1. 8月上旬、学校の宿題と受験勉強が正面衝突する

8月に入ると、ご家庭からのご相談の内容が変わります。7月は「夏期講習についていけるか」でしたが、8月は「学校の宿題が手つかずのまま残っている」に変わります。

この衝突は、日程を並べれば起きるべくして起きています。夏期講習は7月下旬から8月中旬にピークが来る組み方が多く、学校の宿題は8月末が締切です。つまり、いちばん忙しい時期と、いちばん締切が近づく時期が、同じ8月に重なります。

受験生のご家庭でよく起きる2つのパターン

  • 後回し型——宿題を8月末まで放置し、最後の3日で一気に片づける。この3日間、受験勉強が完全に止まる
  • 前倒し型——7月中に宿題を全部終わらせようとして、夏期講習の復習が手つかずになる

どちらも損をします。前者は9月の入り方が悪くなり、後者は夏期講習の内容が定着しません。宿題そのものが悪いのではなく、扱い方が量の問題として処理されていることに原因があります。

受験生の家庭で、衝突がとくに重くなる理由

宿題と受験勉強の両立は、受験をしないご家庭でも起きる話です。ただ、受験生のご家庭では負荷の出方が違います。理由は、8月に空いている時間の総量がもともと少ないためです。

講習がある日は、授業のほかに移動、宿題、確認テストの直しが乗ります。ここに学校の宿題を足す余地は、ほとんど残っていません。つまり受験生にとっての宿題は「空いた時間にやるもの」ではなく、「受験勉強の枠を削って入れるもの」になります。削る前提である以上、どこを削るかを決めないまま始めると、削られるのは受験勉強のほうです。

もう一つ、8月の宿題には期限の性質があります。受験勉強は「今日やらなくても明日できる」ものですが、宿題には提出日があります。期限のあるものと、ないもの。この2つを同じ机の上に並べると、人は期限のあるほうを優先します。放っておくと、宿題が受験勉強を押しのける形になるのは、意志の問題ではなく仕組みの問題です。

宿題は、量ではなく種類の問題です。種類ごとに処理の仕方がまったく違うため、まとめて「宿題」と呼んでいる間は、いつまでも見通しが立ちません。この記事では、分類してから処理する手順を具体的に整理します。

2. まず全部出す——宿題の棚卸しから始める

最初にやることは、着手ではありません。全量を紙に出すことです。

学校から配られた一覧表、冊子、プリント、連絡帳に書かれた口頭指示——これらを机の上に全部並べます。受験生のご家庭では、この作業を飛ばして「とりあえずドリルから」と始めてしまうことが多いのですが、全量が見えていない状態で走り始めると、8月下旬に忘れていた課題が出てきます。

棚卸し表の作り方

次の5項目を、課題ごとに書き出します。所要時間だけは、実際に5分やらせてみて測ってください。頭の中での見積もりは、たいてい実際の半分になります。

課題名種類残り量1回あたり締切
計算ドリル作業22ページ1ページ8分8月末
漢字プリント作業6枚1枚15分8月末
読書感想文思考800字合計5時間8月末
自由研究思考+提出物未着手合計8時間8月末
観察日記習慣毎日1日5分毎日
音読カード習慣毎日1日5分毎日

※課題の種類は学校によって異なります。上の表は書き方の例です。

この表を作ると、残り時間の総量が数字で出ます。上の例なら、作業系が22×8+6×15=266分でおよそ4時間30分、思考系が13時間、習慣系が1日10分です。合計するとおよそ18時間になります。

18時間という数字が出た瞬間に、話が変わります。「終わらないかもしれない」という漠然とした不安が、「18時間をどこに置くか」という配分の問題に変わるためです。棚卸しにかかる時間は30分ほどですが、この30分を惜しんで走り始めることが、8月最大の事故につながります。

棚卸しで漏れやすい課題

毎年、8月下旬になって出てくる課題には傾向。次のものは、一覧表に載っていないことがあるため、意識して確認してください。

とくに最後の2つは、締切が9月に入ってからのため、8月の棚卸しから抜け落ちます。9月は模試や過去問が始まる時期ですので、ここに作品制作が残っていると、そのぶん受験勉強が押し出されます。任意の応募については、この夏は見送るという判断があってよい部分です。

