1. 結論:これは「学力」ではなく「進度と復習動線」の問題

最初に結論をお伝えします。中高一貫校の高校生が数学でつまずくとき、原因の多くは理解力そのものではありません。進む速度に対して、戻るための時間と方法が用意されていないこと——これが本質です。

難関中学の入試を突破したお子さまです。抽象的な内容を扱う力は、すでに一定の水準にあります。それでも崩れるのは、学習の設計が追いついていないからです。ここを取り違えて「もっと勉強しなさい」と量を足すと、多くの場合さらに状況が悪化します。

つまずきの正体を言い換えると

  • 進度が速い——理解が固まる前に次の単元へ移る
  • 戻る動線がない——学校の授業は前に進み続け、復習の枠は自分で作るしかない
  • 気づくのが遅れる——定期テストの点数で表面化した時点で、原因は数か月前にある

この3つはいずれも、本人の努力だけで解決しにくい性質を持っています。だからこそ、どこで、何に、いくらかけるかという設計の話になります。費用を抑えたいご家庭ほど、この設計の精度が効いてきます。

もう一点だけ補足します。数学は科目の性質上、つまずきが自分では見えにくい科目です。英語なら単語や文法の抜けを本人が自覚しやすいのに対し、数学は「わかったつもり」の状態が長く続きます。答案という形で外に出して初めて、ずれが見えます。だからこそ、定期的に答案を見る仕組みが要るのです。

「数学が苦手になった」という言葉を分解する

ご相談の入り口は、たいてい「数学が苦手になったようです」という一言です。ただ、この言葉の中身はお子さまごとに違います。計算が合わない子、解法は浮かぶのに答案が書けない子、そもそも定義があいまいな子——対処法はそれぞれ別物です。

ここを分けずに一律の対策を始めると、時間もお金も余計にかかります。本記事では第5章で、つまずきを5つの型に切り分ける方法を扱います。まずはお子さまがどの型に当てはまるかを見てください。

2. 中高一貫校の数学で落ちる3つの構造

なぜ中高一貫校では、数学が最初に崩れやすいのか。学校の質の問題ではなく、カリキュラムの設計から必然的に生まれる性質です。

構造1:進度が公立より1年前後速い

高校受験を挟まない分、中高一貫校の多くは中学の内容を早めに終え、高校範囲へ入ります。学校によって差はありますが、高2の後半から高3の前半で高校範囲を一通り終える設計を取る学校が少なくありません。残りの期間を入試演習に充てるためです。

この設計は、順調に乗れているうちは大きな利点になります。同学年の受験生より演習期間が長く取れるからです。ただし裏返すと、一度遅れたときに追いつくための余白がないということでもあります。学校は止まらずに進み続けます。

構造2:教材が独習しにくい

中高一貫校では、検定教科書ではなく体系的に再編成された教材を使う学校が多くあります。中学と高校の内容を分野ごとにつなげて配置した『体系数学』のような教材はその代表です。単元の順序が学年で区切られていないため、系統立てて理解を積み上げやすいという利点があります。

一方で、市販の参考書とは配列が対応しません。授業でわからなかった箇所を、書店の本で調べ直そうとしても、該当箇所を見つけにくいという問題が起こります。公立校の生徒なら「教科書ガイドを買う」で済む場面が、一貫校では成立しにくいのです。

進度が速いことと、自力で戻る手段が乏しいこと。この2つが重なると、つまずきは自然には解消されず、そのまま積み上がっていきます

構造3:定期テストが実力テストに近い

一貫校の定期テストは、問題集の類題をそのまま出す形式ばかりではありません。初見の設定で考えさせる問題や、複数単元をまたぐ問題が含まれることが一般的です。範囲を直前に詰め込む対策が効きにくい作りになっています。

結果として、点数が下がった時点で、原因はすでに数か月前の単元にあるという状態が生まれます。テスト直前だけ対策しても戻らないのは、この構造のためです。塾に通っていても伸びない場合の一般的な要因は塾についていけない・成績が上がらない理由で整理しています。

