1. 判定は「お子さまの合格率」ではない
模試の結果が返ってきて、志望校の欄に「D」や「E」の文字が並んでいる。この時期、多くのご家庭がこの場面を経験します。
最初にお伝えしたいことがあります。この判定は、お子さまの合格率を示した数字ではありません。
判定は、模試を受けた集団の成績分布と、過去の合格データを照らし合わせて算出された統計値です。「この偏差値帯の受験生は、過去にこれくらいの割合で合格していた」という記録であって、目の前のお子さま一人について計算されたものではありません。
一般的な判定の目安
- A判定——合格可能性80%以上
- B判定——約60〜70%
- C判定——約50%
- D判定——約30%前後
- E判定——20%以下
※基準は模試の主催団体により異なります。実際の区分は各模試の資料でご確認ください。
この目安を見て、D判定の「約30%」を「7割落ちる」と読むか、「10人に3人は受かっている」と読むか。同じ数字でも、受け取り方でその後の3か月が変わります。そして、どちらの読み方も統計的には間違っていません。
この記事では、判定という数字が何を表しているのかを整理したうえで、秋に何をやるかを判定から決めない方法を扱います。判定に振り回されると、やるべきことが見えなくなるためです。
なぜ、この誤解が起きるのか
「D判定=合格率30%」という読み方は、間違いというより省略が起きていると言ったほうが正確です。
正しくは「この偏差値帯の受験生が過去に受験したとき、およそ3割が合格していた」です。主語が集団であって個人ではありません。ところが成績表には志望校名とお子さまの名前が並んで印刷されていますので、個人の数字として読めてしまうのです。
この省略が起きたまま数字を受け取ると、「うちの子は7割落ちる」という読み方になります。実際には、同じ帯の中でも志望校との相性で結果は分かれます。相性の部分は、判定の中に含まれていません。
2. 80%偏差値の本当の意味
判定を理解するために、その土台にある「80%偏差値」という言葉を先に押さえます。
志望校選びの資料でよく目にする数字ですが、これを「合格可能性が80%ある偏差値」と読んでいる方が少なくありません。正確には違います。
80%偏差値とは——その偏差値の受験生を100人集めたとき、80人が合格していた、という統計上の値です。
主語が「100人の集団」であって、「お子さま個人」ではありません。この違いは小さく見えて、判定の受け止め方を大きく変えます。
同じ偏差値でも、結果が分かれる理由
仮に、80%偏差値に届いているお子さまが2人いるとします。ところが片方は志望校の頻出単元が得意で、もう片方は苦手だとしたらどうでしょうか。
模試は複数の学校を想定した共通の問題です。志望校の出題との相性は、模試の偏差値には反映されていません。だからこそ100人中20人は落ちますし、50%偏差値の帯からも半分は合格します。
50%偏差値についても同じです。「その偏差値の受験生を100人集めたら50人が合格していた」ということですので、裏を返せば半分は合格しているということ。D判定やE判定の帯からも、毎年合格するご家庭はあります。
この記事で扱わないこと
先に断っておきます。この記事では「判定を上げる方法」は扱いません。判定は結果として動くものであって、直接操作できる対象ではないためです。
扱うのは、判定という数字をどう読み、そこから何を決めるかです。読み方が変われば、決めることが変わります。決めることが変われば、秋の3か月の使い方が変わります。順序としてはそちらが先です。
3. 同じ学力でも、模試が違えば判定が変わる
もう一つ知っておいていただきたいのが、模試ごとの違いです。
判定は、その模試を受けた集団の中での相対位置から算出されます。集団が違えば、同じ学力でも位置が変わります。
| 模試の性格 | 同じ学力の子に出る判定 |
|---|---|
| 最難関志望層が中心の模試 | 低めに出る |
| 幅広い層が受ける模試 | 高めに出る |
判定の区分の切り方も主催団体によって異なります。ある模試のD判定と、別の模試のD判定が同じ状態を指しているとは限りません。
偏差値そのものも、模試ごとに違う
判定だけでなく、偏差値の数値そのものも模試によって変わります。同じお子さまが同じ週に2つの模試を受けて、偏差値が5以上違うことは珍しくありません。
ここで気をつけたいのが、志望校の偏差値表と模試の偏差値を照合するときです。偏差値表は、それを発行している機関の模試を基準に作られています。別の模試の偏差値を当てはめると、実態とずれます。
「志望校の偏差値は58、うちの子は55だから、あと3」という計算をされる前に、その2つの数字が同じ基準のものかを確認してください。基準が違えば、この引き算には意味がありません。