棚卸しは、お子さま本人に書かせてください。保護者が代わりに書くと、全量を把握しているのが保護者だけになり、締切の管理まで保護者の仕事になります。字が汚くても、本人の手で書いた表であることに意味があります。

3. 宿題は4種類ある——作業・思考・提出物・習慣

棚卸しができたら、次は分類です。宿題は性質によって4つに分かれ、それぞれ処理の原則が違います。

種類具体例特徴処理の原則
作業系計算ドリル、漢字、書き取り所要時間が読める毎日に分散する
思考系読書感想文、自由研究、新聞づくり時間が読めないまとまった時間を確保する
提出物系ポスター、工作、標本、絵材料の調達が要る買い物を先に済ませる
習慣系観察日記、音読カード、一行日記溜めると復元できない最優先で毎日回す

事故が起きやすいのは、習慣系と提出物系

保護者が心配されるのは、たいてい思考系です。読書感想文と自由研究が残っていると、目に見えて重く感じます。ところが実際に8月末で行き詰まるのは、習慣系と提出物系のほうです。

習慣系は、溜めた時点で取り返しがつきません。観察日記を10日ぶん空けてしまうと、その10日に何があったかを思い出せません。ここで書けるものがなく、事実でないことを書く方向に流れてしまうご家庭があります。お子さまにとって、これは学習面より大きな損失です。

提出物系は、材料が手に入らないと止まります。8月末の週末に工作の材料を買いに行こうとして、必要なものが売り切れていた、という事態は毎年起きます。買い物のリストだけは、8月上旬のうちに作っておいてください。

4つに分けると、頼める相手が変わる

分類にはもう一つ効果があります。誰に頼めるかが変わることです。

作業系は、丸つけを保護者が引き受けられます。提出物系は、材料の調達を分担できます。習慣系は、声をかける役を決めれば回ります。一方で思考系だけは、本人がやるしかありません。まとめて「宿題」と呼んでいる間は全部が本人の負担に見えますが、分けてみると、本人にしかできないのは思考系だけだとわかります。

お子さまの負担感が下がるのは、この事実が見えたときです。「全部ひとりでやらないといけない」と思っている状態と、「自分がやるのは感想文と自由研究だけ」とわかっている状態では、着手のしやすさが変わります。

受験生にとっての優先順位

この順番は、緊急度ではなく「取り返しのつかなさ」で並んでいます。作業系が最後に来るのは、いつでも取り返せるからです。

4. 作業系は「まとめてやらない」——15分に割って毎日に散らす

計算ドリル22ページを1日で終わらせることは、物理的には可能です。3時間ほど座っていれば終わります。ただ、それをやった日の受験勉強は消えますし、学習としては何も残りません。

まとめて処理すると、必ず後半が雑になります。字が荒れ、筆算の書き方が崩れ、見直しをしなくなります。この癖は、そのまま模試の答案に出ます。中学受験の算数では、筆算の書き方が乱れることが失点に直結するため、宿題で崩した書き方を9月に戻す作業が別途必要になってしまいます。

朝の15分に固定する

作業系の置き場所として、起床後の15分を勧めています。理由は3つあります。

3つ目が、受験生のご家庭にとっては大きい点です。学校の計算ドリルと、受験用の計算練習を別々に確保しようとすると、1日に2つの枠がが要ります。同じ枠にまとめてしまえば、時間の問題は解消します。学校の宿題を受験勉強の一部として扱う、という発想の転換です。

1日15分で、上の例なら計算ドリルは約18日、漢字プリントは並行して進めて13日ほどで終わる計算になります。8月4日から始めれば、いずれも8月中に収まります。

ただし、締切までの日数が足りない場合は分散にこだわらないでください。残り日数×15分が残り量に届かないなら、1日30分に増やすか、講習のない日にまとめる判断が要ります。棚卸し表の数字を見れば、この判断はすぐにできます。

5. 読書感想文を2日で終わらせる手順

読書感想文が重く感じられるのは、「本を読む」と「感想を書く」という性質の違う作業が1つにまとめられているためです。分けて考えると、2日で形になります。

1日目・前半:本を選ぶ(30分)

いちばん時間を失うのは、新しい本をここから読み始めることです。すでに読んだ本、あるいは学校の教科書に載っていた作品で十分です。課題図書の指定がある場合を除けば、選び直す必要はありません。

