1. 「辞めたい」は、辞めるか続けるかの話ではない
「塾、辞めたい」——お子さまからこの言葉が出たとき、多くのご家庭が辞めるか続けるかの二択で考え始めます。夏を越えたこの時期は、とくに増えます。
ただ、この二択で考えると行き詰まってしまいます。「辞めたい」という言葉の中身が、まだ分かっていないためです。
量が多すぎるのか、授業が理解できないのか、人間関係なのか、そもそも受験に納得していないのか。中身によって、打つ手がまったく変わります。量の問題ならコマ数を減らせば済みますし、理解度の問題ならクラスを変えれば戻ります。
まずは中身を切り分けるところから始まります。辞めるか続けるかは、そのあとで決まります。二択で悩んでいる間は、どちらを選んでも根拠がない状態です。
切り分けが済むと、選べる手も見えてきます。塾に相談すれば済むのか、それとも環境を変える段階なのか。その判断が、材料のある状態でできるようになります。
この記事では、中身を4つに切り分ける方法を先に示します。そのうえで、塾内で解決できること、転塾のコスト、辞める場合に必要になるものを順に整理します。読み終えたときに、次にやることが1つ決まる形を目指しています。
2. 「辞めたい」の中身を4つに切り分ける
| 型 | 本人の言い方 | 実際に起きていること | 方向 |
|---|---|---|---|
| 量の型 | 宿題が終わらない/時間がない | 処理量が本人の能力を超えている | 減らす。塾内で調整できる |
| 理解の型 | 授業がわからない/ついていけない | クラスの水準と現在地が合っていない | クラスを変える |
| 関係の型 | 行きたくない/楽しくない | 教室内の人間関係、講師との相性 | 塾内で対応するか、転塾 |
| 目的の型 | なんで受験するの/中学どこでもいい | 受験そのものに納得していない | 塾の問題ではない |
まずは、この4つのどれに当てはまるかを見ていきます。
4つのうち、転塾でしか解決しないのは関係の型だけです。量と理解の型は、いま通っている塾の中で対応できることがありますし、目的の型にいたっては、塾を変えても何も変わりません。
4つのうち、どれが多いか
ご相談を受けている範囲では量の型がいちばん多く、次が理解の型で、関係の型と目的の型はそれより少なくなります。
ところが保護者が最初に疑うのは、逆の順序であることが多くあります。「友達と何かあったのでは」「そもそも受験したくないのでは」と、関係や目的の型から考え始めてしまう。気持ちの問題として受け取るためです。
実際には、処理量が能力を超えているという単純な話であることが多いので、まずは量から疑うのが順序です。ここは調整で戻せます。
実際には複数が重なっている
多くの場合、これらは連鎖しています。宿題が終わらない状態(量の型)が続くと、授業の予習が追いつかなくなり、理解が落ちます(理解の型)。理解できない授業に座り続けると、教室が居心地の悪い場所になります(関係の型)。
入口は量であることが多いのに、表面化するのは関係のほうです。だから「友達といるのが嫌」という言葉を聞いて転塾を検討しても、次の塾で同じことが起きてしまいます。
連鎖しているぶん、どこから手をつけるかで結果が変わります。表面に出ている関係の型に対応しても、根にある量の型が残っていれば、時間が経てば同じ場所に戻ります。
見分け方はひとつで、いつからそう言い始めたかが手がかりになります。入塾直後から言っているなら関係の型、途中から変わったなら、量か理解の型が先に来ている可能性が高くなります。
言葉にできないことのほうが多い
切り分けが難しい理由が、ひとつあります。小学生は、自分の状態を言葉にする語彙をまだ持っていないという点です。
大人であれば「処理量が能力を超えている」と説明できることを、子どもは「めんどくさい」「だるい」と表現しますので、実際に起きていることと口から出る言葉が一致しません。
ですから「めんどくさい」を怠けと受け取ってしまうと、切り分けを誤ります。その言葉の下に何があるかを、こちらから探しにいく必要が出てきます。次の章では、その聞き方を扱います。
3. 本人に聞くときの手順
中身を切り分けるには本人に聞くしかありませんが、その聞き方には注意が要ります。
