1. 結論:化学は「1科目」ではなく、性質の違う3分野の集合

化学の相談を受けたとき、最初に確認するのは「どの分野で止まっていますか」という一点です。数学や英語なら「苦手」という言葉である程度状況が伝わりますが、化学の「苦手」はほとんど情報を持ちません。理由は、1科目の中に性質のまったく違う3つの領域が同居しているからです。

分野性質つまずくと現れること
理論化学数学に近い。量の関係を式で扱う計算問題で手が止まる。答えが出ても検算できない
無機化学知識の整理。覚える対象が多い覚えては忘れるを繰り返す。混同が多い
有機化学推理に近い。条件から構造を絞る問題文は読めるが、何から手をつけるか決まらない

この3つは、必要な力がそれぞれ違います。したがって対策も、かける時間も、外部の手を借りるべきかどうかも分野ごとに判断すべきです。「化学全体を見てください」という依頼の仕方が費用の面で不利になるのは、このためです。

この構造は、裏を返せば強みにもなります。分野ごとに性質が違うということは、苦手な分野が一つあっても、他の分野で得点を作れるということでもあります。数学のように積み上げが一直線ではないぶん、部分的な立て直しが効きやすい科目なのです。

3分野は独立していないという厄介さ

もう一つ押さえておきたいのは、3分野が完全に独立してはいないという点です。無機化学の反応は、理論化学で扱う酸と塩基の考え方や酸化還元の考え方の上に成り立っています。有機化学の計算問題も、量の扱いは理論化学と同じです。

理論化学に穴があると、無機でも有機でも同じ穴に足を取られるということ。無機の暗記が苦しいと訴える生徒の原因が、実は理論の理解不足にあった——こうしたケースは珍しくありません。表面に出ている症状と、原因の場所が一致しないのが化学の難しさです。

高校化学の3分野の性質の違い 理論化学は数学に近く、無機化学は知識の整理、有機化学は推理に近いという性質の違いを示した図。 「化学が苦手」では対策が立たない 理論化学 数学に近い 量の関係を 式で扱う つまずくと 計算で止まる 無機化学 知識の整理 覚える対象が 多い つまずくと 混同が増える 有機化学 推理に近い 条件から 構造を絞る つまずくと 手が動かない 3分野は独立していない。土台は理論化学 無機が苦しいとき、原因が理論にあることは珍しくない

図|同じ1科目でも必要な力が違う。どの分野で止まっているかを先に切り分ける。

2. 学校の進度と入試日程のギャップ

化学には、学習計画の面でもう一つ固有の事情があります。学校で全範囲を習い終わるのが遅いという問題です。

習い終わる前に入試が来る構造

学校によって差はありますが、化学は高2から本格的に始まり、有機化学の後半に入るのが高3の後半になるカリキュラムも珍しくありません。一方で、共通テストは1月中旬、国公立の二次試験は2月下旬です。

単純に並べると、最後に習う分野ほど、演習に充てられる期間が短くなるという構造になります。有機化学を苦手にする受験生が多い理由の一つは、内容の難しさよりも、単純に演習量が不足しやすいことにあります。

化学は「学校の進度に任せていると、間に合わない可能性がある科目」です。どこかの時点で、学校より先に進む判断が要る——これが他科目との大きな違いです。

中高一貫校と、それ以外で事情が変わる

中高一貫校では、理科の履修も前倒しになっている場合があります。この場合は演習期間を確保しやすい一方、進度が速いぶん一度離脱すると戻りにくいという別の問題が出ます。数学でも同じ構造が起こることは、中高一貫校の数学についていけないで詳しく扱いました。

一般の高校に通っている場合は、逆に「学校の授業だけでは入試までに演習が足りない」という形で出ます。どちらの場合も、学校のペースをそのまま自分のペースにしてよいかを、高2のうちに一度確認しておくほうが確かです。

科目選択の段階で、負荷はほぼ決まっている

もう一つ、時間の使い方を左右するのが理科の科目選択です。多くの高校では高1の途中で文理を決め、理系はそこから理科の科目を選びます。この選択の時点で、その後2年間の負荷の形はおおよそ決まります

化学は理系の多くの学部で必要になるため、選ばざるを得ない場面が多い科目です。だからこそ、選んだあとに「合う・合わない」で悩むより、どう付き合うかを早めに設計するほうが現実的です。志望学部が固まっていない段階でも、化学の土台づくりは無駄になりにくい投資といえます。