関西の模試事情
関西の中学受験では、複数の模試が並行して実施されています。それぞれ受験する層の性格が異なりますので、どの模試を基準にするかを最初に決めておいてください。
基準を1つ決めたら、その模試の中で判定と偏差値を追います。他の模試は参考程度に見る。この扱いにしないと、良い判定が出た模試だけを見るようになったり、逆に悪い判定に引きずられたりします。
基準にする模試は、志望校の受験者が多く受けているものを選ぶのが原則です。志望校が最難関校なら最難関志望層が受ける模試、中堅校なら幅広い層が受ける模試。母集団が志望校の実際の受験者層に近いほど、判定の精度は上がります。
比べるなら、同じ模試の中で
複数の模試を受けている場合、判定を横並びに比べても意味のある比較にはなりません。同じ模試の中で、時系列に並べてください。9月のD判定と11月のD判定を比べる。この比較なら、母集団の性格が揃っているぶん、実態に近い情報が読み取れます。
もし「A模試ではC、B模試ではE」といった状態になっているなら、それは学力が不安定なのではなく、2つの模試の母集団が違うだけである可能性が高くなります。
4. 秋以降、判定は下がりやすくなる
この時期に特有の現象があります。実力が落ちていないのに、判定が下がるというものです。
6年生の秋以降、模試の母集団が変わっていきます。受験を予定していない層が抜けていき、残るのは実際に受験する層だけになります。夏の学習の成果が全体に出てくる時期でもあります。
周囲が伸びるぶん、同じ実力では相対的な位置が下がるということ。これは学力低下ではありません。
何が起きているかを、数字で追う
もう少し具体的に見ます。仮に9月と11月で、こういう変化があったとします。
| 時期 | 素点 | 偏差値 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 9月 | 210点 | 52 | C |
| 11月 | 212点 | 48 | D |
※数値は説明のための例です。
素点は2点上がっているのに、偏差値は4下がり、判定はCからDになっています。この子の学力は落ちていません。周囲が伸びたぶん、相対位置が下がっただけです。
ここで「下がった」と受け取って学習内容を変えると、機能していたものを壊すことになります。成績表を見るとき、偏差値と判定より先に素点を確認する習慣をつけてください。
切り分ける方法
学力が落ちたのか、母集団の変化なのか。次の2点で切り分けられます。
- 設問ごとの正答率——全体の正答率が50%を超えている問題を、前回より多く落としていないか。落としていれば実力の問題です
- 素点の推移——偏差値ではなく、生の得点が下がっているかどうか。得点が横ばいなら、母集団の変化と考えてよい場面が多くなります
ここを切り分けずに「下がった」とだけ受け取ると、手当ての方向を誤ります。母集団の変化が原因なら、やることを変える必要はありません。同じことを続けてよい、という結論が出ることもあります。
5. D判定とE判定を、同じものとして扱わない
ご相談を受けていて感じるのは、D判定とE判定が同じ扱いになっているご家庭が多いことです。「どちらも悪い判定」としてまとめられてしまいます。ただ、この2つは意味が違います。
| 判定 | 目安 | 状態 | 秋の方針 |
|---|---|---|---|
| D判定 | 約30%前後 | 届く範囲にある。埋める失点がはっきりしていることが多い | 志望校は維持し、失点の分析に集中する |
| E判定 | 20%以下 | 出題と現在地に構造的な差がある可能性 | 過去問で確認し、併願設計を組み直す |
この差を、実際の受験生の数で考えてみます。仮に同じ志望校をD判定で受験した子が100人いたとすれば、30人前後が合格していたということ。E判定100人なら20人以下。どちらもゼロではありません。ただ、30人と20人の間には、対応を変えるだけの差があります。
D判定は、統計上は3割前後が合格している帯です。ここで志望校を下げる判断は、多くの場合まだ早すぎます。秋の伸びで動く範囲にあります。
一方、E判定が複数回続いている場合は、状況が異なります。ここで確認していただきたいのは、判定そのものではなく、次の章で扱う指標です。
E判定が続いている場合に確かめること
E判定が2回、3回と続いている場合、確かめていただきたいことが2つあります。
1つ目は、志望校の合格最低点に対して何点足りないかです。50点足りないのと、15点足りないのとでは意味がまったく違います。判定は同じEでも、埋めるべき量は3倍以上変わります。