中高一貫校で数学が崩れる仕組み 進度が速く戻る動線がないため、つまずきが解消されないまま積み上がる構造を示した図。 なぜ自然には戻らないのか ① 進度が公立より1年前後速い 理解が固まる前に、次の単元へ移る ② 戻るための動線がない 教材の配列が市販の参考書と対応しない ③ 気づくのが遅れる 点数に出た時点で、原因は数か月前にある 量を足しても解決しない理由がここにある 必要なのは、どこまで戻るかを決めること

図|3つが重なるため、本人の努力だけでは解消しにくい。だから設計の問題になる。

3. 関西の中高一貫校に固有の事情

関西で中高一貫校に通うご家庭には、首都圏とは少し違う事情があります。ご相談を受けるなかで、繰り返し出てくる3点を挙げます。

事情1:国公立志向が強く、科目数が絞れない

関西の進学校では、国公立大学を第一志望に置くご家庭の割合が高くなります。共通テストで必要な科目が多く、私立専願のように3科目へ絞る選択が取りにくいという特徴があります。

科目数が多いということは、1科目に割ける時間が構造的に少ないということ。数学の立て直しに使える時間も限られます。だからこそ、時間の投入量ではなく、どこに投入するかの精度で差がつきます。

事情2:医学部志望が一定数いる

関西の一貫校では、医学部を目指すお子さまが学年に一定数います。医学部入試は1科目の穴が合否に直結しやすく、数学の遅れを抱えたまま高3に入るのは避けたい状況です。医学部特有の設計は医学部受験に必要な個別指導戦略で詳しく扱っています。

逆にいえば、高1・高2のうちに数学を立て直せているかどうかが、志望の選択肢そのものを左右するということでもあります。この段階での手当ては、進路の幅を確保するための投資という側面を持ちます。

事情3:学校ごとの進度に対応できる外部の受け皿が限られる

一貫校は学校ごとに教材も進度も異なります。ところが集団塾の高校生コースは、標準的な進度に合わせたカリキュラムで組まれるのが一般的です。学校の進度と塾の進度がずれると、生徒は2つの異なる流れを同時に処理することになります。

この状態は、負担が増える割に効果が出にくくなります。学校の内容が消化できていない生徒にとっては、とくに厳しい構造です。個別指導塾を選んだ場合の一般的な注意点は個別指導塾で成績が上がらない理由にまとめています。

事情4:高校受験がないぶん、立て直しの機会も来ない

中高一貫校の利点の一つは、高校受験に時間を取られないことです。その時間を大学受験の準備に回せます。ただし、これには裏面があります。公立校の生徒であれば高校受験という強制的な棚卸しの機会が入るのに対し、一貫校ではそれが来ないという点です。

中学範囲に穴があっても、内部進学で高校へ上がります。穴は残ったまま、高校範囲の学習が積み上がっていきます。数学は積み上げの性質が強い科目ですから、この影響が最も出やすくなります。中学の段階で「なんとなく点は取れている」状態だった生徒が、高1の後半で急に崩れるのは、この構造によるものです。

つまり一貫校では、棚卸しを外から与えられない代わりに、家庭側で意識的に作る必要があるということ。定期テストのたびに答案を見ておくだけでも、この役割は果たせます。

4. 学年別に見る、手を打つべきタイミング

同じ「数学がわからない」でも、学年によって取れる手段と必要な費用は変わります。時期ごとの現実的な選択肢を整理します。

時期この時期の性質現実的な打ち手
中3〜高1前半最も費用対効果が高い。戻る範囲が狭く、時間の余裕もあるつまずいた単元だけを特定して短期集中で埋める
高1後半〜高2前半抽象度が上がり、差が開き始める分岐点週1回の定点観測で、崩れる前に手を入れる
高2後半立て直しの実質的な最終局面。範囲は広いが時間はまだある優先単元を絞り、入試で問われる形まで持っていく
高3全範囲のやり直しは時間的に困難志望校の出題範囲に限定し、得点源になる分野に集中

※学校の進度により時期は前後します。目安としてご覧ください。

高1の1年間は、費用面でも最も効率がよい

この表で強調したいのは、早い時期ほど、少ない費用で戻せるという点です。高1の段階でつまずきが2単元なら、月数回の指導で埋まることも珍しくありません。同じ状態を高3まで放置すると、埋めるべき範囲は数倍になり、そのぶん費用も期間も膨らみます。

