1. 6年生からの中学受験参入は、いま増えている

「周りはみんな3年生から塾に通っている。今からでは遅いのではないか」——6年生になってから中学受験を考え始めたご家庭から、必ずといっていいほどうかがう言葉です。

ただ、実際の数字を見ると、この参入の仕方はいま珍しいものではなくなっています。

関西の中学受験、直近の数字

  • 2026年入試の統一解禁日午前の受験者数は17,850人で、前年より267人の増加
  • 実数として4年連続の増加は2000年以降で初めて
  • 小学6年生の児童数は前年より3,330人減少している
  • それにもかかわらず受験率は10.52%から10.90%へ上昇し、過去最高を更新

※関西の中学受験に関する公表資料の集計による。数値は各機関の公表資料でご確認ください。

子どもの数は3,000人以上減っているのに、受験する子どもは増えている。これは「もともと受験する層」が増えたのではなく、これまで受験を考えていなかった層が新しく参入しているということ。

背景として指摘されているのが、高校授業料の支援制度です。2026年度から所得制限が撤廃され、私立高校について年間最大457,200円までの支援が全世帯を対象に行われる形になりました。「私立高校の授業料負担が軽くなるなら、中学から私立を考えてもいいのではないか」という判断が働きやすくなっています。

この波は、これから兵庫にも来る

受験者数の増加を地域別に見ると、偏りがはっきりしています。大阪が突出して増えており、兵庫と奈良が約50人増、京都は横ばいという状況です。大阪の伸びの背景として、府の高校授業料無償化と、大阪市内への高所得層の人口流入が指摘されています。

ここで注目していただきたいのが、2026年度から国の支援制度で所得制限が撤廃されたという点です。これまで大阪府独自の施策が生んでいた「私立高校の授業料負担が軽い」という状況が、制度として全国に広がりました。兵庫県内の私立高校は授業料が45万円から60万円程度の学校が多く、このうち457,200円までが国からの支援の対象になります。

大阪で起きた判断の変化が、兵庫でも起こりうる条件が整ったということ。中学受験は前年の夏から秋にかけて動き出すご家庭が多いため、この影響が数字に表れるとすれば2027年入試以降になります。いま6年生や5年生のご家庭にとっては、周囲の受験者が増えていく局面で受験することになります。

そしてこの層は、多くが高学年からの参入です。3年生から塾に通ってきた層とは、そもそも走り方が違います。後から入った人が、先に走っている人と同じ走り方をしても追いつけません。この記事では、6年生から参入する場合の現実的な設計を整理します。

2. 「間に合うか」の答えは、志望校のレベルで変わる

最初にはっきりさせておきたいことがあります。「6年生から間に合いますか」という問いには、そのままでは答えが出ません。志望校のレベルを決めない限り、判断のしようがないためです。

志望校の帯6年春から6年夏から必要になること
最難関校かなり厳しい現実的ではない低学年からの積み上げが前提の出題
難関校条件しだい厳しい算数の基礎がすでに固まっていること
中堅校(偏差値50台)十分に狙える狙える範囲を絞り、標準問題を取り切る
それ以下の帯十分に狙える十分に狙える基礎の穴を埋めることが中心

※お子さまの現在の学力によって変わります。目安としてお読みください。

最難関校の入試は、低学年から積み上げてきた処理速度と思考の型を前提に作られています。ここに1年で追いつくのは、率直に申し上げて簡単ではありません。できない、とは言いませんが、そこを目標に置くと、途中で折れる確率が高くなります。

一方、偏差値50台の学校は、出題の大半が標準的な難易度です。ここで差がつくのは難問が解けるかどうかではなく、取れるはずの問題を取りこぼさないかどうかです。この力は、1年でも十分に間に合います。

中堅校の入試は、何を見ているか

「中堅校なら間に合う」と申し上げましたが、根拠を具体的に書きます。

偏差値50台の学校の入試問題を並べてみると、共通する特徴があります。基本から標準レベルの設問が全体の7割から8割を占め、難問は最後の大問の後半に限られる、という構成です。合格最低点も6割前後に設定されている学校が多く、難問を1問も解かずに合格点に届く設計になっています。