読んだことのある本を選ぶと、この時点で読書の時間がまるごと不要になります。8月の受験生にとって、これはかなり大きな差です。

読んだ本が思い出せないときの選び方

「読んだ本がない」と言われた場合でも、探す範囲を変えると見つかります。国語の教科書に載っていた物語、塾のテキストで扱った文章、学校の朝読書で読んだもの、家にある図鑑や伝記——このあたりまで広げると、たいてい候補が出てきます。

塾の国語テキストに載っていた文章は、実は感想文と相性が良い素材です。すでに一度読み込んでいるうえ、設問を解く過程で内容を細かく追っているためです。作品の一部を扱った文章であれば、その本を図書館で借りて該当部分だけ読み直せば足ります。

厚い本を選ぶ必要もありません。感想文の評価は本の難しさでは決まりませんし、薄い本のほうが3つの場面を選びやすくなります。

1日目・後半:付箋を3枚だけ貼る

本を開いて、心が動いた場所に付箋を3枚貼らせます。3枚と数を決めるのが要点です。「気になったところに貼って」と言うと、10枚貼るか、1枚も貼らないかのどちらかになります。

3枚の内訳は、たとえば「いちばん驚いた場所」「自分と似ていると思った場所」「読み終わって思い出した場所」といった指定を出すと、選びやすくなります。

2日目・前半:付箋について口で説明させる

3枚それぞれについて、「なぜここに貼ったのか」を口で言わせます。書かせるのではなく、話させてください。書く作業と考える作業を同時にやらせると、多くの子が止まります。

保護者は聞き役に回り、質問だけしてください。「それって、自分にも同じことがあった?」という一言が入ると、本の内容と本人の経験が結びつきます。感想文の質は、ここで決まります。

2日目・後半:型に流し込む

800字を5つの部分に分けます。分けた時点で、1つあたりの分量は原稿用紙の数行になり、書ける量に見えてきます。

構成内容目安の字数
書き出しどんな本か、なぜ選んだか100字
本論1付箋1の場面と、自分の経験200字
本論2付箋2の場面と、思ったこと200字
本論3付箋3の場面と、考えたこと200字
結び読み終えて変わったこと100字

1つだけ守っていただきたいのは、あらすじを書かないことです。あらすじで字数を埋めた感想文は、読み手にはすぐわかります。付箋を貼った3つの場面だけを扱えば、あらすじを書く余地はなくなります。

中学受験の国語との接続

この手順は、中学受験の記述問題の型とほぼ同じです。本文の特定箇所を根拠として示し、そこから自分の考えを述べる——これは記述問題で求められる作法そのものです。感想文を受験勉強と切り離さず、記述の練習として扱えば、8月の時間の使い方としては無駄になりません。

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6. 自由研究は、テーマ選びで9割決まる

自由研究で行き詰まるご家庭のほとんどは、テーマ選びで失敗しています。8月に入ってから選ぶ場合、条件は3つに絞られます。

植物の成長観察、発酵、結晶の育成といったテーマは、内容としては優れていますが、日数が必要です。7月から始めていれば良い選択ですが、8月上旬から着手するテーマとしては向きません。

受験理科と重なるテーマを選ぶ

中学受験生であれば、理科の頻出単元と重なるテーマを選ぶと、宿題と受験勉強が同じ作業になります。

テーマ受験理科での単元所要
水の温度と溶ける量の関係溶解度半日
食塩と砂糖で溶け方はどう違うか溶解度・水溶液半日
ひもの長さと振り子の周期振り子半日
いろいろな液体の重さくらべ密度半日
お湯の中で水はどう動くか対流・熱の伝わり方2時間

※加熱を伴う実験は、保護者の方が同席のうえで行ってください。

実際の進め方の例——水の温度と溶ける量

いちばん取り組みやすいテーマで、手順の目安を示します。所要はおよそ半日です。

この実験には、受験理科として面白い点があります。食塩は温度を上げてもそれほど溶ける量が増えません。予想が外れる可能性が高いということ。予想が外れると、考察に書くことが増えます。「思っていたのと違った」という経験は、そのまま考察の中身になります。

※お湯を扱う際は、やけどに注意し、保護者の方が同席してください。

まとめ方の型

模造紙でもレポート用紙でも、順番は同じです。目的、予想、方法、結果、考察、感想の6つで構成します。

このうち省かれやすいのが「予想」です。実験の前に「こうなると思う」を書かせてください。予想と結果を比べて、なぜ違ったのかを考える——この流れが理科の考察そのもので、中学入試の理科でも問われる思考の形です。予想が外れたほうが、考察は書きやすくなります。