2つ目は、足りない点がどの科目のどの分野で生じているかです。1科目に集中しているなら、その科目に時間を寄せる判断ができます。全科目に分散しているなら、基礎の総量が不足している状態で、秋からの回復は難しくなります。
差を出すときは、必ず合格者最低点と比べてください。合格者平均点と比べると、実際より遠く見えます。合格に必要なのは平均ではなく最低点です。学校が公表していれば、それを使ってください。
この2つを確認せずにE判定という文字だけで判断すると、まだ届く子まで諦めることになります。逆に、構造的に厳しい状態を見落として12月まで走ってしまうこともあります。どちらも避けたい形です。
6. 判定より確かな指標がある——過去問の得点
模試の判定は、複数の学校を想定した共通問題から算出されています。志望校の実際の出題は、そこに含まれていません。
志望校に届くかどうかを見る指標としては、判定より確かなものがあります。その学校の過去問で、合格最低点にどれだけ近いかです。
模試と過去問がずれる例
実際に、こういうことが起こります。
- 模試ではD判定が続いているが、志望校の過去問では合格最低点を超えている
- 模試ではB判定が出ているのに、志望校の過去問では毎回20点足りない
前者は、模試で問われる幅広い単元より、志望校の頻出単元に力が集中しているケースです。この場合、判定を理由に志望校を下げると、かえって不利になります。
後者は、出題の相性が悪いケースです。時間配分、記述の量、特定分野の難度。何かが噛み合っていません。判定が良くても油断できない状態です。
過去問を早めに解く、もう一つの理由
過去問を解くことには、点数を測る以外の効果があります。本人が志望校を具体的に感じられるようになることです。
模試の判定は抽象的です。「D」という文字からは、何をどうすればよいかが見えません。一方、過去問で「算数の大問4が全部落ちている」と分かれば、やることは具体的になります。
そしてこれは、お子さまの気持ちにも効きます。判定が悪いままだと「自分はこの学校に向いていない」という受け取り方になりやすいのですが、「大問4が取れれば届く」と分かれば、話が変わります。目標が人格の評価から作業の話に変わるためです。
判断の順序
判断の順序はこうなります。
- まず志望校の過去問を1年分解く
- 合格最低点との差を出す
- その差が何点で、どの科目のどの分野で生じているかを特定する
- そこで初めて、志望校を維持するか組み替えるかを判断する
判定だけを見て判断しないでください。判定は学校ごとの相性を含んでいない数字です。
7. 判定が動かないとき、原因は3つに分かれる
何回受けても判定が変わらない。この状態は、原因を切り分けると手が打てるようになります。
原因1:取るべき問題を落としている
成績表の設問別正答率を見て、全体の正答率が50%を超えている問題を落としていないか確認してください。ここでの失点が多いなら、難問対策ではなく基礎の穴を埋める作業が先です。
この型が最も多く、そして最も動かしやすい状態です。埋めるべき場所がはっきりしているためです。
確認の手順を書きます。成績表の設問別データを開いて、次の作業をしてください。10分ほどで終わります。
- 全体正答率が50%以上の設問に印をつける
- そのうち、お子さまが落としている設問を数える
- その設問の配点を合計する
この合計点が、いま最も取り返しやすい点数です。20点あるなら、そこを埋めるだけで判定が1段動くこともあります。難問に手を出す前に、この作業を先にやってください。
逆に、この合計が5点以下なら、取るべき問題はすでに取れている状態です。その場合は次の原因を疑います。
原因2:時間が足りていない
大問の後半が白紙になっている場合、学力ではなく時間配分の問題である可能性があります。解く順番を変える練習に切り替えると、点数の戻りは速くなります。
白紙率の数え方も書いておきます。答案を開いて、手がまったくついていない設問がいくつあるかを数えるだけです。式が途中まででも書いてあれば、それは「解こうとした」ので白紙には含めません。
白紙が大問後半に集中しているなら、時間の問題です。一方、白紙が前半にも散らばっているなら、時間ではなくその分野をまだ学習していないか、手が出ない状態だと見ています。同じ「解けていない」でも、原因が違います。
時間の問題であれば、解く順番を変える練習が効きます。得意な大問から手をつける、あるいは各大問の(1)だけを先に一周する。この練習は1週間で効果が出ることがあります。学力を上げるより速い改善です。
原因3:志望校の出題と、模試の出題がずれている