ここから導かれる戦い方ははっきりしています。標準問題の取りこぼしをどれだけ減らせるか。この一点です。そして標準問題を取り切る力は、積み上げの年数よりも、やった問題をどれだけ安定して再現できるかで決まります。1年でも十分に鍛えられる領域です。

逆に最難関校では、正答率が2割を切るような問題で差がつきます。この帯の問題は、解法を知っているだけでは解けません。初めて見る条件を分解して、既知の型に落とし込む作業が要ります。この力は、量と時間をかけて身につくものです。6年生からの1年で、ここまで到達するのは容易ではありません。

難関校がその中間にあたります。標準問題の安定度に加えて、正答率3割から5割の問題をいくつ取れるかが問われます。6年春からの参入で、算数の基礎がすでに固まっている場合には、狙える範囲に入ってきます。

志望校は1校に絞らないでください

6年生から参入する場合、この時点で第一志望を1校に固定するのは避けてください。学力の伸び方が読めない段階だからです。

おすすめは、レベル帯の違う候補を3つ持っておく形です。仮に「届いたらここ」「順当ならここ」「無理なく通えるならここ」の3段で置いておくと、秋の模試の結果を見て自然に絞り込めます。1校に決めてから走り出すと、届かないと分かったときに戻る道がなくなります。

3. 残り日数を数えることから始める

参入を決めたら、最初にやるのは勉強ではありません。残り日数を数えることです。

関西圏の中学入試には統一解禁日があり、大阪・京都・兵庫・滋賀・奈良・和歌山の2府4県で、例年1月中旬の土曜日に設定されています。2027年度入試は1月16日が統一解禁日となる見込みです。

※日程は各校の募集要項で最終確認をお願いします。

起点2027年1月16日までの日数週数
6年生の4月1日290日約41週
6年生の8月5日164日約23週
6年生の9月1日137日約20週
6年生の11月1日76日約11週

ここで意識していただきたいのが、首都圏との差です。首都圏の入試解禁は2月1日ですので、関西の受験生は持ち時間が約2週間短くなります。市販の受験本やインターネット上の学習計画は首都圏の日程を前提にしたものが多く、そのまま当てはめると、常に2週間ぶん遅れることになります。

関西圏外の学校が12月から1月上旬に関西で入試を実施することがあります。前受けとして受験する場合、実質的な最初の本番は12月です。「1月まであと半年ある」と思っていたら、実際の締切は12月だった、ということが起こります。

12月に本番が来ることがある

もう少し詳しく書きます。関西圏外の学校が、関西の会場を借りて12月から1月上旬に入試を実施することがあります。岡山県や四国の学校が代表的です。

これらを「前受け」として受験するご家庭は少なくありません。本番の空気に慣れる、合格を1つ持った状態で1月を迎える、といった目的です。効果はありますが、受けるからには、そこまでに一定の仕上がりがが要ります。

12月上旬に受ける場合、実質的な締切は1月16日ではなく12月上旬です。8月5日を起点にすると、残りは約122日、17週ほどになります。「1月まであと半年ある」という感覚で組んでいると、ここで1か月分ずれます。

前受けを組むかどうかは、6年生からの参入の場合、慎重に判断してください。仕上がりが間に合わない段階で受けると、不合格という結果だけが残ります。本人の状態によっては、受けないほうがよいこともあります。

週数で考えると、量の見当がつく

日数のままだと実感が湧きにくいので、週数に直してください。8月時点で23週です。1週間にできる量を現実的に見積もって24倍すれば、それが残り時間でできることの総量になります。

たとえば1週間に算数の単元を1つ仕上げられるとして、24単元。中学受験の算数の主要単元は、おおよそこの範囲に収まります。つまり、絞れば届く量ではあります。絞らなければ届きません。

数えたら、紙に貼ってください

残り日数と週数を出したら、紙に書いて見える場所に貼ってください。カレンダーに印をつけるだけでも構いません。

後から参入するご家庭で最も起こりやすいのが、時間の感覚が曖昧なまま数か月が過ぎることです。毎日それなりに学習しているため、進んでいる実感はあります。ところが残り週数は着実に減っていきます。この2つのずれが、11月ごろに一気に表面化します。