3. 理論化学で止まる——量の扱いと単位

ここから分野別に、止まり方の中身を見ていきます。まずは理論化学です。

物質量の理解が「公式の暗記」で止まっている

理論化学の最初の関門が物質量です。ここでつまずく生徒の多くに共通するのは、公式を覚えて数字を当てはめる形で処理していることです。単純な問題ならこれで正解にたどり着けます。

溶液の希釈が絡む、反応が複数段階になる、気体の条件が変わる——こうした問題になると、どの数値をどこに入れるかが決まりません。公式の形しか覚えていないため、状況が変わると対応できないのです。

濃度の表し方が複数あることでの混乱

理論化学でもう一つ多いのが、濃度をめぐる混乱です。質量パーセント濃度、モル濃度、質量モル濃度——表し方が複数あり、問題によって使い分けがが要ります。それぞれが「何あたりの、何の量なのか」を押さえていないと、変換の場面で必ず詰まります。

ここも、単位を書く習慣があれば自力で整理できる部分です。逆に、濃度の変換で毎回つまずいている場合は、物質量の理解そのものが固まっていないサインと考えたほうがよいでしょう。一段上流に戻る判断がが要ります。

単位を書くだけで、見える景色が変わる

指導の現場でまず直すのは、途中式の書き方です。数値だけを並べるのではなく、すべての数値に単位を添えて書くように変えます。単位が見えていれば、掛けるべきか割るべきかが式の形から判断できるようになります。

これは小さな習慣に見えますが、効果は大きいものです。単位の整合が取れているかを自分で確認できるようになると、答えを出したあとに検算する手段を持てます。正解かどうかを自分で判定できる状態になることが、独学を回すための前提になります。

理論化学でつまずいているサイン

  • 途中式に単位が書かれていない
  • 計算用紙の余白に数字が散らばっていて、どれが何か本人も追えない
  • 出てきた数値が現実的な大きさかどうかを確認していない
  • 解説を読めば理解できるが、次に同じ形式で解けない

4つ目が特に重要です。解説を読んで納得できるのに再現できないのは、理解の問題ではなく手順が定着していない状態です。この場合に必要なのは、新しい参考書ではなく、同じ型の問題を書き方ごと反復することです。

4. 無機化学で止まる——暗記量ではなく整理の問題

無機化学は「とにかく覚えることが多い分野」と受け止められがちです。色、沈殿、気体の発生方法、工業的製法——たしかに項目数は多くなります。

バラバラに覚えるから、量が膨れ上がる

ただ、苦しくなっている生徒を見ていると、量そのものより覚え方の構造に原因があることがほとんどです。一つひとつを独立した事実として記憶しようとすると、項目数がそのまま負担になります。

無機化学の内容の多くは、理論化学で扱う原理の上に乗っています。周期表の並びが持つ規則性、イオン化傾向の順序、酸と塩基の強弱、酸化還元の考え方——これらと結びつけて整理すると、純粋に丸暗記が必要な部分はかなり絞り込めます

覚え方負担試験での再現性
項目を個別に暗記する大きい類似項目と混同しやすい
理論と結びつけて整理する小さい忘れても原理から再構成できる
語呂だけで覚える中程度順序は出るが、意味を問われると答えられない

語呂合わせが悪いわけではありません。順序を思い出す道具としては有効です。ただ、語呂だけに頼ると「なぜそうなるか」を問う設問に対応できません。道具として使い、理由は別に押さえておく——この二段構えが安全です。

実験にまつわる知識は、場面とセットで覚える

無機化学では、気体の発生方法や捕集方法、乾燥剤の選び方といった実験に関わる知識も問われます。これらを文字情報だけで覚えようとすると、似た項目が混ざりやすくなります。

有効なのは、装置の図や実験の場面とセットで記憶することです。なぜその捕集方法なのか、なぜその乾燥剤が使えないのか——理由まで押さえておくと、初見の設定で問われても対応できます。入試では実験の設定を変えて問う出題が増えているため、この覚え方の差はそのまま得点差になります。