模試の判定が動かないのに、志望校の過去問では点が取れている。この場合、模試のほうが実態を映していません。志望校の出題に必要な力は伸びているのに、模試ではそれが測られていないということ。
この3つ目を見分けるには、模試と過去問の両方を並べる必要が出てきます。模試だけ、あるいは過去問だけを見ていると気づけません。秋に一度、両方の結果を横に並べて眺める時間を取ってください。30分あれば十分です。
この3つは、それぞれ手当てが違います。まとめて「判定が悪い」と扱うと、どれにも効かない対策を続けることになります。
まだ申し込む段階ではない、という方へ
お子さまの学年と、いま気になっていることを一言だけお送りいただければ、ご返信します。お申し込みフォームのご入力は必要ありません。ご相談だけで終わっても問題ありません。
LINEで相談するProチューターズネットワーク公式LINE/ご相談は無料です
8. 志望校を組み替える判断の期限
判定が思わしくないまま秋が進むと、いつ判断するかという問題が出てきます。
期限を決めておいてください。期限がないまま迷い続けることが、最も学習を止めます。「まだ伸びるかもしれない」と「そろそろ決めなければ」の間で揺れている間、演習の対象が定まりません。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 9月 | 志望校の過去問を1年分解き、合格最低点との差を出す |
| 10月 | 差の内訳を特定し、埋める作業に集中する |
| 11月 | 志望校を維持するか組み替えるかを決める |
| 12月 | 出願/決めた学校の過去問演習に絞る |
11月に置く理由は、演習の時間を確保するためです。志望校を組み替えると、過去問の対象校も変わります。12月に変更すると、新しい学校の過去問を解く時間がほとんど残りません。
期限を決めておくと、迷いが減る
期限を決める効果は、判断の質だけではありません。それまでは迷わなくてよくなることのほうが大きいかもしれません。
「11月の模試を見て決める」と先に決めておけば、9月と10月は迷う必要がありません。目の前の学習に集中できます。逆に期限がないと、模試のたびに判断を迫られ、そのたびに家庭の空気が重くなります。
お子さまにも伝えておいてください。「11月までは、いまの志望校で進める」と言葉にしておくと、途中の判定に一喜一憂しにくくなります。決めたことを言葉にすること自体が、秋の安定につながります。
組み替えるときに、どこを見るか
実際に組み替える判断をする場合、代わりの学校をどう選ぶか。判定の帯を1つ下げるという選び方は、実は精度が高くありません。
見ていただきたいのは出題の相性です。同じ偏差値帯でも、記述が多い学校と選択式が中心の学校、算数の難度が高い学校と理社で差がつく学校があります。お子さまが取れている分野で勝負できる学校を選べば、判定以上の結果が出ることがあります。
具体的には、候補校を2〜3校選んで、それぞれ1年分ずつ過去問を解いてみてください。1校あたり半日で済みます。点数の出方が学校によってかなり違うことに気づかれるはずです。この差は、判定の表からは見えません。
コース制のある学校では、同じ学校でもコースによって求められる得点帯が変わります。学校を変えずにコースを変えるという選択肢もありますので、募集要項を確認してください。
組み替えは「下げる」ことではない
言葉の問題ですが、大事な点です。志望校を組み替えることを「下げる」「諦める」と表現すると、ご家庭にもお子さまにも重く響きます。
実際にやっているのは、持ち時間と現在地に合った目標に置き直す作業です。通える学校に合格することが目的であって、特定の1校に入ることが目的ではないはずです。この前提を、判断の前にご家庭で共有しておいてください。
9. 関西の日程だからこそ、判断が早くなる
関西のご家庭には、もう一つ考慮すべき事情があります。
関西圏の中学入試には統一解禁日があり、例年1月中旬に設定されています。首都圏の解禁が2月1日ですので、関西の受験生は本番までの持ち時間が約2週間短くなります。
※日程は各校の募集要項で最終確認をお願いします。
この差は、判断の期限にそのまま効きます。首都圏の情報をもとに「12月まで様子を見よう」と考えると、関西では出願に間に合わないことがあります。
関西圏外の学校が12月から1月上旬に関西で入試を実施することがあります。前受けとして受験する場合、実質的な最初の本番は12月です。この日程を入れているご家庭では、判断の期限はさらに前倒しになります。
逆算してみる
実際に数えてみます。統一解禁日を1月中旬として、8月10日からの残り日数はおよそ160日、週にして23週です。
| 起点 | 統一解禁日までの週数 |
|---|---|
| 8月10日 | 約23週 |
