「内申点が足りないから、あの高校はもう無理」——三者面談でそう言われた、あるいは言われそうで、検索している。この記事は、そんな保護者の方とお子さまのために書いています。
先に結論をお伝えすると、「内申が足りない=不合格」ではありません。多くの公立入試の合否は、内申点と当日の学力検査点の合算で決まるので、不足分を当日点で上回れば、数字の上では届く。ただし、どこまで挽回できるかは、「志望校の配点構造」と「不足幅」で決まるため、根性論でも悲観でもなく、まず数字で現在地を確かめることが、出発点になる。実際、検索候補には「内申 足りない 諦める」「内申 10足りない」といった切実な言葉が並びますが、その多くは、配点を確かめる前に結論を急いでいるように見えるのです。
この記事では、大阪・兵庫の実例で配点構造の違いを確かめたうえで、不足5点・10点・それ以上のそれぞれで何が現実的か、内申を重視しない入試ルートの探し方、残り期間での内申の上げ方、そして当日点で挽回する学習の組み立てまでを扱います。最難関受験を支えてきた現場の視点で、整理していきましょう。
1. 結論:内申不足は「配点構造」で戦い方が決まる
内申が足りないと分かったとき、最初にやるべきなのは、勉強量を増やすことではありません。自分の受験の「配点」を正確に知ることです。同じ「内申5点不足」でも、内申と当日点の比率によって、挽回の難しさはまったく変わってくる。
そもそも内申点はどう決まるか——評定と観点別評価の基本
前提を短く整理しておくと、内申点の素材は、通知表の9教科×5段階の評定で、素点としては45点満点のイメージが全国共通ですが、入試ではこれを、各都道府県が独自の式で換算する(大阪は3学年分を450点満点に、兵庫は中3分を250点満点に、という具合です)。
そして評定そのものは、定期テストの点数だけでなく、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という、観点別評価の組み合わせで決まります。つまり内申点は、①観点別評価→②評定→③都道府県の換算式、という3段階で作られる数字。この構造を押さえると、「どの段階なら、まだ動かせるか」が見えてきますし、後で述べる挽回策も、すべてこの3段階のどこかに働きかけるものです。
内申と当日点の比率は、都道府県と高校でここまで違う
内申点の扱いは全国一律ではなく、対象学年・満点・当日点との比率のすべてが、地域と学校で違います。近畿の2府県を例に、見てみましょう。
| 地域例 | 内申の対象学年 | 配点の仕組み | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 大阪府(一般選抜) | 中1〜中3 | 内申450点+学力検査450点。比率は高校ごとに複数タイプ | 当日点の比重が大きいタイプを選べば挽回余地が広がる |
| 兵庫県(一般選抜) | 原則中3のみ | 内申250点+学力検査250点の1:1。内申は主要5教科×4倍+実技4教科×7.5倍 | 実技4教科の比重が大きく、複数志願選抜では第1志望に加算点あり |
大阪府は中1からの成績が対象になる一方で、学力検査と内申の比率が高校ごとにタイプ分けされていて、当日点を重く見るタイプの高校なら、試験当日での逆転の余地が広がります。兵庫県は原則として中3の評定のみが対象で、主要5教科の評定合計を4倍、音楽・美術・保健体育・技術家庭の実技4教科を7.5倍して、250点満点に換算する。つまり、実技4教科のほうが1点あたりの価値が大きいという、全国的にも珍しい構造です。
この2府県だけでも、「内申が足りないときに何をすべきか」の答えが変わることが分かるでしょう。大阪なら当日の比重が大きい選抜タイプの確認、兵庫なら中3の評定(とくに実技)の立て直しと当日点の設計、という具合です。制度は年度で変わることがあるので、お住まいの都道府県の最新の選抜要項で確認してください。