「なんで辞めたいの」と聞かない
この聞き方だと、理由を問い詰められていると受け取られてしまいます。本人は説明できる言葉を持っていないことが多く、たいていは「なんとなく」で終わります。
代わりに、選ばせる形にします。
4つの型を、本人の言葉に置き換えて聞く
- 「宿題の量が多すぎる?」(量の型)
- 「授業がわからんようになってきた?」(理解の型)
- 「教室に行くのがしんどい?」(関係の型)
- 「そもそも受験したくない?」(目的の型)
4つ並べて、一番近いものを選ばせる形にします。自由回答より答えやすく、しかも切り分けがそのまま進みます。
タイミングを選ぶ
聞く場面も結果に影響します。避けたいのは、テストの結果が返ってきた直後や、宿題が終わっていない夜です。その場の感情が、そのまま答えに乗ってしまいます。
塾がない日の、何もない時間帯がいちばんです。食事のあと、移動中の車の中、寝る前。本題として構えて話すより、流れの中で聞くほうが本音が出ます。
その場で判断を伝えない
答えを聞いても、すぐに「じゃあ辞めよう」「もう少し頑張ろう」と返さないでください。子どもは親の反応を見て、次から言うことを調整するからです。
「そうか、教えてくれてありがとう」で一度終えて、判断は数日置いてから伝えます。その場で決めてしまうと、本人が結果に責任を感じてしまいます。
聞いたあと、時間を空ける
1回で答えが出ないこともあります。その場では「別に」で終わったのに、数日後になって本当のことを言い出す——これはよくあることです。
1度聞いて答えが薄かったら、2〜3日空けてもう一度聞くほうが届きます。間を置くと本人の中で言葉が整理されますが、連日問い詰めると、逆に閉じてしまいます。
言葉と様子が食い違うとき
本人が「続けたい」と言っているのに様子が限界に見える、というずれも珍しくありません。親を落胆させたくないという気持ちが働くためです。
この場合は、記録を取るのがいちばん早くなります。1週間の就寝と起床の時刻、宿題の残り具合、授業後の表情。この3つを書き出すだけで、印象ではなく事実で判断できるようになります。
4. 塾内で解決できること
辞める前に、まず塾へ相談する余地があります。多くのご家庭が知らないまま辞めていますが、塾内で対応できる選択肢はあります。
| 相談できること | 効く型 |
|---|---|
| クラスの変更(下のクラスへ) | 理解の型 |
| 受講科目を減らす | 量の型 |
| オプション講座の取りやめ | 量の型 |
| 宿題の優先順位をつけてもらう | 量の型 |
| 曜日や校舎の変更 | 関係の型 |
| 担当講師の変更 | 関係の型 |
相談する相手を選ぶ
塾に相談するときは、誰に言うかで結果が変わってきます。相談窓口が分かれているためです。
教室長や責任者はクラス編成や受講科目の変更といった制度の話ができますし、授業を担当している講師は、その科目の中での対応(宿題の優先順位、どこを飛ばすか)に詳しくなります。
量や理解の型であれば、まずは授業担当の講師に話すのが早道です。「今週の宿題、どれを優先すればいいですか」という具体的な聞き方をすると、答えが返ってきやすくなります。
クラス変更や科目の削減といった制度の話になったら、そこで教室長へ。この順番を踏むと、話が早く進みます。
クラスを下げることは後退ではない
いちばん相談しにくいのが、クラスを下げることかもしれません。ただ、理解できない授業を週に何時間も受け続けるほうが、時間の損失は大きくなります。
判断の目安は2つで、授業中に質問ができているか、そして授業後に内容を説明できるか。この2つが崩れているなら、クラスの水準と現在地が合っていません。
下のクラスで手応えを取り戻してから戻る子は実際にいますし、逆に、上のクラスにしがみついたまま自信を失っていく子もいます。
科目を減らすという手
クラス変更が難しい場合には、受講科目を減らすという選択肢もあります。
中学受験では算数の配点が高い学校が多く、しかも積み上げに時間がかかります。逆に社会や理科の暗記分野は、あとからでも取り返しがききますので、ここを一時的に外して算数に時間を寄せる形が取れることがあります。