結果は表かグラフにします。数字が並んだ表を作ること自体が、受験理科のグラフ読み取り問題の練習になります。

7. 受験勉強と宿題、1日のどこで切り分けるか

「受験勉強が先か、宿題が先か」という順序で考えると、答えが出ません。時間帯ごとに、置く種類を決めるほうが機能します。

時間帯置くもの目安理由
起床後作業系(計算・漢字)15分負荷が軽く、入り口として機能する
午前受験勉強90〜120分頭が働く時間を受験に使う
午後前半受験勉強(演習)60分手を動かす作業に向く
午後後半提出物系・作業系の残り40分疲れていてもできる作業
習慣系+その日の直し25分記録は寝る前に固定する

原則は1つです。頭がいちばん働く時間帯を、受験勉強に渡すこと。宿題は、疲れている時間帯でも進むものが多いため、そちらに寄せます。この配分にしておくと、宿題をやった日でも受験勉強が止まりません。

講習がある日は、宿題を2つに減らす

上の配分は、講習のない日を想定しています。講習がある日は、そのまま当てはめると入りません。

講習日に置くのは、朝の作業系15分と、夜の習慣系だけにしてください。合計で20分ほどです。この2つだけは、どんなに忙しい日でも回します。提出物系や思考系を講習日に入れようとすると、講習の復習が飛びます。

日の種類宿題に充てる時間置く種類
講習がある日20分作業系15分+習慣系5分
講習がない日80分上記+提出物系・作業系の残り
思考系に充てる日5〜6時間感想文または自由研究のみ

8月の予定表に、この3種類の日を色分けして書き込んでみてください。思考系に充てる日が2日確保できているかどうかが、8月末の結果を分けます。確保できない場合は、講習の予定を動かせるかを塾に相談する余地もあります。

思考系だけは、1日まるごと充てる

読書感想文と自由研究は、この表に入れないでください。細切れにすると、毎回「どこまでやったか」を思い出すところから始まり、進みません。講習のない日を1日選んで、そこにまとめて置くほうが、合計時間は短くなります。

8月に講習のない日が2日あるなら、1日目を自由研究、2日目を読書感想文に充てる。この2日は受験勉強を軽くしてかまいません。2日で片づけて、残りの日を受験勉強に戻すほうが、だらだら10日引きずるより結果が良くなります。

8. 小4・小5・小6で変わる、宿題の扱い方

同じ宿題でも、学年によって意味が変わります。

小学4年生——管理を覚える年

この学年では、宿題を終わらせること自体より、棚卸し表を自分で書いて自分で消していく経験のほうが価値があります。受験勉強の時間を削ってでも、この管理の練習に時間を使う判断は、十分に合理的です。

ここで身につけた「全量を出してから始める」という手順は、6年生になったときの過去問の管理にそのまま使えます。

小学5年生——捨てる判断を覚える年

5年生は、宿題と受験勉強の量が初めて正面から衝突する学年です。両方を完璧にこなす時間は、多くの場合ありません。

ここで「どれを完璧にやり、どれを最低限で通すか」を本人に決めさせてください。保護者が決めてしまうと、6年生になっても自分で判断できません。判断が多少ずれていても、決めた経験のほうが後で効きます。

小学6年生——総時間の上限を先に決める

6年生は、宿題にかける総時間の上限を先に決める方法を勧めています。棚卸しで18時間と出たなら、「宿題には合計15時間まで」と決めて、その中に収まるように完成度を調整します。

受験学年である以上、宿題の完成度を上げることに時間を使いすぎるのは、順序として無理があります。提出できる形にすることを目標にして、そこで止める判断が要ります。この割り切りは、保護者が言葉にして許可を出さないと、お子さまの側からは言い出しにくいものです。

兄姉がいる場合の注意

上のお子さまが受験を経験されているご家庭では、そのときのやり方をそのまま下のお子さまに当てはめてしまうことがあります。学年が違えば、宿題の量も種類も本人の管理能力も違います。同じ手順が合うとは限りません。