「足りない」を数値化する——差分を当日点に換算する
配点が分かったら、次は不足分を、3つの手順で数字にしていきます。
- 志望校の合格目安を調べる——塾や模試会社が公表している内申と当日点の目安、学校説明会での情報などから、合格ラインのイメージをつかみます。
- 自分の内申見込みとの差分を出す——三者面談や通知表から現時点の見込みを確認し、目安との差を「点数」で出します。
- 差分を当日点に換算する——内申と当日点が1:1の配点なら、内申1点の不足は当日1点の上積みで相殺できます。換算後の「当日で上積みすべき点数」が、この受験の本当の目標値です。
たとえば兵庫県の場合、実技教科の評定1の差は換算で7.5点、学力検査に置き換えると15点分に相当する重みがあります。逆に言えば、この構造を知らずに「5教科の勉強量」だけで挽回しようとすると、労力の割に点差が縮まらない。感情で「足りない」と嘆く段階から、「当日であと何点上積みするか」という数字の話に変えられたところで、受験は戦略になるのです。
2. 「何点足りないか」で変わる現実ライン——5点・10点・それ以上
次に、不足幅ごとの現実的なラインを整理しておきます。ここでいう「点」は、志望校の合格の目安に対する内申の不足を、当日点に換算したイメージです。配点や学校によって前提は変わるので、あくまで考え方の枠組みとして読んでください。
不足が5点前後——当日点の上積みで十分に射程圏
換算で5点前後の不足なら、当日の学力検査での挽回は、十分に現実的でしょう。5教科合計で5点というのは、「各教科1点」あるいは「得意科目での大問1つ」のレベルです。この場合にやるべきなのは、志望校を変えることではなく、失点源の特定と、取りこぼしの削減のほう。
ただし、注意しておきたい点があります。合格ライン付近では、周りの受験生も同じように仕上げてくるので、「5点分の上積み」は、模試で言えば偏差値1〜2程度の差を安定して出し続けることに相当し、決して「何もしなくても届く」差ではない。過去問と模試で、必要な点を「どの教科の、どの大問で」取るかまで、具体的にしておきましょう。
不足が10点前後——サジェストにも並ぶ「10足りない」は再設計ライン
検索候補に「内申 10足りない」という言葉が並ぶほど、多くのご家庭が、このゾーンで悩んでいます。換算10点の不足は、当日の学力検査で、受験者平均をはっきり上回る得点を5教科トータルで作る必要があるレベルです。不可能ではありませんが、「今まで通りの勉強を頑張る」では届きにくく、戦略の再設計が必要なラインと考えてください。
再設計の柱は3つで、第一に、得点源への集中投資——全教科を均等に上げるのではなく、伸びしろの大きい教科(多くの場合は数学・英語)に時間を寄せる。第二に、制度の活用——大阪なら当日の比重が大きい選抜タイプの高校、兵庫なら複数志願選抜の第1志望加算点(学区により20〜30点)を、計算に入れます。第三に、併願の設計——次の章で扱う「内申を重視しないルート」を保険として組み込み、挑戦の土台を安定させておくことです。
それ以上の不足——「その学校で戦うか」から見直す段階
換算で15点、20点と不足が広がる場合、当日点だけでの挽回は、上位層がひしめく難関帯では、相当に厳しい勝負になります。この段階で考えるべきなのは、「頑張れば届くか」ではなく、「どの土俵で戦うか」の選び直しでしょう。
選び直しには、志望校のランクを下げる以外にも、選択肢があります。内申の配点が軽い学校・選抜タイプへの変更、当日点勝負の私立への切り替え、あるいは、高校からではなく大学受験で本命に挑む長期戦略への転換。大切なのは、この判断を、偏差値や内申の数字だけでなく、お子さま本人の「どこで3年間を過ごしたいか」という意思と一緒に決めることです。数字の撤退戦を本人の納得のある選択に変えられるかどうかが、その後の高校生活の質を左右していきます。
