週を予測して先に減らしておくほうが、はるかに軽く済みます。
まとめ:減ったことを、認めるところから
この記事の要点
- 9月に崩れるのは本人ではなく、8月に作った計画のほう
- 平日に使える家庭学習の時間は、夏休みの4分の1近くまで落ちる(週45時間→12時間のモデル)
- つまずきは時間・疲労・学校・指標の4つ。入口は時間型、表面化するのは疲労型と指標型
- 手当ての順序は疲労→時間→学校→指標。逆にすると効かない
- 行事の週は先に印をつけ、その週のメニューをあらかじめ半分にしておく
- 1週間だけ可処分時間を実測する。1日30分の積み残しは2週間で7時間になる
- 外す判断は本人の得意不得意ではなく、志望校の過去問5年分の出題実績で決める
- 計算・一行問題と睡眠の2つは、削る対象から外す
- 学校の宿題は最短で終わらせる。やらない選択は、教室での立場を通じて跳ね返る
- 9月の判定下降は母集団の変化によるもので、実力低下とは限らない
- 2学期は月ごとに主題が違う。9月は型を作る月、10月は距離を測る月、11月は決める月
「夏はできていたのに」と言う前に
最後に、1つだけ。
2学期に入って調子が落ちたとき、多くのご家庭で「夏はできていたのに」という言葉が出ます。事実としてはそのとおりなのですが、この言葉は本人には比較として届いてしまいます。できていた自分と、できていない自分。そう受け取ったところから、机に向かうこと自体が重くなっていきます。
実際に変わったのは、本人ではなく条件のほうです。学校が戻り、時間が4分の1になり、そのうえ塾の量まで増えたのですから、同じ量がこなせないのは当たり前のことです。
ですから最初にやるべきは、量を減らすと決めることです。減らすのは諦めではなく、残り20週で入試に持っていくものを選ぶ作業であって、選んだ結果として外れるものがあるというだけのことです。
行事予定表と過去問を並べて、2時間。ここから9月が決まります。