無機が苦しい生徒は、理論を疑う

先ほど触れたとおり、無機で苦戦している生徒の原因が理論にあることは多くあります。沈殿が生じる条件の意味がつかめない、気体の発生方法の理屈がわからない——こうした状態は、酸塩基や酸化還元の理解が固まっていないサインです。

この場合、無機の暗記を強化しても解決しません。上流にあたる理論に戻るほうが、結果的に速いという判断になります。この見極めは、答案とノートを見ればある程度つきます。

5. 有機化学で止まる——構造決定には手順がある

有機化学、とくに構造決定の問題は「パズルのようで、どこから手をつけていいかわからない」と言われます。実際には、ほとんどの構造決定は決まった手順で進められます

手順が決まっていることを知らないまま解いている

構造決定の問題では、与えられた情報が段階的に構造を絞り込むように配置されています。分子式から不飽和度を求めて骨格の見当をつける、検出反応の結果から含まれる官能基を特定する、分解や生成の情報からつながり方を確定する——大まかにはこの流れです。

この手順を知らずに解くと、目に入った情報から場当たり的に手をつけることになります。すると、途中で行き詰まったときに戻る場所がわかりません。手順が決まっていると知っているかどうかだけで、正答率は大きく変わります

覚えるべき反応は、思ったより多くない

有機化学は暗記量が多いという印象を持たれがちですが、構造決定で使う検出反応の種類はそれほど多くありません。どの官能基があるとどの反応が起こるか、という対応関係を整理してしまえば、あとはその組み合わせです。

むしろ差がつくのは、その対応関係を「問題を読みながら即座に引き出せるか」です。知識としては知っているのに使えない状態は、整理の仕方に原因があります。手元に一覧を作り、問題を解きながら参照する回数を減らしていく——この進め方が近道です。

手を動かして書き出す訓練が要る

もう一つ、有機で差がつくのは「書き出す」習慣です。頭の中だけで構造を組み立てようとすると、情報量が増えた瞬間に処理しきれなくなります。わかったことを紙の上に順に書き出していけば、残った可能性が見えてきます。

この作業は、解説を読むだけでは身につきません。自分で書き、詰まった箇所を指摘してもらう往復が要ります。有機化学が、外部の手を借りる価値が最も高い分野とされるのは、この性質によります。

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6. どの分野で止まっているかを見分ける

ここまでの内容を、家庭で判別できる形に整理します。用意するのは、直近の模試と定期テストの答案です。

答案に現れる状態止まっている場所優先すること外部の手
計算問題だけ落ちている理論途中式の書き方の修正短期で足りる
知識問題で失点が集中無機(または理論)整理の枠組みを作り直す初期だけ必要
構造決定が白紙有機手順の型を身につける効果が出やすい
分野を問わず時間切れ演習量問題数の確保自習の設計が主
定期テストは取れるが模試で落ちる知識の使い方初見問題での運用練習診断の価値が高い

最後の行について補足します。学校の定期テストは範囲が限定されるため、直前の詰め込みでも得点できることがあります。一方、模試や入試では複数分野をまたぐ問題や、初めて見る設定の問題が出ます。この2つのギャップが大きい場合、覚えた知識を使う練習が不足している状態です。

見るのは判定ではなく、設問別の正誤

模試が返ってきたとき、偏差値と判定に目が行きがちです。ただ、分野の特定に使えるのは設問別の正誤が並んだ一覧のほうです。どの大問で落としているか、その大問がどの分野かを確認すれば、それだけで当たりがつきます。

あわせて見ておきたいのが、正答率の高い設問を落としていないかです。多くの受験生が取れている問題を落としている場合、知識の不足より処理の問題である可能性が高くなります。難問が解けないことより、取れるはずの問題を落とすほうが合否への影響は大きいのが実情です。

保護者の方が確認できる3つの質問

専門的な知識は要りません。この3つを聞くだけで、どの章の話なのかがかなり絞れます。ここまで整理してから相談すると、最初の1回から具体的な話ができます。

7. 独学で回せる分野と、人の目が要る分野

費用の話に入ります。化学は3分野の性質が違うため、分野ごとに「自習で回せるか」の答えが変わります。ここを分けるだけで、必要な指導時間はかなり減ります。

分野・作業独学で回せるか理由
無機の知識の反復回せる正誤の判定が自分でできる
理論の計算演習(型が身についた後)回せる答え合わせで確認できる
理論の途中式の書き方の修正難しい自分の癖は自分では見えない
無機を理論と結びつける整理条件つき枠組みを最初に示してもらえれば回せる
有機の構造決定の手順づくり難しい詰まった箇所の指摘が必要
記述答案の減点箇所の把握難しい模範解答と見比べても判断がつきにくい