「まだ高1だから様子を見よう」という判断は、心情としては自然です。ただ費用の観点では、様子を見た期間そのものがコストになります。この考え方は塾から家庭教師へ切り替えるタイミングでも詳しく扱っています。

中3の段階で気づけるサイン

もう少し早く、中3の時点で気づけるサインもあります。次のような変化が出ていれば、高校範囲に入る前に手を打つ余地があります。

いずれも、点数という結果には表れにくい変化です。しかし高校範囲に入ると、こうした状態は一気に表面化します。中3の1年間は、範囲が狭いうちに整理できる最後の時期と考えてよいでしょう。

高3で相談を受けたときに、まずお伝えすること

高3の夏以降にご相談をいただくこともあります。この段階では、全範囲を戻す時間はありません。お伝えするのは「志望校が実際に出す範囲に絞りましょう」ということ。

大学によって、頻出分野には明確な偏りがあります。過去問を分析して出題が集中する分野を特定し、そこだけを仕上げる。手をつけない分野を決めるのも戦略です。残り時間が短いほど、この取捨選択の精度が結果を左右します。

5. つまずきの型を特定する——5つのパターン

ここが本記事の中核です。同じ「数学ができない」でも、原因が違えば対処も違います。答案を見れば、多くの場合どの型かは判別できます。

答案に現れるサイン必要な手当て
①計算処理型方針は合っているのに、途中式で符号や分数を落とす計算の型を固定する練習。指導時間は少なくて済む
②定義理解型用語の意味を説明できない。条件の読み替えができない該当単元の定義まで戻る。独学では気づきにくい
③解法選択型手は動くが、最初の一手が的外れ問題の特徴と解法を結びつける訓練
④答案化型口では説明できるのに、書くと減点される記述の型づくり。添削がないと直りにくい
⑤演習量型理解はしている。時間内に終わらない問題量の確保。外部指導より自習の設計が効く

費用の観点で効いてくるのは、①と⑤は外部指導の必要性が比較的低いという点です。計算練習や問題量の確保は、市販教材と学校の課題で進められます。ここに高い指導料をかけるのは、費用対効果が良いません。

一方で、②③④は独学では戻しにくい領域です。定義の取り違えは本人が自覚できず、解法選択の癖は自分では見えず、答案の減点箇所は模範解答と見比べても判断がつきにくいためです。限られた予算は、この3つに集中させるのが合理的です。

家庭でできる判別の手順

この作業は保護者の方でも十分に可能です。ここまで整理してから相談すると、体験授業の1回で話が具体的に進みます。逆に「数学が苦手で」とだけ伝えると、状況把握だけで最初の数回が終わってしまいます。

型は複合することがある

実際には、複数の型が重なっているケースもあります。よくあるのが、②定義理解型を放置した結果、③解法選択型に発展しているパターンです。定義があいまいなまま問題演習を重ねると、解法を状況ではなく見た目で選ぶようになるためです。

複合している場合は、下流ではなく上流から手をつけます。解法の選び方を練習する前に、定義に戻る。順序を逆にすると、覚えることだけが増えて負担が大きくなります。どちらが原因でどちらが結果かを見分けることが、時間と費用の節約に直結します。

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6. 独学で戻せる場合と、戻せない場合

費用を抑えたいなら、まず「外部の手を借りずに済む範囲」を見極めることです。何でも人に頼むのが最善ではありません。

状況独学で戻せる可能性判断の理由
つまずきが1〜2単元に限定高い戻る範囲が明確で、市販教材で対応できる
本人が「どこがわからないか」を言える高い自己診断ができている状態
定期テストで平均前後は取れている条件つき崩れる手前。定点観測があると安全
複数単元にまたがって崩れている低いどこから戻るかの判断自体が難しい
模範解答を読んでも納得できない低い定義や前提の理解に穴がある
数学の勉強自体を避け始めている低い心理的な回避が入ると自力では戻りにくい

下の3行に当てはまる場合、参考書を買い足す判断は、たいてい効果が出ません。どこから戻るかの判断ができない状態で教材だけ増えると、手をつけない本が積み上がるだけになります。教材費も無駄になります。