とくに、上のお子さまが要領よく片づけられた場合、下のお子さまの進み方が遅く見えます。ここで比較の言葉が出ると、着手そのものが止まります。棚卸し表は、そのお子さま本人の分だけを見てください。

中学生の場合は、判断が逆になる

高校受験を控えた中学生の場合、考え方が変わります。中学校の課題は提出状況が評価に反映されるため、受験生であっても提出物を後回しにする判断は取りにくくなります。2学期以降の評定が出願に関わるため、夏の課題を落とすことの影響が小学生とは違います。

この場合も、提出そのものは守ったうえで、完成度をどこまで求めるかで調整するほうが安全です。

9. 2学期の始業日から、締切を3本立てる

8月末の締切が1本しかないと、必ず最後に集中します。締切を3本に分けてください。

締切対象時期の目安
第1締切提出物系(材料の調達と制作)8月中旬
第2締切思考系(感想文・自由研究)8月中旬〜下旬
第3締切作業系の完了始業日の3日前
毎日習慣系(記録類)始業日の前日まで

第3締切を始業日の前日ではなく3日前に置くのは、抜けが見つかったときの余白を作るためです。棚卸し表から漏れていた課題は、たいてい最後の数日で見つかります。

まず、自分の学校の始業日を確認する

2学期の始業日は、8月下旬から9月初旬にかけて学校ごとに差があります。同じ市内でも学校によって違うことがありますので、学校からの配布物や学校のサイトで、実際の日付を確認してください。ここが1週間ずれると、逆算の全体がずれます。

3本立てると、進捗が測れるようになる

締切を分ける効果は、集中を防ぐことだけではありません。途中で「間に合うかどうか」を判定できるようになります。

締切が8月末の1本だけだと、8月20日の時点で間に合うかどうかは誰にもわかりません。第1締切を8月中旬に置いておけば、その日に提出物系が終わっているかどうかで、全体の遅れが判定できます。遅れているとわかれば、そこで配分を組み直せます。

この判定を8月下旬までできないことが、毎年の事故の原因になっています。気づいたときには打つ手が残っていない、という状態を避けるための3本立てです。

受験生にとっての本当の締切は、9月の始まりにある

ここが、受験生のご家庭に特に意識していただきたい部分です。

宿題を9月に持ち越すと、受験勉強の予定と重なります。9月は模試が入り、6年生であれば過去問に着手する時期でもあります。関西の中学入試は例年1月中旬の統一解禁日から始まり、首都圏の2月1日と比べて持ち時間が短いため、9月以降の予定は最初から詰まっています。

2027年度入試の統一解禁日は1月16日となる見込みです。9月1日を起点にすると、本番までは137日、週に換算しておよそ19週です。この19週に宿題の残りが食い込むと、削られるのは受験勉強のほうになります。

※統一解禁日および各校の入試日程は、各校の募集要項で最終確認をお願いします。

10. 保護者が手を出してよい範囲、出さないほうがよい範囲

毎年ご相談の多い部分です。線引きの基準を1つ挙げるなら、学校で先生に聞かれたとき、本人が説明できるかどうかです。

手を出してよい出さないほうがよい
材料の買い物、道具の準備作品を作る、色を塗る
締切とスケジュールの管理本文を書く、下書きを書く
実験時の安全確保と補助実験の考察を口述して書かせる
質問して考えを引き出す感想の言葉そのものを与える
清書用紙や模造紙の用意誤字以外の書き直し指示

感想文で保護者が言葉を与えると、その文章は本人の語彙で書かれていないため、読めばわかります。それ以上に大きいのは、中学受験の記述練習になる機会が失われることです。書けないまま止まっているように見えても、質問を投げて待つほうが、結果として早く進みます。

もう一つの基準として、「来年も同じ手伝いを続けられるか」という見方があります。今年ぜんぶ肩代わりしてしまうと、来年も同じことが起きます。受験学年になったときに手が回らないのは、目に見えています。今年のうちに、本人が回せる範囲を少しずつ広げておくほうが、来年が楽になります。

質問の形を覚えておく

この4つで、たいていの場面は動きます。答えを与えるのではなく、本人の中にあるものを言葉にさせる形です。

11. 終わりそうにないと分かったときの判断

棚卸しをした結果、どう配分しても収まらないという結論になることがあります。この場合にやってはいけないのは、全部に均等に手をつけることです。全部に手をつけて全部が中途半端という状態が、いちばん損をします。