塾によっては科目単位の受講ができない場合もありますので、まずは可否の確認からになります。可能であれば、辞めずに負荷だけを下げられます。
相談するときの言い方
「辞めます」から入ると引き止めの話になりますので、「続け方を相談したい」から入るほうが通ります。
具体的には、こう伝えます。「宿題の処理が追いついていないようで、直しまで手が回っていません。優先順位をつけていただくか、科目を絞ることは可能でしょうか」。塾側も、言われないと状況が分かりません。
相談しても変わらなかった場合
塾に相談したのに状況が変わらないこともありますが、この場合、原因は2つに分かれます。
1つは、塾の側に対応する仕組みがない場合です。クラス編成が固定されている、科目単位の受講を認めていない、宿題は一律という運用になっている。制度上できないことは、頼んでも動きません。
もう1つは、伝わっていない場合です。「宿題が多くて」と伝えただけでは、塾側は「みなさん同じ量です」と返してきます。何が、どれくらい、どう終わっていないのか——具体的な数字を添えると、話が変わります。
「今週の宿題、算数だけで4時間かかって、まだ半分残っています」——ここまで言えば、塾側も対応を考えます。2回目の相談で状況が動くご家庭は、少なくありません。
5. 転塾を選ぶ場合、何がコストになるか
転塾には見えにくいコストがありますので、事前に把握しておきたいところです。
カリキュラムの継ぎ目
塾ごとに単元の進む順番が違います。前の塾で扱った単元を新しい塾がすでに終えていれば、その単元は自習で埋めることになりますし、逆に、まだ扱っていない単元を新しい塾では前提として授業が進むこともあります。
この継ぎ目は、転塾直後の1〜2か月に集中して現れます。成績が一時的に下がることがありますが、多くの場合それは継ぎ目によるもので、実力が落ちたわけではありません。
継ぎ目の穴は、事前に確認できます。新しい塾の入塾時に、これまでの進度を伝えて、抜けている単元を教えてもらえます。それが分かっていれば、埋める作業を計画に入れられます。
慣れるまでの時間
解法の書き方、ノートの取り方、テストの形式。塾ごとに作法が違いますので、新しい形に慣れるまで1か月から2か月かかります。
この期間は、学習の中身より適応に力を使います。残り時間が少ない時期ほど、このコストは重くなります。
塾によっては入塾時期による割引や免除がある場合もありますので、問い合わせの段階で確認しておくと、判断材料が増えます。
費用の再発生
入塾金、教材費、テスト代。多くの塾で転塾時にこれらが再度かかりますし、前の塾の教材が使えなくなることも珍しくありません。
「今度こそ合う塾」を探し続けない
転塾が2回、3回と続いているご家庭では、塾を変えること自体が目的になっていることがあります。
合わない理由が量や理解の型だった場合、塾を変えても同じことが起きます。新しい塾でも宿題は出ますし、クラス分けもあります。環境が変わっても、処理量と現在地のずれは残ったままです。
2回目の転塾を検討する段階になったら、一度立ち止まって、前回なぜ合わなかったのかを書き出しておきたいところです。「合わなかった」ではなく「宿題が週◯時間ぶん多かった」まで具体化できていれば、次の判断が変わります。
転塾のタイミング
コストを最小にするなら、カリキュラムの区切りに合わせるのが基本です。多くの塾は学年の切り替わりのほか、2月と9月に単元の区切りがあります。
| 時期 | 転塾のしやすさ |
|---|---|
| 学年の切り替わり(2月) | 継ぎ目が最も小さい |
| 9月 | 単元の区切りに当たることが多い |
| 6年生の春 | やや遅いが、まだ間に合う |
| 6年生の秋以降 | 勧めにくい |
6年生の秋以降は、塾が志望校別の演習に入っている時期です。ここで移るとその演習の蓄積を失いますので、得られるものより失うもののほうが大きくなりがちです。
6. 学年・時期別に見た判断
取れる選択肢は、学年によって変わってきます。
| 学年 | 取れる選択肢 | 優先する順序 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 小4 | すべて | いったん休むことも可 | 学習習慣を優先する時期 |