| 不足幅(当日点換算) | 現実ライン | 主な打ち手 |
|---|---|---|
| 5点前後 | 当日の上積みで十分射程圏 | 失点源の特定と取りこぼし削減 |
| 10点前後 | 戦略の再設計ライン | 数英への集中投資・制度の活用・併願設計 |
| 15点以上 | 土俵の選び直しを検討 | 配点タイプ変更・当日勝負の私立・長期戦略への転換 |
3. タイプ別・挽回シナリオ——現場でよく見る3つの典型パターン
ここまでの考え方を、実際のご相談で繰り返し出会う典型的な姿に当てはめてみます。いずれも、個人が特定されないよう複数の事例を組み直したもので、結果には個人差がありますが、「配点構造から打ち手を導く」流れの参考にしてください。
ケース1:兵庫県で実技4教科の評定が低く、換算10点の不足
主要5教科は4〜5が並ぶのに、実技4教科に3が目立つ——兵庫県で意外と多いパターンです。実技×7.5倍という構造上、内申不足の大半が実技から来ていることが、換算してみて初めて分かる。
打ち手は二本立てで、内申の側は、評定の境目にいる実技2教科に絞って、ペーパーテスト・提出物・作品の仕上げを立て直す。当日の側は、数学の標準問題の精度と英語長文の処理速度で、換算した不足分の上積みを組み立てる。「実技で失っていた」と構造が見えたところで、5教科の勉強量だけで悩んでいた時期より、やることがずっと具体的になるでしょう。
ケース2:大阪府で中1・2の評定が低く、3学年合算では届かない
中3で持ち直したものの、大阪のように3学年が対象の地域では、過年度の評定は動かせません。この場合は、悔やむ時間を、「動く数字」のほうに振り向けます。
具体的には、学力検査の比重が大きい選抜タイプの高校をリストにして、過去問をもとに数学・英語に集中して投資する。同時に、中3の評定は、最後の定期テストまで取りにいきます。動かない数字(過年度の評定)と動く数字(当日点・中3の評定)を仕分けたご家庭ほど、秋以降の伸びが安定しているのです。
ケース3:不足が大きく、当日勝負型の私立を本命に切り替え
換算15点を超える不足で、公立の本命は数字の上ではかなり厳しい。一方で本人は演習型の学習が得意で、模試の素点は悪くない——このタイプでは、私立の当日勝負型を本命に格上げする選択が、現実的になってきます。
中学校を通じた事前相談で私立の基準と現在地を確かめ、当日の学力試験に照準を合わせて仕上げる。公立は、加算点や配点タイプを踏まえて、届く範囲を併願に置きます。「土俵を選び直す」ことは逃げではなく、本人の強みが評価される場所で戦うという、それ自体が戦略なのです。
3つのケースに共通するのは、感情ではなく、配点構造から打ち手を導いている点でしょう。まず換算、次に仕分け、それから投資先の決定——この順番さえ守れば、内申の不足は、ただの前提条件になります。
まだ申し込む段階ではない、という方へ
お子さまの学年と、いま気になっていることを一言だけお送りいただければ、ご返信します。お申し込みフォームのご入力は必要ありません。ご相談だけで終わっても問題ありません。
LINEで相談するProチューターズネットワーク公式LINE/ご相談は無料です
4. 内申を重視しない入試ルートの探し方
「内申が足りないと受験できない」と思い込んでいるご家庭は少なくありませんが、実際には、内申の比重が軽いルートは複数あります。ここを知っているかどうかで、選択肢の幅は大きく変わってくる。
私立高校——当日点勝負の色が濃く、基準は「事前に見える」
多くの私立高校の入試は当日の学力試験の比重が大きく、内申は、出願の目安や参考資料として扱われる傾向があります。とくに関西の私立入試は当日点勝負の色が濃く、公立で内申がネックになる受験生にとって、大事な選択肢でしょう。