この表の使い方はシンプルです。「難しい」と「条件つき」の行だけを外部に出す。「回せる」の行に指導料をかけるのは、費用対効果の面で得策ではありません。

「全部見てもらう」が高くつく理由

全分野を任せると、指導時間は自習で回せる部分にも配分されます。無機の反復に90分の一部を使うのは、時間単価の面で見合いません。限られた指導時間を、自分では直せない部分だけに使う——この発想に立てるかどうかで、同じ月謝でも得られるものが変わります。

依頼するときの伝え方

実際の依頼では、こう伝えるだけで十分です。「化学の理論の計算の書き方と、有機の構造決定を優先してください。無機の暗記は自分で進めます」——この一文があると、初回から本題に入れます。

逆に「化学が苦手なので見てください」という伝え方だと、状況の把握から始まり、最初の数回が使われます。範囲を絞る効果は、科目を絞る場合と同じです。考え方は家庭教師は何科目頼むべき?費用対効果で決める科目の選び方で整理しています。

8. 共通テストと二次・私大では必要な力が違う

もう一つ、対策を分けて考えたい軸があります。試験の種類です。

観点共通テスト二次・私大の記述
問われ方設定を読み取って選ぶ過程を書いて示す
時間の余裕取りにくい比較的取りやすい
失点の主因時間切れと読み違い導出過程の説明不足
必要な訓練解く順序と時間配分答案の書き方

共通テストは「解く順序」で変わる

共通テストの化学は、問題文に与えられた設定を読み取る作業が多くなります。ここで時間を使いすぎると、後半の得点しやすい設問に手が回りません。最初の大問から順に解く必要はないという当たり前のことが、本番では抜け落ちます。

自分にとって処理の速い分野から着手する、時間のかかる計算は後回しにする——こうした運用は、過去問や模試で試しながら決めていくものです。知識の量ではなく段取りの問題なので、比較的短期間で改善が見込めます。

記述式は、書き方で点が動く

一方、二次試験や私大の記述式では、答えが合っているだけでは満点になりません。どの関係式を使い、どの数値をどう処理したのかが読み取れる形になっている必要が出てきます。

ここは独学でいちばん見えにくい部分です。自分の答案が採点者にどう読まれるかは、自分では判断できません。添削を受ける価値が最も高いのがこの領域で、逆にいえば添削だけを目的に依頼する使い方も成立します。

私大は大学ごとの差が大きい

私立大学を受験する場合は、もう一段の確認が要ります。私大の化学は、大学によって出題の形式も難易度の幅も大きく異なります。計算中心のところもあれば、知識問題の比重が高いところもあります。

志望校の過去問を1年分でも早めに見ておく価値があります。求められるものが分かれば、限られた時間をどこに使うかの判断ができます。併願校まで含めて傾向がばらつく場合は、共通して問われる分野から固めるのが安全です。

9. 理科の比重が高い受験をする場合

医学部や薬学部、理工系の学部を志望する場合、化学の位置づけが変わります。

1科目の穴が合否に直結する

理科2科目が必要な受験では、化学は得点の柱の一つになります。理科の比重が高い入試では、1科目の失点をほかで埋めるのが難しくなるという性質があります。

化学に穴を抱えたまま高3の後半に入る状態は避けたいところです。高2の段階で理論に不安がある場合は、その時点で手を打つほうが総額は小さくなります。医学部受験における科目別の考え方は医学部受験に必要な個別指導戦略で扱っています。

共通テストだけで化学が必要な場合

国公立の文系や、看護・医療系の一部では、共通テストでのみ化学(または化学基礎)が必要になる場合があります。この場合、二次試験の記述対策は不要ですから、やるべきことは大きく絞れます

必要なのは、出題範囲の基本事項を取りこぼさず押さえることと、時間内に処理しきる練習です。記述の答案作成やハイレベルな計算に時間を割く必要はありません。志望校が求める水準を確認せずに一律の対策を進めると、他科目に回すべき時間まで使ってしまいます。どこまでやるかを決めることも、立派な戦略です。