週数が見えていれば、月に一度「今月で4週使った。残り20週」と確認できます。この確認があるだけで、判断が早くなります。間に合わないと分かるなら、早く分かったほうがいいのです。志望校を組み替える時間が残ります。

4. 4月スタートと8月スタートで、何が違うか

同じ6年生からの参入でも、4月と8月では設計が変わります。

4月から始める場合(残り約41週)

この時期であれば、一通りの単元学習を組むことができます。前半で算数と理科の計算分野を通し、夏に復習、秋から過去問という、標準的な流れに乗せられます。

ただし、5年生までの内容が入っていない前提で組みます。塾のカリキュラムは5年生までに主要単元をほぼ終える設計になっているため、6年生のクラスにそのまま入ると、知らないことを前提に授業が進みます。この点は次の章で扱います。

8月から始める場合(残り約23週)

この時期からの参入では、一通りを網羅する時間はありません。最初から絞り込む前提で組みます。

具体的には、志望校の過去問を先に見て、出題される単元だけを選びます。学校によって出題の偏りははっきりしていますので、5年分も見れば傾向はつかめます。出ない単元に時間を使わないだけで、実質的な持ち時間は大きく変わります。

この作業は、独力でやると外すことがあります。「この単元は出ていないから捨てる」と判断した単元が、実は形を変えて毎年出ている、ということが起こるためです。過去問の読み解きだけは、経験のある人に一度見てもらう価値があります。

5. 最初に決めるのは「やらないこと」

後から参入する場合、最も重要な判断が「何をやらないか」です。ここを決めずに走り出したご家庭は、ほぼ例外なく秋に行き詰まります。

やることを増やすのは簡単です。テキストを買い、講座を追加し、時間を延ばす。しかし持ち時間は決まっていますので、増やした分だけ一つひとつが薄くなります。薄く広くやった結果、どれも本番で使えない状態になるのが、最も避けたい形です。

捨てる判断の基準

逆に、どの学校を受けても外せないものがあります。計算と一行問題です。どの学校でも配点があり、しかも取りこぼしが最も起きやすい部分です。後から参入する子が最初に立て直すべきは、難問への対応ではなく、ここです。

実際に捨てる判断をした例

抽象的な話になりましたので、具体例を挙げます。

8月から参入されたご家庭で、志望校が偏差値50台前半の学校だったケースです。過去問5年分を確認したところ、算数では「速さとグラフ」「図形の移動」「立体の切断」がほぼ毎年出題される一方、「場合の数」の複雑な問題と「ニュートン算」は5年間で一度も出ていませんでした。

そこで、後者の2単元は「今はやらない」に回しました。市販の問題集を頭から進めていれば、この2単元にそれぞれ1週間ずつ、合計2週間を使っていたことになります。23週しかない時期の2週間は、全体の9%です。

同時に、頻出だった3単元には通常の倍の時間を割り当てました。結果として、同じ持ち時間で頻出単元の完成度が上がる形になります。この判断があるかないかで、秋以降の過去問の点数が変わってきます。

※上記は判断の例です。出題傾向は学校ごとに異なりますので、志望校の過去問でご確認ください。

なお、捨てる判断をするタイミングは早いほど効きます。11月に「この単元は出ないから飛ばそう」と決めても、そこまでに使った時間は戻りません。過去問を先に見るのは、点数を測るためではなく、この判断を早く下すためです。6年生から参入する場合、過去問は最後にやるものではなく、最初に見るものだと考えてください。

捨てたものは記録に残す

やらないと決めたものは、消さずにリストに残してください。「今はやらない」と「もう不要」は違います。秋に時間が生まれたときに戻れるようにしておくと、判断が軽くなります。