また私立には、中学校を通じた事前相談などで、「この内申なら出願してよいか」の感触が前もって見えやすい、という特徴があります。つまり、公立のように本番までボーダーが読みにくいのではなく、基準に対する自分の位置を前もって確認できるのです。「私立 内申 足りない」と検索する前に、まず中学校の進路指導の先生に、志望する私立の基準と自分の現在地を確かめてもらうのが、いちばんの近道になります。
「内申が足りないと受験できない」は半分誤解——出願要件と合否判定は別物
ここで整理しておきたいのが、「出願できるか」と「合格できるか」の違いです。公立の一般選抜では、内申が低くても出願そのものは基本的にできる。内申は合否判定の材料であって、受験資格ではないからです。「受験できない」という言葉の多くは、「合格が厳しい」の言い換えか、一部の特別な枠の出願の目安と混同されたものでしょう。
逆に、特色選抜など一部の枠では、出願にあたっての目安や校内の判断が関わる場合があります。つまり正確には、「枠によって内申の効き方が違う」のです。志望校のどの枠で受けるのか、その枠で内申はどう使われるのかを、要項のレベルで確かめておくことが、思い込みによる機会の損失を防いでくれます。
当日点重視の枠・学校を探す3つの視点
内申の不足を前提に出願先を探すときは、次の3つの視点で、候補を洗い出していきます。
- 配点タイプで探す——大阪のように学力検査と内申の比率が高校ごとに違う地域では、当日点の比重が大きいタイプの高校をリストアップする
- 選抜の仕組みで探す——複数志願の加算点、学科ごとの選抜方法の違いなど、制度上有利に働く仕組みを確認する
- 私立の当日勝負型で探す——公立と併願しつつ、実力勝負で挑める私立を本命候補に格上げする選択肢も持つ
この洗い出しは、中学校の先生だけでなく、地域の入試制度に詳しい第三者(塾や1対1の指導者)にも見てもらうと、精度が上がるでしょう。制度の細部は毎年変わるので、「去年はこうだった」で判断しないことも大切です。
5. 残り期間でできる内申の上げ方——まだ動く部分を取りにいく
当日点での挽回を組み立てると同時に、内申そのものもまだ動くなら、取りにいきます。とくに中3の成績が対象、あるいは比重が大きい地域では、「もう決まった数字」ではなく「これから作る数字」です。
定期テスト——評定を動かす最大のレバー
評定の土台は、定期テストにあります。残りの定期テストの回数を数え、1回ごとに、「どの教科の評定を4から5に、3から4に動かしにいくか」を決めて臨む。全教科で満遍なく数点上げるより、評定の境目にいる教科に集中するほうが、内申点としてのリターンは大きくなりますし、通知表の観点別評価を見れば、どの観点が評定の足を引っ張っているかも確かめられます。
提出物と授業への取り組み——「主体的に学習に取り組む態度」の現実
いまの評定は、テストの点だけでなく、観点別の評価で決まります。提出物の期限と質、授業中の取り組み、振り返りの記述——これらは「主体的に学習に取り組む態度」などの観点に表れ、評定の境目では効いてくる。地味ではありますが、提出物を「出す」から「期限内に、指示された形式で、丁寧に出す」へ引き上げるだけで、境目の教科が動くことは、珍しくありません。テスト勉強と違って、才能も時間もほとんど要らない部分なので、ここを落とすのは、純粋にもったいない失点でしょう。
実技4教科——兵庫では最大の伸びしろ
兵庫県のように実技4教科の換算倍率が大きい地域では、音楽・美術・保健体育・技術家庭こそが、内申挽回の主戦場になります。実技教科の評定は、実技の上手下手だけでなく、ペーパーテストと提出物・取り組みの比重も大きいのが実情です。実技テストの対策を「捨てない」、作品や課題を期限内に仕上げる、筆記テストの範囲を取りこぼさない——この3点だけで、評定1つ分が動く可能性があり、換算7.5倍の世界では、それが学力検査15点分に相当する。
英検などの外部検定は内申に効くのか