「勉強を避け始めている」サインを見逃さない

最も注意していただきたいのが最終行です。数学の課題だけ後回しにする、テストの答案を見せたがらない、数学の話題になると不機嫌になる——こうした変化は、単なる反抗期ではなくできないことへの回避反応であることがあります。

この段階に入ると、家庭内での指摘は逆効果になりやすくなります。第三者が入って「ここは誰でも詰まる」と伝えるだけで動き出すケースは少なくありません。学習と心理の関係については受験メンタルが崩れる理由と、崩れない学習設計の作り方もあわせてご覧ください。

7. 費用を抑えたまま効かせる——週1回を機能させる3条件

ここから費用の話に入ります。結論から言えば、中高一貫校の数学は週1回でも十分に機能します。ただし条件があります。この条件を外したまま週1回にすると、月謝だけ払って変化が起きない状態になります。

週1回を機能させる3条件

  • 範囲を絞る——「数学全体」ではなく、単元を指定して依頼する
  • 宿題は学校教材から出してもらう——新しい教材を増やさない
  • 授業を診断と設計に使う——演習そのものは自習で進める

条件1:範囲を絞る

「数学を見てください」という依頼の仕方だと、指導は学校の進度を追いかける形になりがちです。これは悪くはないのですが、つまずきの根が過去の単元にある場合、追いかけるだけでは埋まりません。

依頼の段階で「二次関数と三角比が怪しいので、そこを優先してください」と伝えられると、初回から本題に入れます。第5章の判別ができていれば、この指定は保護者の方でも可能です。何科目・どの範囲に絞るかの考え方は家庭教師は何科目頼むべき?費用対効果で決める科目の選び方で整理しています。

条件2:宿題は学校教材から出してもらう

指導のたびに新しい問題集を渡されると、学校の課題と合わせて負担が二重になります。中高一貫校の生徒は、そもそも学校の課題量が多い傾向。ここに上積みすると、どちらも中途半端に終わります。

お願いしたいのは、「学校の教材の、どの問題をやるか」を指示してもらうことです。同じ教材の中で優先順位をつけるだけで、負担を増やさずに学習の密度は上がります。教材費もかかりません。

条件3:授業を診断と設計に使う

週1回90分という時間で、演習量を稼ぐことはできません。月に6時間ほどでは、問題を解く時間としては足りないためです。この時間の使い方として効率がよいのは、解いてきたものを見て、どこで間違えたのかを特定し、次の1週間の進め方を決めることです。

言い換えると、授業時間は「教わる時間」というより「方向を決める時間」です。この発想に立てると、週1回でも変化は起きます。逆に、その場で問題を解かせて解説してもらうだけの使い方だと、時間あたりの効果は下がります。

3条件を満たしたときの、1週間の回し方

3つの条件を満たすと、1週間はおおむね次のように回ります。

タイミングやること
指導日(90分)解いてきた答案を見て原因を特定し、次の1週間で解く範囲を決める
翌日〜中日指定された学校教材の問題を自分で解く。わからない箇所には印だけつけて先へ
指導日の前日印をつけた問題を集めておく。これが次回の教材になる

この回し方の要点は、わからない箇所で止まらないことです。自習中に考え込んで時間を溶かすより、印をつけて先へ進み、まとめて解決するほうが効率が上がります。週1回の指導を「詰まった箇所の回収日」として設計するイメージです。

8. 塾・個別・映像・家庭教師を「実質コスト」で比べる

費用を比べるとき、月謝の額だけを見ると判断を誤ります。見るべきは「その月謝で、お子さま本人に向けられる時間がどれだけあるか」です。

手段月額の目安本人に向けられる時間向いている状況
集団塾(高校生コース)20,000〜30,000円ほぼなし(全体への説明)標準的な進度に乗れており、演習量を確保したい
個別指導塾(1対2・週2回)30,000〜45,000円1コマの半分程度学習の管理や質問の場がほしい
映像授業数千円〜10,000円台なし(一方向)自分で計画を立てて回せる
プロ家庭教師(週1回90分)24,000〜30,000円全時間つまずきの特定と設計が必要

※家庭教師の金額は、指導料を1時間4,000〜5,000円と仮定した場合の目安です。指導料は教師ごとに異なります(費用について)。塾・映像の金額は一般的な相場帯であり、地域やコースにより幅があります。