6. 教科の優先順位——算数から手をつける理由

限られた時間で全教科を同じように扱うことはできません。順位をつけます。

優先度教科・分野理由
1算数(計算・一行問題)配点が高く、取りこぼしが最も多い
2算数(志望校の頻出単元)仕上げに時間がかかるため早期着手が要る
3理科(計算分野)算数の延長として同時に進められる
4国語(読解の型)伸びに時間差があるが、型は短期で入る
5社会・理科(知識分野)直前期でも積み増しが利く

算数を最優先にする理由は3つあります。第一に、多くの学校で配点が最も高いこと。第二に、特殊算や図形の解法は積み上げが必要で、短期間では仕上がらないこと。第三に、点差が最も開きやすい教科であることです。

逆に、社会と理科の知識分野を後回しにできるのは、覚える作業が中心で、直前期でも積み増しが利くためです。後から参入したご家庭が、覚えやすい社会から手をつけて安心してしまうのは、順序としては損です。点数は出やすいのですが、合否を分ける場所ではありません。

算数のどの単元から手をつけるか

算数を最優先にすると申し上げましたが、算数の中にも順序があります。志望校の頻出単元を最優先にするのが原則ですが、それとは別に、どの学校でも土台になる単元があります。

順序単元理由
1計算(分数・小数・逆算)全設問の土台。ここが遅いと時間が足りなくなる
2割合と比速さ・売買・濃度・図形の相似すべてに繋がる
3速さ出題率が高く、比の理解がそのまま使える
4平面図形(面積・角度)標準問題として配点がある
5志望校の頻出単元過去問から選ぶ

順序の根拠は依存関係です。割合と比が入っていない状態で速さをやっても、解法を丸暗記するだけになります。後から参入する場合、この依存関係を無視して単元を並べると、進んでいるように見えて定着しません。

逆に、割合と比さえ入っていれば、そこから先の単元は理解の速度が上がります。ここに時間をかける判断は、遠回りに見えて近道です。

国語をどう扱うか

国語は、伸びるまでに時間がかかる教科です。ただし、記述の型と設問の読み方だけは短期間で入ります。「設問の語尾に答えの語尾を合わせる」「本文から根拠を線で引く」といった作法は、教えれば数週間で身につきます。

読解力そのものを1年で大きく変えることは難しいのですが、型を入れるだけで取れる点は着実に増えます。ここだけは手をつけてください。

7. 塾に入り直すか、家庭学習でいくか

6年生から参入する場合、最初の分岐がここです。

大手進学塾に入る場合の関門

大手進学塾のカリキュラムは、5年生までに主要単元をほぼ終える設計になっています。6年生の教室では、それを前提とした演習と応用が進みます。

途中から入る場合の関門は「授業についていけるか」の一点です。判断の目安は、直近の模試で塾が想定している偏差値帯に届いているかどうか。届いていない状態で集団授業に入ると、授業時間がそのまま消えてしまうことがあります。週に3日通って、理解できないまま3日が過ぎる。これは持ち時間の少ない受験生にとって、かなり重い損失です。

一方、届いている場合、塾に入る利点は大きなものがあります。カリキュラム、教材、模試、進路情報、同じ目標を持つ集団。これらを自前で用意するのは簡単ではありません。

大手以外の選択肢

塾は大手進学塾だけではありません。6年生からの参入では、次のような選択肢も検討の対象になります。

いずれの場合も、確認していただきたいのは「6年生からの入塾実績があるか」です。実績がある塾は、途中から入る生徒がどこでつまずくかを知っています。この経験の有無は、指導の中身に出ます。

家庭学習でいく場合

近年、共働き世帯の増加や通塾にかかる時間と費用、お子さまの特性への配慮といった理由から、塾に通わずに中学受験に取り組むご家庭が増えています。中堅校を志望する場合、この形で合格されるご家庭は実際にあります。

ただし、成立する条件があります。次の章で整理します。

8. 塾に通わない選択をする場合の3つの条件

塾に通わずに進める場合、次の3つが揃っているかどうかを先に確認してください。

この3つのうち、いちばん抜けやすいのが1つ目です。保護者がこの役を担う場合、仕事や家事と並行して、教材を選び、計画を組み、進み具合を確認し、うまくいかなければ組み直す作業が発生します。お子さまの学習そのものより、この管理の負担のほうが大きくなることが少なくありません。