捨てる順番を決める

優先して守るのは、次の順です。

思考系を最後に置くのは、内容が軽くなっても提出はできるためです。感想文を800字ぴったりに仕上げることと、受験勉強の土台を守ることを比べたとき、受験学年であれば後者を取る判断があってよいと考えています。

「終わらない」と言えないまま抱えている場合

お子さまが自分から「終わらない」と言えず、進んでいないことを隠しているケースもあります。8月下旬になって初めて発覚する、という形です。

この場合、隠していたことを問い詰めても状況は動きません。言えなかった理由は、たいてい叱られることへの予測です。ここで叱ると、次に困ったときも言わなくなります。9月以降、模試の結果や過去問の点数についても同じことが起きます。

棚卸し表を一緒に書き直して、いまの状態を数字にするところから始めてください。「どれくらい残ってる?」ではなく、「一緒に数えよう」という形にすると、話が進みます。数えてしまえば、あとは配分の問題です。

学校に相談するという選択肢

終わらないと分かった時点で、担任の先生に相談する方法もあります。事情を伝えたうえで、提出の形や期限を調整していただけることがあります。何も言わずに未提出のまま始業日を迎えるより、事前に相談したほうがお子さまの負担は軽くなります。

相談する際は、終わっていない課題の名前と、どこまで進んでいるかを具体的に伝えてください。状況が正確に伝わるほど、調整の話がしやすくなります。

受験勉強のほうを止めない

最後に、いちばん申し上げたい点です。宿題を片づけるために受験勉強を数日止めることは、8月であればまだ取り返せます。宿題に追われて9月以降の土台を作れないまま2学期に入ると、そこからの回復には数か月かかります。

どちらを優先するかの判断が難しい場面では、外から見てもらうという方法もあります。いま抱えている課題の全量と、受験勉強の進み方を第三者が見ると、どこを削るべきかは比較的短時間ではっきりします。私たちの無料体験授業でも、この時期は現在地の確認から入ることがほとんどです。学習の進め方そのものは、お引き合わせした教師がご家庭と相談しながら組み立てていきます。

まとめ:宿題は「片づける対象」であって「頑張る対象」ではない

この記事の要点

  • 8月は夏期講習のピークと宿題の締切が重なる。衝突は日程の構造から起きている
  • 着手の前に棚卸しをする。全量を数字にすると、不安が配分の問題に変わる
  • 宿題は作業・思考・提出物・習慣の4種類に分かれ、処理の原則が違う
  • 事故が起きるのは習慣系と提出物系。溜めると復元できない、材料が要る
  • 作業系は朝15分に固定し、受験の計算練習の枠と兼ねる
  • 読書感想文は既読の本+付箋3枚+5部構成で2日で形になる
  • 自由研究は1〜2日で終わり、家にあるもので、数字が出るテーマを選ぶ
  • 頭が働く午前は受験勉強に渡し、宿題は疲れた時間帯に寄せる
  • 締切は3本立てる。第3締切は始業日の3日前に置く
  • 保護者の線引きは「本人が説明できるか」。答えではなく質問を渡す

宿題は、頑張って乗り越えるものではなく、種類ごとに片づける対象です。分類して、置く場所を決めて、順番に消していく。この手順にすると、受験勉強を止めずに8月を終えられます。

もし今年うまくいったら、その棚卸し表を捨てずに残しておいてください。来年の夏に、同じ形で書き直すだけで済みます。課題の名前が変わるだけで、種類も処理の原則も変わりません。受験学年の夏に、この1枚があるかどうかは大きな差になります。

反対に、今年うまくいかなかった場合も、その記録には価値があります。どの種類で詰まったのか、どこで見積もりを外したのかがわかっていれば、来年は同じ場所で止まりません。8月末に一度だけ、実際にかかった時間を表に書き足しておいてください。作業は5分で終わります。

