この仕事をしていて、いつも感じていることがあります。それは、志望校に行きたい理由を、自分の言葉で話せる子は伸びる、ということです。
「あの学校には鉄道研究部があって、そこに入りたい」「文化祭で見た先輩がかっこよかった」「理科の実験がたくさんできると聞いた」。理由は立派なものでなくていいです。
それが本人の中から出てきた言葉かどうかが大事だと思います。
「親が勧めたから」「偏差値がちょうどいいから」「なんとなく」という子は、どこかで息切れしやすくなっていると感じます。
受験勉強には、しんどい時期が、たいていどこかでやってきますから。
模試の結果が悪かったとき、宿題が終わらない夜、友だちが遊んでいるのを横目に机に向かう休日。
そういうときに踏ん張れるかどうかは、「合格したら、その先に何があるのか」が見えているかどうかが、かなり大事です。
合格はゴールではなくて、やりたいことへの入口。その入口の向こうが見えている子は、強いんです。
目標がぼんやりしていると、合格することそのものが目的になってしまいます。そうなると、成績が思うように上がらないときに、「何のためにこんなにがんばっているんだろう」という気持ちが顔を出す。目的がはっきりしている子は、同じ壁にぶつかっても、「あの部活に入るために、ここは越えないと」と考えられるんですよね。
これは子どもに限った話ではなくて、大人の仕事でも同じだと思います。何のためにやっているのかが分かっている人のほうが、粘り強いし、工夫もする。私自身、仕事で迷ったときは、そもそも何のために始めたのかに立ち返るようにしています。
とはいえ、最初から行きたい理由を言える子ばかりではありません。むしろ、聞かれたことがないから答えられない、という子のほうが多いのかもしれない。そう考えると、理由が言えないのは子どものせいではなくて、大人がそれを聞く機会をつくっていないだけ、ということもあるんですよね。
なので、親御さんにおすすめしたいのは、まず聞いてみることです。「その学校で、何をしてみたい?」「中学生になったら、どんな毎日を送りたい?」と、答えを急がずに聞いてみる。すぐに答えが返ってこなくても構いません。
学校説明会や文化祭に一緒に行ってみるのも、きっかけになります。実際に校舎を歩いて、先輩の姿を見ると、「ここで過ごしたい」という気持ちが、本人の中から自然と出てくることがあるんです。学校の見方については、学校説明会・文化祭の見方のコラムにも書いています。
それから、理由は途中で変わってもいいと思っています。最初は「制服がかわいいから」だった子が、学校を知るうちに「この学校の授業を受けてみたい」に変わっていく。それも立派な成長です。
将来の夢まで決まっていなくても大丈夫です。小学生に「将来なりたいもの」をはっきり求めると、かえって答えにくくなってしまう。「その学校で過ごす6年間で、何をしてみたいか」くらいの距離で考えられれば、目的としては十分だと思っています。
家庭教師として指導に入る先生たちも、勉強の中身だけでなく、「その学校に行って何をしたいのか」を一緒に話す時間を、大事にしていることが多いんです。目的が見えると、同じ1時間の授業でも、子どもの目つきが変わってきますから。
今夜の食卓で、「なんでその学校に行きたいの?」と聞いてみてください。返ってきた答えが、受験を最後まで走り切る力になるかもしれません。