| 小5前半 | すべて | 塾内調整→転塾 | 継ぎ目のコストが小さい |
| 小5後半 | 塾内調整・転塾・併用 | 塾内調整を先に | カリキュラムが本格化 |
| 小6前半 | 塾内調整・併用 | 塾内調整→併用 | 転塾は継ぎ目が重い |
| 小6秋以降 | 塾内調整・併用 | 塾内調整→併用 | 転塾は勧めにくい |
とくに小6前半で転塾が難しくなる理由は、志望校別の演習が始まる前に新しい環境へ適応し終える必要があるためです。夏を挟むと、講習の内容も塾によって違います。春のうちに判断するか、塾内調整と併用で乗り切るかの二択になります。
全学年に共通する原則が1つあります。塾内で調整できることを試してから、外の選択肢を考える。この順序を守ると、無駄なコストを払わずに済みます。
小4・小5前半なら、休む選択も残っている
この表で見ていただきたいのは、判断の正しさではなく取れる選択肢の数のほうです。学年が上がるほど、選べる手は減っていきます。
小4であれば、いったん離れて学習習慣を立て直し、5年生から再開するという形が取れますし、小5前半なら転塾のコストもまだ小さい。ところが6年生の秋になると、残るのは塾内調整と併用だけになります。
迷っている期間そのものが、選択肢を減らしていきます。ですから期限を決めてください。「今月中に塾に相談して、それで変わらなければ次を考える」——この形にすると、それまでは迷わずに済みます。
関西の日程を踏まえると
関西の中学入試には統一解禁日があり、例年1月中旬に設定されていて、首都圏の2月1日より約2週間早くなります。
したがって、6年生の判断時期も前倒しになります。首都圏の情報をもとに「12月まで様子を見よう」と考えると、対応する時間が残りません。
兄姉のときと同じ塾でよいか
上のお子さまが通っていた塾に下のお子さまも入れているご家庭は多く、手続きに慣れているぶん、自然な流れではあります。
ただ、上の子に合った塾が、下の子にも合うとは限りません。学年も性格も志望校も違えば、噛み合う環境が違ってくるのは自然なことです。
とくに、上の子が要領よく通えていた場合、下の子の様子が「頑張りが足りない」ように見えます。ここで比較の言葉が出ると、本人はさらに言い出しにくくなります。兄姉の実績を基準にせず、目の前のお子さまの状態だけを見てください。
7. 塾なしで進める場合に必要な3つ
塾を辞めても中学受験そのものは続けられますが、それには条件があります。
- 学習計画を組める大人がいること——何をいつまでにやるかを決め、進み具合を見て組み直す役。この役がいないと、教材だけが積み上がります
- 外部模試で客観的に測る手段——家庭内だけで判断すると、現在地を見誤ります。定期的に受けてください
- 志望校の情報を集める手段——出題傾向、日程、コース制の有無、併願の組み方。塾が提供していた情報を自分で取りにいくことになります
3つが揃わない場合
次の3つのうち1つでも欠けると、塾なしの形は苦しくなります。
計画を組める人がいなければ教材を進めることが目的化しますし、外部模試を受けていなければ、できているつもりのまま秋を迎えます。志望校の情報がなければ、出題に合わない勉強を続けることにもなります。
逆に言えば、この3つを外部から補える形にすれば、塾なしでも成立します。家庭教師を入れる、模試だけ塾の外部生として受ける、学校説明会に足を運ぶ。組み合わせ方はいくつかあります。
いちばん抜けやすいのは1つ目
保護者がこの役を担う場合、仕事や家事と並行して、教材を選び、計画を組み、進み具合を確認し、うまくいかなければ組み直すという作業が発生します。
お子さまの学習そのものより、この管理の負担のほうが大きくなることが少なくありません。塾を辞めて楽になるはずが、別の負担が増える形です。
ここを外部に任せるという選択が、家庭教師を入れる形になります。
模試だけ受けるという方法
塾を辞めても模試は外部生として受験できますし、多くの塾が、通っていない生徒の模試受験を受け付けています。
これを使うと、学力の測定だけを外注できます。塾の授業は受けないが、母集団の中での位置は把握しておく。この形なら、費用を抑えながら現在地を見失わずに済みます。