ここを外部に任せるという選択が、家庭教師を入れる形になります。

9. 家庭教師を入れる場合、どこを任せるか

家庭教師を「勉強を教えてもらう人」として考えると、6年生からの参入では効果が薄くなります。週1回2時間で教えられる量には限りがあるためです。

後から参入するご家庭にとって価値が大きいのは、教える部分よりも、設計する部分です。

任せると効果が大きい自宅でやったほうがよい
志望校の過去問を読み解き、やる単元を決める計算・漢字などの反復
1週間ごとの学習計画を組み直す暗記系の作業
算数の解法の型を入れる丸つけと直しの記録
模試の結果から次にやることを決める教材を解き進める作業そのもの
併願とコース選択の設計

とくに「やる単元を決める」部分は、後から参入するご家庭では効きます。時間が足りない状態では、何をやるかより何をやらないかの判断が結果を分けるためです。この判断には、志望校の出題を知っていることが要ります。

週1回か、週2回か

頻度についてもよくお尋ねをいただきます。6年生からの参入の場合、次のような考え方をします。

週1回であれば、設計と算数の型を入れることに集中します。1回の中で、前の週の確認、新しい単元の解法、次の週の計画までを回す形です。家庭での実行が回っていることが前提になります。

週2回にする場合、1回を算数、もう1回を国語または理科に充てるか、あるいは2回とも算数に充ててペースを上げるかで分かれます。後から参入する場合、算数に2回充てる判断のほうが結果に繋がりやすい傾向。ただし本人の消化が追いつかないと逆効果ですので、最初は週1回から始めて、様子を見て増やす形をおすすめしています。

費用の目安

費用についても触れておきます。当ネットワークの指導料は1時間3,500円から7,000円で、教師一人ひとりが設定しています。週1回2時間であれば、月におよそ28,000円から56,000円です。これに交通費が加わります。

大手進学塾の6年生の費用は、講習費や模試代を含めると年間で相当額になります。塾に通わず家庭教師のみで進める場合、総額では抑えられることもありますし、塾と併用する場合は上乗せになります。どちらが安いかは、組み方によって変わります。

ご検討の際は、月額ではなく入試までの総額で見積もってください。6年生の8月からであれば、残りは約6か月です。ここに講習費や模試代、受験料、前受け校の受験費用まで含めた総額を出しておくと、途中で判断に迷いません。

入れる時期

参入と同時に入れるのが最も効率的です。走り出してから半年後に「うまくいっていない」と気づいて入れる場合、すでに使ってしまった半年は戻りません。後から参入する場合、最初の設計を外すことの損失が、通常より大きくなります。

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教師に伝えておきたいこと

お引き合わせの面談では、次の点を伝えておくと設計が早く進みます。飾らずにお話しいただいて構いません。

とくに3つ目は大事です。保護者が受験を望んでいて本人がそうでもない場合と、本人が行きたい学校を持っている場合とでは、進め方がまったく変わります。この点を隠したまま始めると、途中で必ず表面化します。

10. 6年生からの参入でつまずく3つのパターン

パターン1:先に走っている子と同じ量をやろうとする

3年間かけて広く学んできたご家庭と同じ範囲を、1年で追おうとする形です。物理的に入りませんので、どこかで破綻します。

後発の戦い方は、範囲を絞ることです。同じ量をやるのではなく、違う量をやる。ここを最初に受け入れられるかどうかが分かれ目になります。

パターン2:志望校を先に決めて動かさない

参入時点で第一志望を固定し、学力が届かないと分かってからも変えないケースです。秋以降、模試の判定が動かない状態が続き、本人の意欲が先に切れます。

志望校は、学力の伸びを見ながら調整するものだと考えてください。目標を下げることは、負けではありません。通える学校に合格することが目的であって、特定の1校に入ることが目的ではないはずです。

パターン3:親が教える役まで抱える

塾に通わない選択をした場合に起きやすい形です。計画を組み、教材を選び、教え、丸つけをし、直しを見る。ここまで抱えると、多くのご家庭で親子関係のほうが先に消耗します。