「英検を取れば、内申の不足を補えるのでは」という質問を、よく受けます。答えは、地域と枠によって分かれる。たとえば兵庫県の一般選抜では、検定や部活動などの実績は評定の数値には直接算入されず、調査書のその他の記録として、参考扱いにとどまるとされています。一方、私立や一部の選抜枠では、英検の級が出願の目安や加点の条件になっている場合もあります。
「内申の代わり」と期待して検定に時間を割く前に、志望校の要項で扱いを確かめるのが先です。ただし、英検の学習そのものは当日の英語力に直結するので、無駄にはならない。位置づけを、「内申対策」ではなく「当日点対策の一環」と捉え直すと、時間配分を誤らずに済むでしょう。
6. 当日点で挽回する学習戦略——難関帯の戦い方
ここからは本丸の当日点で、難関帯の学力検査で「周りより上積みする」ための組み立てを、3つの柱で整理しておきます。
合格最低点から逆算した5教科の得点設計
最初にやるのは、志望校の合格ラインに対して、「5教科でどう点を配分するか」の設計です。全教科で満点を狙う必要はなく、得意教科で貯金を作り、苦手教科は「守る点数」を決める——この役割分担を決めるだけで、勉強時間の配分が変わってきます。
設計の材料は過去問で、都道府県の公立入試は問題形式が安定しているので、過去3〜5年分を解けば、教科ごとの「取れる大問・落とす大問」がはっきりする。そこから、「数学はあと8点、英語はあと5点、国語は現状維持」のように、教科別の上積みの目標を数字で置き、目標のない教科の勉強時間を、目標のある教科へ移していきます。
数学・英語——難関帯で差がつく2教科の伸ばし方
難関帯の当日点勝負では、多くの場合、数学と英語が差のつく教科になります。数学は大問後半の思考型問題で差が開きますが、挽回の段階でまず取り組むべきなのは、そこではなく、前半〜中盤の標準問題を落とさない精度です。正答率の高い問題の取りこぼしをゼロに近づけるだけで、数点の上積みは現実になる。そのうえで、志望校のレベルで頻出の単元(関数・図形の証明など)に、演習を寄せていきます。
英語は、長文の処理速度が得点を決めます。単語・文法の穴埋めを最短で済ませ、過去問形式の長文を時間を計って解く練習に、比重を移していく。リスニングは配点の割に対策が後回しにされがちで、毎日10分の継続だけで安定する、費用対効果の高い領域でしょう。
模試の使い方——判定より「当日点換算」で見る
内申不足の受験では、模試の合格判定をそのまま受け取ると、判断を誤ります。判定の多くは、内申を含めた総合評価、あるいは平均的な内申を前提にしているので、内申が不足している受験生は、判定が実際より厳しく(場合によっては甘く)出ることがあるからです。
見るべきなのは判定の記号ではなく、当日点の素点が目標配分に届いているかです。第1章で作った「上積みの目標」に対して、教科ごとの素点がどう推移しているか——この1点だけを模試のたびに確かめれば、判定に一喜一憂せず、やるべきことが常にはっきりする。短い期間で当日点を設計的に上げる局面では、1対1で答案分析まで伴走してくれる指導者がいるかどうかで、大きな差になります。プロと学生の違いは、こちらのコラムで整理しています。
国語・理科・社会——「守りの3教科」で失点を止める
数学・英語で攻めるなら、残る3教科の役割は「貯金を守る」ことです。国語は、漢字・語句・文法など知識の分野を毎日の固定枠で確保しつつ、読解は志望地域の過去問形式で、設問パターンに慣れることを優先する。読解力を短い期間で大きく伸ばすより、形式への習熟で数点を安定させるほうが、残り期間の投資としては堅実でしょう。
理科は、過去問で分野ごとの得点を出し、計算分野(電流・化学変化・力など)は解法の型、暗記分野は一問一答の高速反復と、対処を分けます。社会は、用語を「選べる」ではなく「書ける」水準まで引き上げたうえで、資料読み取り問題の設問パターン練習に、時間を移していく。守りの3教科の目標は満点ではなく、「受験者平均を下回らない」ことで、攻めの2教科で作った上積みを、守りの3教科で失わない構図を作ります。