| 9月1日 | 約20週 |
| 11月1日 | 約11週 |
| 12月1日 | 約7週 |
11月に志望校を確定させるとして、そこから本番まで約11週です。この11週で、決めた学校の過去問を解き、直しをして、抜けを埋める。決して長い時間ではありません。
だからこそ、11月という期限に意味があります。12月に変更すると、残りは7週になります。4週の差は、過去問4年分の演習と直しに相当します。
秋の模試の数も限られる
持ち時間が短いということは、判断材料になる模試の回数も少ないということ。「あと何回、判定を見られるか」を数えておいてください。残り2回なら、その2回で決めることになります。回数が見えていると、迷う時間が短くなります。
併願校を先に固めておく
関西の日程では、統一解禁日に複数の学校が集中します。1日目に受ける学校、2日目、3日目——この組み方は、志望校の判定が固まる前に検討を始めておいてください。
とくに、第一志望と同じ日に実施される学校を把握しておいてください。同日実施の学校は同時に受験できませんので、そこで選択が発生します。この整理を11月からやろうとすると、時間が足りません。
判定が思わしくない場合ほど、併願の設計が効いてきます。合格を1つ確保した状態で第一志望に臨めるかどうかで、当日の心理状態が変わります。これは得点に直結する要素です。
10. 結果を本人に、どう渡すか
判定の話は、保護者だけで完結しません。成績表はお子さま本人も見ます。
点数と判定の話から入らない
成績表を渡すとき、最初に口にする言葉を決めておいてください。おすすめは「どの問題は取れるはずだったと思う?」です。
この問いから始めると、本人が自分で答案を見返すことになります。同じ紙が、反省文から作戦表に変わります。逆に「またD判定か」から入ると、その紙は見たくないものになり、次から隠されるようになります。
成績表を見せない、という選択について
判定が悪いとき、お子さまに成績表を見せないという判断をされるご家庭があります。傷つけたくないというお気持ちからのことだと思います。
ただ、この方法はあまり勧められません。理由は2つあります。
1つは、本人がだいたい察していることです。手応えは自分がいちばんわかっています。見せてもらえないという事実のほうが、数字より重く受け取られることがあります。
もう1つは、次にやることを本人が決められなくなることです。どこを落としたかを知らなければ、何を直せばよいかもわかりません。結果として、指示されたことをやるだけの状態になります。秋以降、この差は大きく効いてきます。
見せるかどうかより、どう見せるかを工夫してください。判定の欄を先に見せず、設問別の正答率のページから開く。それだけでも、受け取り方は変わります。
判定は評価ではない、と先に伝えておく
この記事の第1章と第2章の内容を、お子さまにも共有してください。判定は統計値であって、自分への評価ではない。この理解があるかどうかで、結果の受け取り方が変わります。
「D判定でも3割は受かっている」「80%偏差値は100人中80人という意味で、自分の合格率ではない」。この2つを知っているだけで、本人が数字に潰されにくくなります。
言葉にしておきたいこと
逆に、伝えておくと効く言葉もあります。
1つは「この判定は、あなたの合格率じゃない」という事実です。第2章の内容をそのまま伝えてください。100人中80人という話を知るだけで、数字の重さが変わります。
もう1つは「11月までは、この志望校でいく」という宣言です。期限が示されると、それまでの期間は迷わなくてよくなります。判定が出るたびに「まだ大丈夫か」と探る状態から抜けられます。
3つ目は「取れるはずだった問題が何点分あったか」を一緒に数えることです。これは慰めではなく作業です。数えた結果が20点なら、それは事実として次に取り返せる点数です。慰めより、事実のほうが本人を支えます。
言わないほうがよいこと
- 「このままでは間に合わない」——本人がいちばんわかっています
- 「◯◯くんはA判定だって」——比較は、疲れている時期には意欲を折る方向にしか働きません
- 「もっと早くから」——過去は変えられません。変えられるのは残りの週数だけです
11. この分析を、誰がやるか
ここまで、判定ではなく具体的な数字から決める方法を書いてきました。ただ、その作業を誰がやるのかという問題が残ります。
正直に申し上げると、この記事に書いた手順の多くは、ご家庭だけでも進められます。設問別正答率を数えることも、過去問を解いて合格者最低点と比べることも、道具は成績表と過去問だけです。まずはご自身でやってください。それで方向が見えるなら、それがいちばん良い形です。