受ける模試は、志望校の受験者が多いものを1つ選んでそこに固定してください。複数を受けると偏差値の基準が違うため、比較ができなくなります。
8. 併用という中間の選択肢
辞めるか続けるかの二択に見えて、実際には中間があります。
| 形 | 向く状況 |
|---|---|
| 塾の科目を減らして、減らした分を個別で | 特定科目だけついていけていない |
| 塾は継続し、宿題の整理だけ外部に頼む | 量の型。授業自体は理解できている |
| 塾を辞めて、家庭教師のみに切り替える | 集団の形が本人に合っていない |
| いったん休んで、時期を見て再開 | 小4・小5前半で消耗が激しい |
4つ目の「いったん休む」は、制度として休塾を認めている塾でのみ取れます。席を残したまま1〜3か月離れる形で、復帰時に再入塾金がかからないことが多くあります。小4から小5前半であれば、現実的な選択肢になります。
とくに2つ目は、量の型に効きます。授業は理解できているのに宿題が終わらない場合、必要なのは教える人ではなく、仕分ける人です。塾の課題のうち、志望校の出題に出ない単元を外すだけで、処理量はかなり減ります。
※費用の総額比較については、別記事「塾と家庭教師の併用は月いくら?」で詳しく扱っています。
いったん休むという選択
辞めるか続けるかの中間に、もうひとつあります。休塾です。
制度として休塾を認めている塾があります。1か月から3か月ほど席を残したまま離れる形で、復帰するときに再入塾金がかからないことが多くあります。
この選択が取れる時期は限られていて、小4から小5前半であれば、休んで戻ることが現実的です。6年生では離れている間にカリキュラムが進むため、戻ったときの負荷が重くなります。
制度の有無は塾によって違いますので、規約を確認するか、直接聞くのが早くなります。辞める前に休むという段階があると分かるだけで、判断の重さが変わります。
9. 辞める場合の手続きと時期
辞めると決めた場合には、手続きの実務があります。
申し出の時期
多くの塾で、退塾の申し出は前月中が目安になります。月謝の締め日の関係で、締め日を過ぎると翌月分が発生することがありますので、規約を確認しておいてください。
年度の途中で辞める場合は、月の途中か月末かでも扱いが変わります。日割りの制度がある塾は多くありませんので、月単位での精算になることを前提に時期を決めてください。
確認しておくこと
- 申し出の期限(何日までか)
- 教材費・テスト代の扱い(前払い分が返るか)
- 模試の申し込み状況(受験予定のものが残っていないか)
- 使っていた教材を持ち帰れるか
とくに4つ目は見落としがちです。塾のテキストは、辞めたあとも自習の教材として使えます。解き直しの余地が残っている場合は、持ち帰れるかどうかも確認事項になります。
模試の申し込みは、とくに確認しておきたいところです。塾生としての申し込みが残っている場合、退塾後は受験できなくなることがあります。秋以降の模試は受験校を決める材料になりますので、外部生として申し込み直せるかを聞いておくと安心です。
次を決めてから辞める
順序としては、次の形を決めてから辞めるほうが安全です。辞めてから考えると、空白期間が生まれてしまいます。
6年生であれば、この空白は取り返しがききません。転塾するなら入塾の手続きを済ませてから、家庭教師に切り替えるなら体験授業を受けてから。受け皿がある状態で辞めてください。
小4や小5で意図的に休む場合は別で、この場合は空白そのものが目的ですので、期間を決めて離れる形になります。
年度の途中で辞める場合
年間の教材費を前納している場合は、返金の有無が塾によって分かれますので、契約時の書面を確認してください。金額が大きい場合、辞める時期を年度末に合わせるという判断もあります。
10. 塾に伝えるときの文面
伝え方の例を用意しました。そのまま使っていただいて構いません。
まず相談する場合
例:続け方を相談したいとき
いつもお世話になっております。
ひとつご相談なのですが、ここのところ宿題の処理が追いついていないようで、直しまで手が回っていない状態が続いています。受講科目を減らすか、宿題の優先順位をつけていただくことは可能でしょうか。