時期別の優先順位——夏・秋・直前で配分を変える
同じ挽回の戦略でも、時期によって優先順位は変わってきます。夏(〜8月)は、中1・2範囲の総復習で、土台の穴を埋める最後のまとまった期間です。同時に、内申がまだ動く地域・学年なら、定期テストと提出物にも力を残しておきたい。
秋(9〜11月)は、過去問演習を始めるとともに、教科別の上積みの目標を確定させる時期です。模試は判定ではなく当日点換算で追う運用に切り替え、評定が確定する前の最後の定期テストに、照準を合わせる。直前期(12月以降)は、新しい範囲を広げず、過去問の解き直し・時間配分・頻出単元の最終確認に絞ります。前の章までで触れたとおり、評定がほぼ確定したあとに内申対策へ逆戻りするのは、配点の上ではリターンのない投資でしょう。
7. 内申不足の受験で崩れやすいパターンと回避策
内申が足りない状態からの受験には、特有の「崩れ方」があります。先に知っておけば、避けられるものばかりです。
- 内申を嘆き続けて、当日対策が始まらない——「あのとき提出物を出していれば」と過去を悔やむ時間は、1点も生みません。数値化と換算が済んだら、内申の話は月1回の確認だけにして、日々の話題を当日点の設計に切り替えます。
- 全教科を均等に上げようとする——不足を焦るほど「全部やらなきゃ」になりがちですが、残り期間の挽回は集中投資が原則です。教科別の上積み目標がない勉強は、頑張りの割に合計点が動きません。
- 直前期に内申対策へ逆戻りする——中3後半、評定がほぼ確定した後に提出物や小テストへ過剰に時間を割くのは、配点上リターンのない投資です。評定の確定時期を先生に確認し、それ以降は当日点に全振りします。
- 親子で「目標のズレ」を放置する——親は公立本命、本人は私立志向のように前提が食い違ったまま夏を過ごすと、勉強の設計そのものが定まりません。方針のすり合わせは、学習テクニックより先にやるべき土台作業です。
- 「受験できない」と思い込み、出願先を狭めすぎる——出願要件と合否判定の混同で、戦えるはずの土俵を自分から降りてしまうケースです。要項の原文と進路指導の先生への確認を、セットで行ってください。
共通するのは、感情が数字の設計より先に立ってしまうこと。不安になったら第1章の「差分の数値化」に戻る——これを家庭の合言葉にしておくと、ぶれにくくなるでしょう。
8. 「諦める」と決める前のチェックリスト——判断の手順
検索候補には、「内申 足りない 諦める」という言葉も並びます。諦めるという判断そのものは、悪ではない。ただ、それは次の5つを確認してからでも遅くないはずです。
- 志望校の配点構造を要項の原文で確認したか——内申と当日点の比率、対象学年、選抜タイプ。伝聞ではなく原文で。
- 不足分を点数で出したか——「足りない気がする」ではなく、合格目安との差分を数値化したか。
- 差分を当日点に換算し、教科別の上積み目標に落としたか——挽回の総量が「頑張り」ではなく「配分表」になっているか。
- 内申を重視しないルートを洗い出したか——配点タイプ・選抜の仕組み・私立の当日勝負型、3つの視点で代替案を持ったか。
- 設計を見てもらったか——学校・塾、あるいは高校受験の指導経験があるプロの家庭教師など、地域の制度と難関帯の入試の両方を知る人に、この配分表を見てもらったか。
5つすべてを確かめた結果として「この土俵では戦わない」と決めるなら、それは諦めではなく、戦略的な選択です。逆に、1つでも確かめないまま志望校を落とすのは、判断ではなく、思考停止に近い。本人が数年後に、「あのとき確認だけはし尽くした」と言えるかどうかを、判断の基準にしてください。
中学受験でも、同じ構造があります
高校受験の内申と同じで、中学受験でも数字が届いていないから諦める、という判断は早い場合があります。