この表で見ていただきたいのは、集団塾と家庭教師の月額は、必ずしも大きく変わらない場合があるという点です。1時間あたりの単価は集団塾のほうが安く見えますが、その時間は全体に向けられたものです。どちらが優れているという話ではなく、目的が違うということ。

組み合わせで考えると無理がない

実際に多いのは、どちらか一方に寄せるのではなく組み合わせる形です。演習量と情報は塾で確保し、つまずきの特定と答案の精度は個別に見てもらう。この分担なら、家庭教師の回数を抑えたまま効果を出せます。

塾と併用した場合の総額の考え方は塾と家庭教師の併用は月いくら?総額シミュレーションに、高校生全体の費用構造は高校生の家庭教師を安く使う方法|相場と予算ラインを徹底解説にまとめています。あわせてご覧ください。

入会金・管理費・教材費まで含めて比べる

月謝の比較でもう一点。指導料以外の固定費が加算される料金体系があります。入会金、毎月の管理費やシステム利用料、教材の一括購入——これらを含めた1年間の総額で比べないと、実際の負担は見えません。

とくに教材の一括購入は、途中で解約しても返金されない条件がついていることがあります。契約前に「1年間使った場合の総額」「指導料以外に毎月かかる費用」「途中でやめたときの扱い」の3点を数字で確認しておくと安全です。相場全体の見取り図は家庭教師の1時間相場はいくら?にあります。

9. 学年・目的別の投資ライン

「いくらまでなら出す価値があるか」を、目的別に整理します。数字はあくまで設計の出発点としてご覧ください。

目的回数の目安月の投資感費用を抑える工夫
高1・高2の定点観測(予防)週1回90分24,000〜30,000円定期テスト前後の期間だけ隔週にする
特定単元の穴埋め月2〜4回12,000〜24,000円単元を指定し、期間を区切って依頼する
高2後半からの立て直し週1回120分/週2回90分32,000〜60,000円3か月と期限を決め、達成後に回数を戻す
高3の二次試験対策(数学のみ)週1〜2回90〜120分32,000〜60,000円答案添削中心に切り替え、演習は自習で

※指導料を1時間4,000〜5,000円と仮定した目安です。実際の指導料は教師ごとにプロフィールへ明記しています。

ここで一つ、費用の考え方についてお伝えしたいことがあります。この投資が最も効くのは、金額の大きい高3ではなく、金額の小さい高1・高2の段階です。早い時期の月2〜3万円が、高3での大幅な追加投資を減らします。

逆にいえば、高3で慌てて手厚くするより、高1・高2で薄く長く見ておくほうが、3年間の総額は小さくなるというのが現場での実感です。

期間を区切ると、費用は読める

もう一つの工夫は、期間を区切ることです。「立て直すまでの3か月」「二次対策の秋から冬まで」と区切って始めれば、総額が事前に計算できます。目的が達成できたら回数を減らす、あるいは一度終了する。この使い方ができるのは、家庭教師の利点です。

そのためにも、契約時に最低契約期間や解約金の有無を確認しておいてください。期間を区切る前提が、契約条件によって崩れてしまうことがあるためです。

10. よくある失敗5パターン

費用をかけたのに変化が出ないケースには、共通した型があります。5つ挙げます。

いずれも、善意から出てくる判断です。とくに1番目は、保護者の方から「基礎からやり直させたい」というご要望としてよく出ます。気持ちはよくわかるのですが、残り時間から逆算すると成立しないことが多いのが実情です。

「基礎からやり直す」を、正しく訳すと

必要なのは、全部を戻すことではありません。今の単元を理解するために必要な過去の内容だけを、ピンポイントで戻ることです。三角比でつまずいている生徒に必要なのは中1の正負の数ではなく、多くの場合は比の扱いと図形の見方です。

この判断ができるかどうかが、指導者の力量の差になります。全部戻すのは誰でも言えますが、どこだけ戻せばよいかを見極めるには経験が要ります。プロ家庭教師とは?質の見分け方で、この点を含めた見極め方を扱っています。

もう一つ、費用を増やす失敗

5つの型のほかに、費用面で影響が大きいものがあります。合わない状態のまま続けてしまうことです。指導が始まって2か月ほど経っても、何をやっているのか本人が説明できない、質問しづらいままである——こうした状態が続くなら、相性の問題を疑ってよい段階です。