本人の様子を見ながら進めたいと考えております。お時間のあるときにご相談させてください。
要点は3つで、塾を責めない、事実だけ伝える、こちらから提案を添える。「量が多すぎます」ではなく「処理が追いついていない」と状況の説明にすると、受け止められやすくなります。
退塾を伝える場合
例:区切りをつけるとき
これまでご指導いただき、ありがとうございました。
家庭で相談しました結果、学習の進め方を見直すことにいたしました。つきましては、○月末をもって退塾とさせていただければと存じます。
本人も先生方によくしていただいたと申しております。急なご連絡となり申し訳ございません。
理由を細かく説明する義務はありませんので、「家庭で相談した結果」で足ります。引き止められた場合も、同じ言葉を繰り返せば済みます。
また、伝える手段はメールや連絡帳で問題ありません。対面で伝えるほうが誠実だと考える方もいらっしゃいますが、その場で理由を問われると答えに詰まってしまいます。文面のほうが、双方とも冷静でいられます。
避けたい伝え方
| 避けたい | 言い換え |
|---|---|
| 成績が上がらないので | 進め方を見直すことにしました |
| 子どもが行きたくないと言うので | 家庭で相談した結果です |
| 宿題が多すぎるので | 処理が追いついていないようで |
| 他の塾を検討していて | (言わない) |
とくに「子どもが行きたくないと言う」は避けたいところです。塾側からは反論のしようがなく、後味だけが残ってしまいます。家庭側の判断として述べる形にしてください。
11. 保護者が「辞めさせたい」と思っているとき
ここまでは、本人が辞めたいと言った場合について書いてきましたが、逆のケースもあります。
本人は続けたいと言っているが保護者から見ると限界に見える、あるいは費用の負担が重い。この場合は、判断の材料が変わってきます。
まず、判断を分けて考える
保護者が辞めさせたいと考える理由は、大きく2つに分かれます。費用の問題か、本人の状態の問題か。この2つは、手当てがまったく違います。
混ざったまま考えると、判断が重くなります。「お金もかかるし、本人もしんどそうだし」と両方を同時に抱えると、どちらの解決策も見えてきません。まずは、どちらが主なのかを決めてください。
費用が理由の場合
辞める前に、コマ数と科目を減らす選択肢も残っています。全部やめるか全部続けるかの二択ではありませんし、オプション講座を切るだけで月額が大きく変わることもあります。
また、費用の話を本人に伝えるかどうかにも判断が要ります。伝える場合は、「お金がないから」ではなく「配分を変えることにした」という言い方のほうが、本人が自分のせいだと受け取りにくくなります。
費用の見直しは、辞める以外にも手があります。オプション講座を切る、季節講習の一部を受けない、模試の受験回数を絞る。組み合わせると、月額が大きく変わることがあります。
本人の状態が理由の場合
前述の記録が、ここで効いてきます。就寝と起床の時刻、宿題の残り具合、授業後の表情。1週間分の記録があれば、本人と話すときの材料になります。
「しんどそうに見える」と伝えるより、「今週、寝るのが12時を過ぎた日が4日あった」と伝えるほうが、本人も受け止めやすくなります。
そのうえで、本人の意向を聞いてください。親が決めて通告する形にすると、辞めた後で「勝手に決められた」という記憶が残ってしまいます。材料を並べて、一緒に決める形にしたいところです。
夫婦で意見が分かれるとき
意見が分かれる原因は、多くの場合、把握している情報の量の差にあります。日々の学習を見ている側とそうでない側では、見えているものが違うからです。
まずは同じ材料を見てください。直近の模試の結果、1週間の学習時間と睡眠時間、塾から出ている課題の現物。この3つを並べると、議論が印象論から離れます。
12. この切り分けを、誰と一緒にするか
ここまでの手順は、ご家庭でも進められます。4つの型に当てはめて、塾に相談し、それでも変わらなければ次を考える。この順序で方向が見えるなら、それがいちばん早い形です。
難しくなるのは、量の型と理解の型の見分けのほうです。