そのうえで、難しくなる場面があります。
ご家庭だけだと精度が出にくい部分
失点を数えるところまでは、誰でもできます。難しいのはその次です。
ある1問を落としたとき、それが「解法を習っていない」のか「習ったが定着していない」のか「時間が足りなかった」のか「単純なミス」なのか。答案1枚からこれを判別するには、同じ学校の答案を何十枚も見た経験が要ります。
これは保護者の能力の問題ではありません。見てきた答案の枚数の問題です。比較する対象を持っているかどうかで、判別の精度が変わります。
もう一つが、埋めるのに何週かかるかの見積もりです。「この単元の穴を埋めるには3週間」という感覚は、実際に何人もの生徒で同じ作業をした経験からしか出てきません。ここを見誤ると、11月の判断そのものがずれます。
塾の面談で扱える範囲
塾に相談するという選択肢もあります。多くの受験生を見ている経験からの助言には、当然ながら重みがあります。
ただ、集団塾の面談で扱える情報には構造的な限界があります。1人あたりの面談時間の中で、答案を1枚ずつ開いて設問ごとに分析するのは難しいのが実情です。多くの生徒を抱えている以上、これは塾の姿勢の問題ではありません。
したがって塾の助言は「統計的にはこの判定だとこうなることが多い」という情報として受け取り、お子さま個別の判断材料は別に用意しておくのが現実的です。
当ネットワークの教師ができること
ここからは、私たちが提供できるものを具体的に書きます。
中学受験の指導実績がある教師
23名が登録しています
うち8名は、灘・甲陽学院・東大寺学園・洛南・西大和学園・大阪星光学院・神戸女学院・四天王寺などの最難関校に生徒を送り出した指導実績を持っています。
在籍状況は時期により変わります。担当できる教師がいるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。
当ネットワークに登録しているのは、プロの家庭教師のみです。学生講師は在籍していません。指導経験を職業として積み重ねてきた教師が、これまでに何十枚、何百枚と答案を見てきています。
その経験から、次のことができます。
- 答案から失点の性質を判別する——解法未習・定着不足・時間切れ・単純ミスのどれかを切り分けます
- 志望校の出題傾向から、埋める範囲を絞る——出ない単元に時間を使わずに済みます
- 埋めるのに何週かかるかを見積もる——11月の判断材料になります
- 模試と過去問のずれを読む——判定が悪くても届いている状態を見落としません
- 志望校を組み替える場合の候補を、出題の相性から挙げる——偏差値帯を1つ下げるより精度が上がります
それでも、一度お話を聞かせてください
ここまで読んで、「うちの子の判定は、どちらの意味なのか」と思われたかもしれません。
ご家庭だけで抱えていると、「これは相談していいことなのか」を決めるところから始まります。そこで数週間が過ぎるのが、いちばん惜しい。
学年と、いま気になっていることを一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。家庭教師以外の選択肢をお伝えすることもあります。
力になれることがあるなら、なりたいと思っています。
合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。
できないこと
判定を直接上げることはできません。できるのは、失点の中身を特定して埋める順番を決めるところまでです。合格や短期間での大幅な伸びをお約束することもできません。ご希望の条件によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
そのうえで申し上げると、答案を見て失点の中身を特定する作業は、経験のある人間が見れば1時間ほどで終わります。この1時間で秋の3か月の方向が決まるなら、一度誰かに見てもらう価値はあると考えています。
無料体験授業では、まずこの現在地の確認から入ることがほとんどです。成績表と過去問の答案をお持ちいただければ、その場で失点の内訳をお伝えできます。その結果、家庭教師を入れる必要がないと判断される場合は、そうお伝えします。
12. 秋にやることを、判定から決めない
最後に、この記事で最もお伝えしたいことを書きます。
秋にやることは、判定から決めないでください。判定は現在地を示す指標であって、次の一手を教えてくれる情報ではありません。
判定が悪いから量を増やす。判定が悪いから教材を変える。判定が悪いから志望校を下げる。いずれも、原因の特定を飛ばした対応です。
「判定が良い」ときにも同じことが言える
ここまでD判定・E判定の話をしてきましたが、逆の場合にも同じ原理が働きます。