物理・生物との組み合わせで負荷が変わる

理科のもう1科目が何かによって、化学に割ける時間も変わります。物理を選んでいる場合は計算の負荷が重なり、生物を選んでいる場合は暗記の負荷が重なります。

この配分は個別に考えるしかありません。ただ一つ言えるのは、2科目の負荷が同じ種類で重なっている場合、時期をずらすことで負担を平準化できるということ。同時に山場を迎えない設計にしておくと、直前期が楽になります。

10. 学年・時期別のロードマップ

ここまでを時系列にまとめます。学校の進度により前後しますので、目安としてご覧ください。

時期この時期の課題打ち手
高1〜高2前半理論化学の土台づくり物質量と単位の扱いを型として固める
高2後半無機に入り、量が増える理論と結びつけた整理の枠組みを作る
高3前半有機に入る。範囲が終わらない不安が出る学校より先に有機の全体像を通す
高3夏〜秋演習期。分野横断の問題に触れる過去問で頻出分野を特定し、優先順位を決める
高3冬共通テストと二次の両立時間配分の訓練と、記述の添削に絞る

※学校のカリキュラムによって履修時期は変わります。ご自身の学校の進度と照らして調整してください。

夏休みは「未習分野を通す」のに向く

高3の夏休みは、まとまった時間が取れる最後の機会になります。この期間の使い方として化学で有効なのは、まだ習っていない分野を先に通しておくことです。学校が再開してから初めて触れるのと、一度通した状態で授業を受けるのとでは、定着の度合いが変わります。

反対に、夏休みに全分野を均等に復習しようとすると、どれも中途半端になりやすくなります。優先順位をつけて、2つまでに絞る。夏の過ごし方の考え方そのものは学年を問わず共通で、勉強量より生活リズムが合否を分けるでも触れています。

いちばん効く時期は、高2後半から高3前半

この表のなかで投資効率が高いのは、高2後半から高3前半です。理由は2つあります。理論の穴をこの時期に埋めれば、無機と有機の学習が軽くなること。そして、有機を学校より先に通しておけば、演習期間を確保できることです。

逆に、高3の秋以降に全範囲の立て直しを始めるのは、時間的にかなり厳しくなります。その場合は志望校の頻出分野に絞る判断が必要です。手をつけない分野を決めるのも戦略の一部です。

11. 費用を抑える——分野を絞り、期間を区切る

化学の指導を依頼する場合の、現実的な費用感を整理します。

目的回数の目安月の投資感抑えるための工夫
理論の型づくり(高1・高2)月2〜4回12,000〜24,000円単元を指定し、身についたら終了する
無機の整理の枠組みづくり月2〜3回12,000〜18,000円枠組みを作る初期だけ依頼する
有機の構造決定(高3前半)週1回90分24,000〜30,000円3か月と期間を区切る
記述答案の添削(高3後半)週1回90分24,000〜30,000円添削に絞り、演習は自習で回す

※指導料を1時間4,000〜5,000円と仮定した場合の目安です。実際の指導料は教師ごとに異なり、プロフィールに明記しています(費用について)。

ここで注目していただきたいのは、すべての行に「終わり」が設定されている点です。化学は分野ごとに目的が立てやすいため、期間を区切った依頼と相性がよい科目です。目的が達成できたら一度終了し、次の分野で必要になったら再開する。この使い方ができると、年間の総額は想像より小さく収まります。

月謝以外の費用まで含めて比べる

比較の際は、指導料以外の費用も確認してください。入会金、毎月の管理費、教材の一括購入といった項目が加わる料金体系があります。とくに教材の一括購入は、途中で解約した場合の扱いが問題になりやすい部分です。

契約前に確認したいのは「1年間続けた場合の総額」「指導料以外に毎月かかるもの」「途中でやめたときの扱い」の3点です。高校生全体の費用構造は高校生の家庭教師を安く使う方法|相場と予算ラインを徹底解説、1時間あたりの相場は家庭教師の1時間相場はいくら?にまとめています。