「せっかく決めたのだから」と続けた数か月は、そのまま費用と時間の損失になります。教師の変更に費用がかかるかどうかは、契約前に確認しておきたい点の一つです。合わないと感じたときにすぐ動ける条件かどうかが、結果的に総額を左右します。

11. 立て直しの3週間手順

外部に頼むかどうかを決める前に、ご家庭でできることがあります。3週間の手順として整理します。

時期やること
準備(数日)直近1年分の定期テスト答案と、学校で使っている教材を集める
第1週第5章の5つの型で、つまずきの種類を判別する
第2週最優先の1単元だけを決め、そこに絞って取り組む
第3週学校の進度に接続できるか確認し、無理なら外部を検討する

この3週間で動きが出るなら、独学で戻せる可能性があります。動かない場合——とくに第2週で「どの単元を選ぶか」が決められない場合は、判断の部分に外部の目を入れる価値があります。

3週間で判断する理由

期間を区切るのは、様子見が長引くのを避けるためです。中高一貫校の数学は、迷っている間も学校の進度が進み続けます。1か月迷えば、戻す範囲が1か月分増えます。

3週間という長さは、1回の定期テストのサイクルより短く、単元1つを扱うには足りる長さです。この区切りで判断すれば、決断が遅れることによる損失を小さく抑えられます。

この期間、保護者が言わないほうがよいこと

3週間の取り組み中、避けたい声かけがあります。「中学のときはできていたのに」「そんなことも忘れたの」といった、過去との比較です。本人も自覚しているぶん、こうした言葉は取り組む意欲を削ぎます。

代わりに有効なのは、事実の確認にとどめることです。「今週はどの単元をやった?」「どこで止まった?」——この2つだけで十分に会話は成立します。評価をせず、状況だけを共有する姿勢が、3週間を最後まで走らせる助けになります。

12. 教師を選ぶときのチェックリスト

実際に依頼する場合、中高一貫校の高校生を見てもらうには確認しておきたい点があります。体験授業や面談で、次の5つを聞いてください。

とくに1番目と4番目は、中高一貫校では重要です。学校の教材に対応できない場合、指導は別教材で進むことになり、学校の授業との二重構造が生まれます。それでは負担が増えるだけです。

体験授業で見るべきなのは、教え方の上手さだけではない

体験授業では、説明のわかりやすさに目が行きがちです。ただ、より大事なのは「どこでつまずいているかを、その場で言い当てられるか」です。90分の体験で原因の見立てまで出せる教師は、その後の設計も任せられます。

逆に、体験が一般的な解説だけで終わり、次に何をするかの話が出てこない場合は、慎重に検討したほうがよいかもしれません。体験授業の具体的な見方は家庭教師の無料体験で見るべきチェックポイントにまとめています。

オンラインという選択肢

費用を抑えるという観点では、オンライン指導も検討に値します。交通費がかからず、移動時間もゼロになるためです。中高一貫校の生徒は通学時間が長いことが多く、平日の夜に自宅で受けられる形は現実的です。

数学の場合、答案を撮影して共有すれば添削も成立します。むしろ答案が画像として残るため、後から見返しやすいという利点もあります。一方で、手元を見せながら質問するのが苦手なタイプや、画面越しだと集中が続きにくいタイプには向きません。

お住まいの地域で対面の教師が見つかりにくい場合も、オンラインなら選択肢が広がります。対応状況はプロ家庭教師が「近くにいない」を解決する方法で整理しています。

まとめ:削るべきは科目数、削ってはいけないのは診断

中高一貫校の数学のつまずきは、能力の問題ではなく設計の問題です。進度が速く、戻る動線がなく、気づくのが遅れる——この3つの構造が重なった結果として起こります。

費用を抑えたいご家庭にお伝えしたいのは、削るべきは科目数と時間数であって、原因を特定する工程ではないということ。診断を省いて安く始めると、どこを直すかが定まらないまま月謝だけが続きます。それが結果として最も高くつきます。

順序としては、まずご家庭で答案を見て型を判別する。独学で戻せる範囲かを見極める。戻せないと判断したら、単元と期間を区切って依頼する。この順で進めれば、必要な費用は想像より小さく収まることが多いはずです。