教える役は、外に出せる部分です。保護者にしかできないのは、生活を整えることと、判断の場面で一緒に考えることです。そちらに力を残してください。

11. 保護者がやること、やらなくていいこと

6年生からの参入では、保護者の負担が通常より大きくなります。だからこそ、役割を絞ってください。

やっていただきたいこと抱えなくてよいこと
起床時刻を一定に保つ学習内容を教える
学習の記録をつける(何をやったか)教材を自力で選び切る
志望校の情報を集める解法の正しさを判定する
模試の申し込みと日程管理模試の判定に一喜一憂する
判断の場面で一緒に考えるすべての判断を代わりに下す

記録は、短くていい

「学習の記録をつける」と書きましたが、細かい表を作る必要はありません。日付と、その日にやった単元名だけで十分です。1日1行、10秒で書ける形にしてください。

この記録があると、2つのことができるようになります。1つは、同じ単元にどれだけ触れたかが分かること。後から参入する場合、1回やっただけで進んでしまいがちですが、記録を見れば「この単元は1回しか触れていない」と気づけます。

もう1つは、模試の結果と照らし合わせられることです。落とした分野が記録にない場合、単純にやっていないだけです。記録にあるのに落としている場合は、やり方のほうを見直します。この切り分けができるだけで、次の一手の精度が上がります。

「今からでは遅い」と言わないでください

後から参入したお子さまは、周りとの差を本人がいちばん感じています。そこに「もっと早く始めていれば」という言葉が乗ると、動く理由がなくなります。

過去は変えられませんが、残り23週の使い方は変えられます。お子さまに伝えるべきは、遅れた事実ではなく、これから何をどう絞るかです。

模試との付き合い方

後から参入した場合、最初の模試の判定は厳しく出ます。当然のことです。3年かけて範囲を終えた層と同じ土俵で測っているためです。

ここで見ていただきたいのは、判定でも偏差値でもありません。正答率が50%を超えている問題を、いくつ落としているかです。半分以上の受験生が取れている問題を落としている数が、そのまま次に埋めるべき量になります。正答率20%台の問題を落としていても、この時期は気にしなくて構いません。

もう一点、まだ学習していない単元から出題されている場合、その失点は実力を表していません。答案を見て「やっていないから落とした」のか「やったのに落とした」のかを分けてください。この2つを混ぜて落ち込むのが、いちばんもったいない受け取り方です。

中学受験をやめるという判断について

最後にひとつ。進めていく途中で、中学受験をやめる判断が最善になることがあります。お子さまが受験勉強そのものを苦痛に感じている場合、続けることで失うもののほうが大きくなります。

2026年度から高校授業料の支援制度が拡充され、私立高校についても全世帯が支援の対象となりました。高校進学時の選択肢は、以前より広がっています。中学受験をやめる判断は、失敗ではありません。取れる道が一つ増えただけです。

まとめ:間に合うかどうかは、志望校の選び方で決まる

この記事の要点

  • 関西の受験率は10.90%と過去最高を更新。小6の児童数が減るなかで受験者は4年連続で増えており、高学年からの参入が増えている
  • 「間に合うか」は志望校のレベルで答えが変わる。中堅校であれば6年夏からでも狙える帯である
  • 2027年度入試の統一解禁日は1月16日の見込み。8月5日時点で164日、約23週
  • 関西は首都圏より約2週間早く、関西圏外校の前受けを入れると実質の締切は12月になる
  • 最初に決めるのは「やること」ではなく「やらないこと」。志望校の過去問5年分から絞る
  • 教科の優先順位は算数が最上位。社会・理科の知識分野は後からでも積み増しが利く
  • 塾に入り直す場合の関門は「授業についていけるか」の一点
  • 塾に通わない場合、計画を組める大人・外部模試・志望校情報の3つが要る
  • 家庭教師に任せて効果が大きいのは、教える部分より「やる単元を決める」設計の部分
  • 志望校は1校に固定せず、レベル帯の違う候補を3つ持っておく