12. 映像授業・集団授業・個別指導の使い分け

化学の学習手段は複数あります。どれが優れているという話ではなく、担える役割が違います。

手段得意なこと担いにくいこと向いている状況
映像授業未習分野を先に通す手元の書き方の修正自分で計画を回せる
集団授業演習量と入試情報個別の詰まりへの対応標準的な進度に乗れている
個別指導塾質問の場と進捗管理1コマの時間配分に制約学習の管理がほしい
家庭教師つまずきの特定と添削演習量の確保原因の特定が必要

化学の場合、「未習分野を通す」役割は映像授業が担いやすいという特徴があります。学校より先に有機の全体像を見ておきたい、という目的なら、費用は大きく抑えられます。

一方で、映像授業を見ただけでは書けるようになりません。インプットは映像や集団授業、書いたものの点検は個別——この分担にすると、費用と効果のバランスが取りやすくなります。塾との併用時の総額の考え方は塾と家庭教師の併用は月いくら?にあります。

参考書は増やさないほうがよい

手段を検討するとき、あわせて注意したいのが教材です。化学は市販の参考書が充実しているぶん、「これが良いらしい」と買い足しやすい科目でもあります。ただ、手をつけない本が増えるだけになるケースがほとんどです。

基本的には、学校で配布された問題集を最後まで回すのが最も効率的です。それでも足りない場合に1冊追加する——この順序を守るだけで、教材費も学習の迷いも減らせます。指導を依頼する際も、新しい教材を増やすのではなく手元の問題集の中で優先順位を示してもらう形が理想です。

オンラインは化学と相性がよい

費用面では、オンライン指導も選択肢に入ります。交通費がかからず、移動時間も不要です。化学の場合、答案を撮影して共有すれば添削は成立します。画像として残るため、後から見返しやすいという利点もあります。

ただし、通信環境と静かな学習スペースが必要です。画面越しだと集中が続きにくいタイプには向きません。対応状況はプロ家庭教師が「近くにいない」を解決する方法で整理しています。

13. 化学を頼むときの、教師選びのチェックリスト

化学を任せる場合、確認しておきたい点があります。体験授業や面談で聞いてください。

1番目が最も重要です。90分の体験で原因の見立てが出るかどうかで、その後の進み方は大きく変わります。逆に、一般的な解説だけで終わり、次に何をするかの話が出てこない場合は慎重に検討してよいと思います。

相談前に用意しておくと話が早いもの

面談や体験の前に、次の3点を用意しておくと初回から中身に入れます。直近の模試の成績表(設問別の正誤が載っているもの)、学校で使っている問題集、学校のカリキュラム表です。

とくにカリキュラム表は見落とされがちですが、化学では重要な資料になります。いつどの分野を習うかが分かれば、先取りが必要かどうかの判断がその場でできるためです。学校から配布された年間計画をそのままお持ちください。

理科は「教えられる範囲」を確認しておく

もう一点、理科では担当範囲の確認が要ります。数学や英語と違い、理科は科目内でも専門の偏りが出やすい領域です。化学は見られるが物理は範囲外、という教師もいます。

2科目まとめて任せたい場合は、その旨を最初に伝えてください。途中で「その分野は専門外」となると、時間の損失が大きくなります。教師の見極め方の一般的な観点はプロ家庭教師とは?質の見分け方、体験授業の見方は家庭教師の無料体験で見るべきチェックポイントにまとめています。

相性は、教え方の上手さとは別に見る

最後に一点。化学のように理屈の積み重ねが要る科目では、質問しやすい関係が作れるかどうかが結果に効きます。分からない箇所を分からないと言えないまま進むと、穴はそのまま残ります。

体験授業のあとにお子さまへ聞いていただきたいのは、「分かりやすかった?」ではなく「聞き返しやすかった?」です。この質問のほうが、その後の継続を予測する材料になります。

まとめ:化学は「どこで止まっているか」が9割

化学は、性質の違う3分野が1科目に同居している教科です。だからこそ「化学が苦手」という言葉のままでは対策が立ちません。理論なのか、無機なのか、有機なのか。あるいは知識の使い方なのか、単に演習量なのか——ここを切り分けることが最初の作業になります。

そして分野が特定できれば、そのうち外部の手が必要な部分はごく一部だとわかります。無機の反復や理論の計算演習は自習で回せます。人の目が要るのは、途中式の癖、有機の手順づくり、記述答案の添削——この3つに集約されます。