宿題が終わらない状態は、量が多すぎるから起きることもあれば、理解できていないから1問に時間がかかっているだけのこともあります。外から見ると、どちらも「終わらない」という同じ症状に見えてしまいます。
見分けるには、実際に解いている様子を見るか答案を見ることになります。1問あたりにかかっている時間、途中式の書き方、消しゴムの跡。ここから、詰まっているのが量なのか理解なのかが分かります。
中学受験の指導実績がある教師
23名が登録しています
うち8名は、灘・甲陽学院・東大寺学園・洛南・西大和学園・大阪星光学院・神戸女学院・四天王寺などの最難関校に生徒を送り出した指導実績を持っています。学生講師は在籍していません。
在籍状況は時期により変わります。担当できる教師がいるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。
ご相談いただく場合、うかがうのは次の点です。通っている塾の課題の量と内容、直近の模試の結果、1週間の学習時間と睡眠時間、そして本人が何をしんどいと言っているか。ここから、塾内で調整すれば戻るのか、環境を変える段階なのかを切り分けます。
塾内で調整できると判断される場合は、そうお伝えします。その場合、家庭教師を入れる必要はありません。
それでも、一度お話を聞かせてください
ここまで読んで、「うちはどの型に当てはまるのか」と思われたかもしれません。
ご家庭だけで抱えていると、「これは相談していいことなのか」を決めるところから始まります。そこで数週間が過ぎるのが、いちばん惜しい。
学年と、いま気になっていることを一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。家庭教師以外の選択肢をお伝えすることもあります。
力になれることがあるなら、なりたいと思っています。
合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。
相談のときに、あると助かるもの
ご相談いただく際、次のものがあると切り分けが速くなりますが、写真で撮ったもので十分です。
- 塾から出ている今週の宿題(現物)
- 直近の模試やテストの結果
- 1週間の就寝・起床の時刻
- 通っている塾の名前とクラス
- 本人が言っている言葉(そのままで結構です)
とくに1つ目が判断に効きます。宿題の現物を見れば、量が多いのか、難度が合っていないのかがおおよそ分かります。同じ「終わらない」でも、10問で3時間かかっているのか、30問を機械的にこなしているのかで、手当てがまったく変わります。
まとめ:中身が分かれば、選べる
この記事の要点
- 「辞めたい」を辞めるか続けるかの二択で考えると行き詰まる。まず中身を切り分ける
- 中身は量・理解・関係・目的の4つ。転塾でしか解決しないのは関係の型だけ
- 入口は量であることが多く、表面化するのは関係のほう
- 本人に聞くときは「なんで辞めたいの」ではなく、4つの型を並べて選ばせる
- 辞める前に塾に相談する。クラス変更・科目削減・宿題の優先順位づけが可能な場合がある
- クラスを下げることは後退ではない。理解できない授業を受け続けるほうが損失は大きい
- 転塾のコストはカリキュラムの継ぎ目・慣れる時間・費用の再発生の3つ
- 転塾は学年の切り替わりか9月が原則。6年生の秋以降は勧めにくい
- 塾なしで進めるには、計画を組める大人・外部模試・志望校情報の3つが要る
- 辞めるか続けるかの間に、科目を減らす・宿題の整理だけ外部に頼むといった中間がある
辞めても、辞めなくても
最後に1つ。この判断に、正解はありません。
辞めて別の形にしたご家庭も、続けて最後まで走ったご家庭も、どちらもいます。違いは選んだ結果ではなく、選ぶときに材料を持っていたかどうかです。
4つの型のどれなのか、塾内で試せることは試したか、残り時間はどれだけあるか。ここが分かったうえで決めたなら、あとで振り返っても納得できます。
「辞めたい」という言葉は、状況を変えてほしいという合図であって、辞めることが目的ではありません。本人も、そこまで整理して言っているわけではないはずです。
中身が4つのどれなのか、それが分かれば打つ手も決まります。まずは本人に、4つを並べて聞くところからです。答えが返ってきた時点で、判断の半分は終わっています。