棚卸し表を1枚書くところまでを、今日のうちに済ませてみてください。残り時間の総量が数字で見えるだけで、8月の見通しは変わります。

よくある質問

Q 学校の宿題は、受験勉強より後回しにしてよいですか?
A 種類によって変わります。毎日の記録が必要な観察日記や音読カードのような課題は、後回しにすると復元できないため、受験勉強より先に片づける必要が出てきます。一方で計算ドリルや漢字の書き取りは、朝の15分に固定して受験勉強のウォームアップとして使えるため、後回しというより組み込む形が向いています。読書感想文や自由研究のようにまとまった時間が要る課題は、講習のない日を1日充てるほうが結果的に短く終わります。
Q 読書感想文は、親が手伝ってもよいのでしょうか?
A 手伝う範囲を分けて考えてください。本選びの相談、付箋を貼る作業の説明、書いた文章を読んで質問すること、清書用紙を用意することは、手伝ってよい範囲です。一方で、感想の言葉そのものを与えたり、本文を書いたりすることは避けてください。判断の基準は「学校で先生に聞かれたとき、本人が説明できるか」です。親の語彙で書かれた文章は読めばわかりますし、中学受験の記述練習になる機会も失われます。
Q 自由研究のテーマが決まりません。何を基準に選べばよいですか?
A 8月に入ってから選ぶ場合は、条件を3つに絞ってください。1〜2日で結果が出ること、家にあるもので実験できること、結果が数字や表で出ることの3つです。植物の成長観察や発酵のように日数がかかるテーマは、この時期からでは間に合わないことがあります。中学受験生であれば、水の温度と溶ける量の関係、食塩と砂糖の溶け方の違い、振り子の周期といった理科の頻出単元に重なるテーマを選ぶと、宿題と受験勉強が同じ作業になります。
Q 計算ドリルや漢字の書き取りは、受験勉強の役に立ちますか?
A 使い方次第で役に立ちます。まとめて一気に終わらせると、字が荒れて処理が雑になるだけで、学習としてはほとんど残りません。1日15分に割って毎日続けると、受験勉強に必要な計算の速度と正確さを保つ枠として機能します。学校の宿題と受験の計算練習を別々に確保しようとすると時間が足りなくなるため、同じ枠にまとめてしまうほうが1日の設計は楽になります。
Q 毎日つける課題を、まとめて書かせてもよいですか?
A 観察日記や一行日記のように毎日の記録が求められる課題は、まとめて書こうとすると事実を思い出せず、書けない状態になります。ここは早い段階で気づくかどうかの差が大きい部分です。もし数日ぶん空いてしまった場合は、覚えている範囲で正直に書き、空白の日は空欄のままにするか、事情を担任の先生に伝えるほうが結果として無理がありません。取り繕うことを覚えさせるより、そのほうがお子さまのためになります。
Q 中学生の場合も、同じ考え方でよいですか?
A 判断が逆になる部分があります。中学生の課題は提出状況が評価に反映されるため、受験生であっても提出物を後回しにする判断は取りにくくなります。高校受験では2学期以降の評定が出願に関わってくるため、夏の課題を落とすことの影響が小学生とは違います。優先順位をつける場合も、提出そのものは守ったうえで、完成度をどこまで求めるかで調整するほうが安全です。
Q どうしても終わりそうにないとき、学校に相談してよいのでしょうか?
A 相談してかまいません。事情を伝えたうえで、提出の形や期限を調整していただけることがあります。何も言わずに未提出のまま始業日を迎えるより、事前に相談したほうがお子さまの負担も軽くなります。相談する際は、終わっていない課題の名前と、どこまで進んでいるかを具体的に伝えてください。全部できていませんという伝え方より、状況が正確に伝わります。
Proチューターズネットワーク 編集部
中学受験を専門とするプロ家庭教師マッチングサービス「Proチューターズネットワーク」が運営する受験情報メディア。最難関校から中堅校まで、志望校のレベルを問わずご相談を承っています。兵庫・神戸を拠点に、関西の中学受験の情報を、保護者の方に向けて発信しています。

中学受験の指導実績がある教師

23名が登録しています

うち8名は、灘・甲陽学院・東大寺学園・洛南・西大和学園・大阪星光学院・神戸女学院・四天王寺などの最難関校に生徒を送り出した指導実績を持っています。学生講師は在籍していません。
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それでも、一度お話を聞かせてください

ここまで読んで、「うちは何から捨てればいいのか」と思われたかもしれません。

ご家庭だけで抱えていると、「これは相談していいことなのか」を決めるところから始まります。そこで数週間が過ぎるのが、いちばん惜しい。

学年と、いま気になっていることを一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。家庭教師以外の選択肢をお伝えすることもあります。

力になれることがあるなら、なりたいと思っています。

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