最後にひとつだけ

6年生から始めるご家庭には、共通して感じられていることがあります。出遅れたという引け目です。説明会で周りの保護者の話を聞くと、なおさら強くなります。

ただ、私たちが現場で見てきた範囲で申し上げると、合否を分けているのは通塾期間の長さではありません。3年通っていても、範囲を絞れないまま本番を迎えるご家庭はあります。逆に、1年で範囲を絞り切って合格されるご家庭もあります。差がついているのは、期間ではなく設計のほうです。

もちろん、期間が長いほうが有利な場面はあります。最難関校を目指す場合はとくにそうです。だからこそ、志望校の選び方が起点になります。持ち時間に合った目標を置けば、後から参入することは不利ではなくなります。

後から参入する場合の戦い方は、先に走っている子と同じことをすることではありません。範囲を絞り、志望校を動かしながら、取れる問題を取り切る。この形にできれば、6年生からでも届く帯は確かにあります。

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よくある質問

Q 6年生の8月から中学受験を始めても間に合いますか?
A 志望校のレベルによって答えが変わります。最難関校を目指す場合、8月からの参入で合格圏に届くケースは多くありません。一方、偏差値50台前後の学校であれば、6年生の夏からの開始で合格されるご家庭は実際にあります。まず志望校を1校に絞らず、複数のレベル帯で候補を出し、そこから逆算する順序をお勧めします。
Q 塾に入り直すべきでしょうか。それとも家庭学習でいくべきでしょうか。
A 6年生の途中から大手進学塾に入る場合、すでに進んでいるカリキュラムの途中に入ることになります。授業についていけるかどうかが最初の関門です。判断の目安は、直近の模試で塾の基準となる偏差値帯に届いているかどうかです。届いていない場合、集団授業の時間がそのまま消えてしまうことがあります。家庭学習で進める場合は、学習計画を組める大人がが要ります。
Q 6年生から始める場合、どの教科から手をつければよいですか?
A 算数を最優先にしてください。中学受験の算数は特殊算や図形の解法を積み上げる教科であり、短期間で仕上げることが最も難しく、また配点が高い学校が多いためです。理科の計算分野も算数の延長として扱います。社会と国語の知識分野は、比較的あとからでも取り返しがききます。
Q 過去問はいつから始めればよいですか?
A 6年生から参入した場合でも、関西の日程では9月から10月には一度解いてみるほうが確かです。点数を出すためではなく、志望校の出題と現在の学力の距離を測るためです。まったく歯が立たない場合は、志望校の選び直しを含めた判断がが要ります。関西の統一解禁日は例年1月中旬で、首都圏より約2週間早い点にご注意ください。
Q 周りはみんな3年生から通塾しています。今から始めるのは無謀でしょうか。
A 通塾期間の長さと合格は、必ずしも比例しません。3年間かけて広く学んできたご家庭に対し、あとから参入する場合は範囲を絞る戦い方になります。志望校の出題に必要な範囲だけを選んで仕上げるほうが、限られた期間では現実的です。ただしこの絞り込みには判断が必要で、独力で行うと外すことがあります。
Q 中学受験をやめて高校受験に切り替えるという選択はどう考えればよいですか?
A 検討する価値のある選択肢です。判断の材料としては、お子さまが受験勉強そのものを苦痛に感じているかどうか、志望校が公立中学からでも十分に狙える進路につながっているかどうかが挙げられます。2026年度から高校授業料の支援制度が拡充されており、進路の選択肢は以前より広がっています。中学受験をやめる判断は、失敗ではありません。
Q 6年生からの参入で、保護者は何をすればよいですか?
A 学習内容そのものを教える役割は、無理に引き受けないでください。優先していただきたいのは、生活リズムを一定に保つこと、学習の記録をつけること、志望校の情報を集めることの3つです。教える役割まで抱えると、親子関係のほうが先に消耗します。
Proチューターズネットワーク 編集部
中学受験を専門とするプロ家庭教師マッチングサービス「Proチューターズネットワーク」が運営する受験情報メディア。最難関校から中堅校まで、志望校のレベルを問わずご相談を承っています。兵庫・神戸を拠点に、関西の中学受験の情報を、保護者の方に向けて発信しています。

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