最難関の問題には「このパターンはこう解かないと時間内に終わらない」という解き方があり、それを知っているかどうかで得点が変わります。D判定のみならず、E判定から合格する子がいるのは、ここに理由があります。
9. 保護者ができるサポート——面談・情報・声かけ
内申不足の受験は、本人以上に、保護者の動き方が結果を左右します。ポイントは、次の3つでしょう。
三者面談は「聞く準備」で価値が変わる
三者面談は、内申の見込みと出願の現実性を確かめられる、いちばん大事な情報源です。ただし漠然と臨むと、「厳しいですね」で終わってしまうので、次を聞く準備をしてから臨んでください。
- 現時点の評定見込みと、内申点への換算値(地域の計算式で)
- 評定が動く可能性のある教科と、その条件(次のテスト・提出物)
- 志望校の枠ごとの内申の扱いと、過去の合格者の内申帯
- 内申を重視しない併願候補として、先生が現実的と考える学校
情報収集は保護者の担当領域
選抜要項の読み込み、説明会の日程管理、併願校の基準の確認——この種の情報戦は、受験勉強と並行して子どもがやるには、重すぎます。ここを保護者が引き受けるだけで、子どもは当日点の上積みに集中できる。役割分担をはっきりさせることが、そのまま得点力になるのです。
声かけ——内申の数字と人格を切り離す
内申が足りない状態の子どもは、「自分は学校に評価されていない」という感覚を抱えがちです。ここで保護者まで「なんで提出物を出さなかったの」と過去を裁くと、挽回に必要なエネルギーが折れてしまう。過去の内申は変えられない事実として一度受け止め、「ここからの組み立ては一緒にやる」という姿勢を、言葉にしてください。当日点での挽回の戦略は、本人が「まだ戦える」と思えているかどうかで、実行の質が変わってくるでしょう。
10. まとめ——感情ではなく「差分の数値」で戦う
最後に、この記事の要点をまとめておきます。
そして、今日からできることを、5つにまとめておきましょう。
- 志望校の選抜要項を原文で入手し、配点と内申の対象学年に線を引く
- 直近の通知表から内申の見込みを計算し、合格目安との差分を点数で出す
- 差分を当日点に換算し、教科別の上積み目標を紙1枚にまとめる
- 三者面談で聞くことリスト(第9章)をメモにしておく
- この設計を、制度と難関帯の入試を知る第三者に見てもらう予定を入れる
内申点は過去の積み重ねですが、受験の結果は、これからの組み立てで変わります。数字を直視するのは怖いことでも、数字にした時点から、不安は「やることリスト」に変わっていく。一人で抱え込まず、制度と難関帯の入試を知る人の目を借りながら、残り期間の一点一点を組み立てていってください。
よくある質問
高校受験・大学受験に対応する教師
23名が登録しています
中学受験を中心に、高校受験・大学受験・医学部受験まで対応しています。登録しているのはプロの家庭教師のみで、学生講師は在籍していません。
在籍状況は時期により変わります。担当できる教師がいるかは、教育相談フォームからお問い合わせください。
それでも、一度お話を聞かせてください
ここまで読んで、「うちの内申でも届くルートはあるのか」と思われたかもしれません。
ご家庭だけで抱えていると、「これは相談していいことなのか」を決めるところから始まります。そこで数週間が過ぎるのが、いちばん惜しい。
学年と、いま気になっていることを一言いただければ、こちらで整理してお返しします。その場で決めていただく必要はありません。家庭教師以外の選択肢をお伝えすることもあります。
力になれることがあるなら、なりたいと思っています。
合格や成績の伸びをお約束することはできません。ご希望の条件によっては、お引き合わせが難しい場合もあります。
体験授業を受けたうえで、家庭教師が要らないと判断されたときは、そう言っていただいて構いません。