お子さまの数学がどの型に当てはまるのか、どこから戻せばよいのか。判断に迷われる場合は、教育相談フォームから現状をお聞かせください。答案を拝見したうえで、必要な範囲と期間の目安をお伝えします。

よくある質問

Q 中高一貫校の数学で家庭教師を考えるのは、いつからが適切ですか?
A 定期テストの点数が下がり始めた時点、または本人が「授業がわからない」と言い始めた時点が目安です。中高一貫校では学校の進度が止まらないため、様子を見ている期間だけ戻す範囲が増えていきます。費用の面でも、高1の段階でつまずきが1〜2単元なら月数回の指導で埋まることがある一方、高3まで放置すると範囲も期間も数倍になります。早い時期ほど少ない費用で戻せる、という関係があります。
Q 週1回90分で足りますか?
A 条件を満たせば足ります。範囲を単元レベルで絞ること、宿題を学校の教材から出してもらうこと、授業時間を演習ではなく診断と方針決めに使うこと——この3つが揃えば、週1回でも変化は起きます。逆に「数学全体を見てほしい」という依頼のまま週1回にすると、月6時間ほどで演習量まで賄おうとすることになり、成果が出にくくなります。
Q 学校で使っている教材のまま教えてもらえますか?
A 中高一貫校向けの体系的な教材や学校独自のプリントに対応できる教師であれば可能です。依頼の際に、使用教材と現在の進度を伝えてください。教材を別に用意すると学校の課題と二重になり、負担が増えるわりに効果が出にくくなります。教材費を追加でかけずに済むという点でも、学校教材のまま進める形をおすすめしています。
Q 費用はどのくらいを見ておけばよいですか?
A 指導料を1時間4,000〜5,000円と仮定すると、週1回90分で月24,000〜30,000円程度が一つの目安です。特定単元の穴埋めのように月2〜4回で区切る形なら12,000〜24,000円程度に収まります。ただし指導料は教師ごとに異なり、契約形態によっては入会金や管理費、教材費が加わる場合があります。比較する際は月謝だけでなく、1年間の総額と途中でやめたときの扱いまで確認してください。
Q 塾と家庭教師では、どちらを選ぶべきですか?
A 目的が違うため、どちらが優れているという比較にはなりません。演習量の確保と入試情報は塾に強みがあり、つまずきの特定と答案の精度は個別指導に強みがあります。中高一貫校の場合、学校の進度と塾のカリキュラムがずれることがあり、その状態では負担だけが増えることがあります。学校の内容が消化できていない段階では、まず個別に原因を特定するほうが順序として無理がありません。
Q 高3の夏からでも間に合いますか?
A 全範囲をやり直す前提であれば、時間的に難しい場面が多くなります。この時期に取るべきなのは、志望校が実際に出題する分野に絞り、得点源になる範囲を仕上げる進め方です。大学ごとに頻出分野には偏りがあるため、過去問を分析して手をつけない分野を決めることも戦略になります。残り時間が短いほど、この取捨選択の精度が結果を左右します。
Q 本人が家庭教師を嫌がっている場合はどうすればよいですか?
A 「できないから付ける」という位置づけで話が進むと、抵抗が生まれやすくなります。数学だけ、3か月だけ、といった形で範囲と期間を限定して提案すると受け入れられることがあります。数学の課題を後回しにする、答案を見せたがらないといった変化は、反抗ではなくできないことへの回避反応であることがあります。その場合は家庭内での指摘が逆効果になりやすいため、第三者が入って状況を整理するほうが動き出しやすくなります。無料体験を「合わなければ断ってよい」という前提で一度試すのも一つの方法です。
Proチューターズネットワーク 編集部
中学受験を専門とするプロ家庭教師マッチングサービス「Proチューターズネットワーク」が運営する受験情報メディア。最難関校から中堅校まで、志望校のレベルを問わずご相談を承っています。兵庫・神戸を拠点に、関西の中学受験の情報を、保護者の方に向けて発信しています。

高校受験・大学受験に対応する教師

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中学受験を中心に、高校受験・大学受験・医学部受験まで対応しています。登録しているのはプロの家庭教師のみで、学生講師は在籍していません。
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