費用を抑えるコツは、この3つに絞って、期間を区切って依頼することです。化学は目的が立てやすい科目なので、「この分野を3か月で」という形の依頼が機能します。

お子さまがどの分野で止まっているのか、どこから手をつけるべきか。答案を見ながら整理したい場合は、教育相談フォームからお聞かせください。必要な範囲と期間の目安をお伝えします。

よくある質問

Q 化学は理論・無機・有機のどれから手をつけるべきですか?
A 原則は理論からです。無機の反応も有機の計算も、理論化学で扱う量の関係や酸塩基、酸化還元の考え方の上に成り立っているためです。無機の暗記が苦しい、有機の計算で詰まるという症状の原因が理論にあることは珍しくありません。ただし高3の後半で時間が限られている場合は、志望校の頻出分野から優先する判断もあり得ます。残り時間によって順序は変わります。
Q 学校で化学の全範囲が終わるのが遅く、間に合うか不安です。
A 化学は学校の履修が遅くなりやすい科目で、有機化学の後半に入るのが高3の後半になるカリキュラムも珍しくありません。この場合、最後に習う分野ほど演習期間が短くなります。対策としては、学校より先に未習分野の全体像を通しておくことです。この役割は映像授業や参考書でも担えるため、費用を抑えて対応できます。高2の段階で学校のカリキュラム表を確認し、入試日程から逆算しておくほうが確かです。
Q 化学だけを家庭教師に頼むことはできますか?
A 可能で、むしろ費用対効果の面では推奨できる形です。化学は分野ごとに目的が立てやすいため、範囲を絞った依頼と相性がよい科目です。たとえば「理論の途中式の書き方と有機の構造決定を優先し、無機の暗記は自分で進める」という形にすれば、指導時間を抑えたまま成果を出しやすくなります。依頼の際に、どの分野を優先したいかを伝えてください。
Q 定期テストは取れるのに模試の化学で点が取れません。
A 覚えた知識を使う練習が不足している状態と見ています。定期テストは範囲が限定されるため直前の詰め込みでも得点できますが、模試や入試では複数分野をまたぐ問題や初めて見る設定の問題が出ます。対策は、範囲を区切らない問題演習に取り組み、間違えた設問について「どの知識をどう使うべきだったか」を言葉で確認することです。この確認作業は独学では抜けやすいため、外部の目を入れる価値が高い部分です。
Q 無機化学の暗記が終わりません。効率のよい方法はありますか?
A 個別の項目を独立した事実として覚えている場合、項目数がそのまま負担になります。周期表の規則性、イオン化傾向、酸塩基、酸化還元といった理論化学の原理と結びつけて整理すると、丸暗記が必要な部分は絞り込めます。語呂合わせは順序を思い出す道具として有効ですが、それだけに頼ると理由を問う設問に対応できません。整理の枠組みを最初に作る段階だけ人に見てもらい、その後の反復は自分で進める形が効率的です。
Q 有機化学の構造決定がまったく解けません。
A 構造決定には決まった手順があり、それを知らないまま解いていることが原因の場合が多いです。分子式から不飽和度を求めて骨格の見当をつけ、検出反応の結果から官能基を特定し、分解や生成の情報からつながり方を確定する——大まかにはこの流れで進みます。わかったことを紙に書き出す習慣が必要です。頭の中だけで組み立てようとすると情報量が増えた時点で処理できなくなります。詰まった箇所を指摘してもらう往復が要るため、外部の手を借りる価値が高い分野です。
Q 高3の夏からでも化学は間に合いますか?
A 全範囲を一から立て直す前提であれば厳しくなりますが、化学は分野の性質が分かれているため、絞り込みが効きやすい科目でもあります。志望校の過去問を分析して出題が集中する分野を特定し、そこに資源を集中させる進め方が現実的です。手をつけない分野を決めるのも戦略の一部です。共通テストの得点が課題なら解く順序と時間配分の見直しが短期間で効くことがあります。残り時間から逆算して、取捨選択の精度を上げてください。
Proチューターズネットワーク 編集部
中学受験を専門とするプロ家庭教師マッチングサービス「Proチューターズネットワーク」が運営する受験情報メディア。最難関校から中堅校まで、志望校のレベルを問わずご相談を承っています。兵庫・神戸を拠点に、関西の中学受験の情報を、保護者の方に向けて発信しています。

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