A判定やB判定が出ていても、それは志望校との相性を含んでいない数字です。模試で高い偏差値が出ているのに、志望校の過去問では合格最低点に届かない。この状態は実際に起こります。
とくにA判定が続いていると、志望校の対策より模試の対策に時間を使ってしまうことがあります。ところが本番で解くのは志望校の問題です。模試で測れる力と、その学校で問われる力は、重なってはいても同じではありません。
判定が良いご家庭ほど、過去問の確認が後回しになりがちです。9月や10月に一度解いておけば、ずれがあった場合に対応する時間が残ります。判定は、良くても悪くても、志望校との距離を教えてくれる数字ではありません。
なぜ判定から決めてしまうのか
判定から決めたくなる理由は、はっきりしています。判定は簡単だからです。アルファベット1文字を見るだけで済みます。
一方、右の列に挙げるような材料は、成績表を開いて設問ごとに数える作業が要ります。過去問を解いて採点する時間も要ります。忙しいご家庭ほど、簡単なほうに流れるのは自然なことです。
ただ、この作業は1回やれば30分ほどで終わります。そして一度やると、そこから3か月分の方針が決まります。時間対効果としては、秋の学習の中で最も高い部類に入ります。
もし時間が取れないなら、設問別正答率の確認だけでも先にやってください。正答率50%以上の失点を数えるだけなら10分です。それだけでも、次にやることが1つは決まります。
やることを決める材料
| 判定から決めない | これで決める |
|---|---|
| D判定だから量を増やす | 正答率50%超の失点数から、埋める範囲を決める |
| E判定だから志望校を下げる | 過去問と合格最低点の差から判断する |
| 判定が動かないから教材を変える | 白紙率を見て、時間配分の問題かを切り分ける |
| 判定が良いから安心する | 過去問の得点で確認する |
左の列に共通しているのは、判定という1つの数字だけを見て次の行動を決めていることです。情報量が少ないぶん、打つ手が大雑把になります。量を増やす、教材を変える、志望校を下げる——いずれも大きな変更で、外したときの損失も大きくなります。
右の列は、すべて具体的な数字です。判定という1文字のアルファベットより、こちらのほうが次にやることを教えてくれます。
まとめ:判定は現在地であって、結論ではない
この記事の要点
- 判定はお子さま個人の合格率ではなく、母集団の統計から算出された値である
- 80%偏差値は「合格可能性80%」ではなく「その偏差値の子100人中80人が合格した」という意味
- 50%偏差値の帯からも半分は合格している。D・E判定からの合格は毎年ある
- 模試が違えば同じ学力でも判定が変わる。比べるなら同じ模試の中で時系列に
- 秋以降は母集団の変化で判定が下がりやすい。素点と正答率で切り分ける
- D判定(約30%)とE判定(20%以下)は別物として扱う
- 志望校に届くかどうかは、判定より過去問と合格最低点の差のほうが確か
- 判定が動かない原因は、取るべき問題の失点・時間配分・出題のずれの3つに分かれる
- 志望校を組み替える判断は11月まで。関西は首都圏より約2週間早い
- 失点の性質を判別するには答案を見た経験が要る。当ネットワークには最難関校の指導実績を持つ教師が8名在籍している
- 秋にやることは判定からではなく、具体的な数字から決める
判定は、いまどこにいるかを教えてくれる数字です。どこへ行けるかを決める数字ではありません。そして、いまどこにいるかは、これから変えられます。
この時期、成績表を前にして眠れない夜を過ごされる保護者の方は少なくありません。お子さまの努力を見てきたぶん、その紙に書かれた1文字が重く感じられるのだと思います。
ただ、その1文字は過去の受験生の統計から機械的に算出された値です。お子さまの伸びしろも、志望校との相性も、残り23週で埋められる範囲も、そこには入っていません。
D判定やE判定が並んだ成績表を前にすると、そこで結論が出たように感じられます。ただ、その紙に書かれているのは統計であって、お子さまの可能性ではありません。実際に見るべきなのは、志望校の過去問との距離と、その差の中身です。
いまの判定からどこまで届くのか、どこを埋めれば差が縮まるのか。判断に迷われる場合は、無料体験授業でご相談ください。成績表と過去問の結果をうかがったうえで、合いそうな教師とのお引き合わせをご案内します。
よくある質問
判定ではなく、
過去問との距離を一緒に見ます
成績表と過去問の結果から、埋めるべき範囲を整理します。
まずは現状をお聞かせください。
入会金・解約金なし|プロ家庭教師のみ登録制|教師の変更も無料